File24

「ごめんなさい。そうなんですよね。矢走先生も主人も陸上部の仲間たちも皆、そう言ってくれました。私は、自分を責めることで精神のバランスをとっているのかも知れません。ただの自己防衛なんです。何百回、何千回、自分を罵ったところで、正子が生き返ることはない。私はもう偽善者ぶるのはやめます」

 逸美さんが紡いだ言葉の意図が分からず、一同は、逸美さんが言葉を継ぐのを待った。

「虎丸くんから聞いた今回の銅像事件の件、間違いなく正子の呪いだと私は思います。正子が他界してから、私は、正子の命日と月命日に彼女に会いにお墓参りをしています。その度に、うまく言えないのですが……正子は此処にはいないと感じていました。私は特に霊感が強いというわけではありませんが、何となく分かるのです。私は、二十四年前の事件の後、精神を病んでしまい降魔高校を辞めました。その後、私は、一度も降魔高校に足を踏み入れていません。怖かったのです。全部忘れてしまいたかったのです。あの事件は『悪い夢だった』そう思い込ませていたのです。皆さんが私に会いに来たということは、私が、正子を救うためにできることがある、ということなのでしょう?」

 逸美さんの瞳に決意の色が灯った。

「はい。私たちは、正子さんを苦しみから救ってあげたいです。私は、親に気味悪がられて捨てられるほどの霊能力をもってこの世に生まれてきた霊能者です。今まで、数え切れないくらい霊たちと接してきて除霊経験も豊富です。そんな私でも、正子さんの怒りを鎮めて成仏させることは難しいと思っています。下手をしたら、正子さん悪霊になってしまいます。私は、それは嫌です……それで、正子さんが逸美さんとお話しすることができれば、もしかしたら……うまくいくかもと思ったです。でも、危険を伴うことですし、これ以上、逸美さんを苦しませるのも良くないです。どうしたら正しいのか、わからないです」

 二家が、たどたどしいながらも精一杯の気持ちを逸美さんに伝えた。

「二家さんは、すごい能力をお持ちなのね。それならば、私は安心して正子と話をすることができます。直接話し合わなければ、互いの気持ちは分からないですから。どうか、私にも手伝わせてください」

「美魂もいるから、安心して大丈夫なの」

 二家のバッグの中から、美魂さんが、ひょこっと顔を出した。

「あら! 可愛い」

 逸美さんは目を細めた。

「美魂さんは、私の養父が宮司を務めている『降魔神社』にずっと昔から住んでいる神の使いなのです。いつも、私を護ってくれているです」

「まあ! それなら、なおのこと安心ね」

 こうして、ただし子さんを苦しみから解き放つという危険な試みに、オカルト部は逸美さんという大きな後ろ盾を得ることに成功したのだった。

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