File14

「あっ! 終夜先生っ! お疲れ様ですっ!」

 久しぶりに部室を訪れた終夜先生に部員一同が挨拶をした。

「やあ、諸君! 中々顔を出せなくて申し訳ないね。ただでさえ忙しいというのに、このような興味をそそられ……物騒な事件が立て続けに起こったものだから、教職員たちもてんやわんやの大騒ぎでねえ。おおよその話は佐茂くんからシェアしてもらっているから安心するといい」

 終夜先生は、部室の隅に立て掛けてある先生専用の折り畳み式のフットレスト付きリラックスチェアに長い脚を投げ出し猫のように伸びをした。

「私も今回の怪異事件について、教師たちの目を盗んで情報を収集していたのだよ」

 そう言いながら、青い瞳をきらきらと輝かせた。

「美魂さんと一緒に、ドア越しに話を聞かせてもらっていたのだが……」

(えっ? なぜ、普通に入ってこないの?)

 と、皆、一斉に心の中でツッコミを入れた。

「二十四年前に、陸上部員で風紀委員長でもあった風速 正子くんを死に追い込んだ輩たちはいったい誰なのか? というところから話してもいいかい?」

「はい!」

「黒幕は、恐田おそれだ 狡介こうすけ。四十一歳。お察しのとおり、今回の事件の第一のターゲットである恐田 狡毅の父親で政治家。『斬鬼無敵党』の代表。そして、当時、恐田父とつるんでいた不良生徒が、江口えぐち うしお。四十一歳。第二のターゲットの江口 一色の父親。そして、桃尻ももじりみさお。四十一歳。『桃尻』は旧姓で、一回り年上の資産家と結婚して今は、白桃しらもも みさお。第二のターゲットの白桃 艶香の母親。この3人が二十四年前の事件の主犯格だ。まあ、クズというのは遺伝するってことだな」

 終夜先生は唾を吐き捨てるようにして言った。

「なるほど……主犯格の奴らの子どもたちが、二十四年の月日を経て、奇しくも、この降魔高校に集ったわけなんですね?」

 と、佐茂。

「そういうことになるな。しかし、これは机上の空論に過ぎない。私は、直接、風速くん……否、『ただし子くん』と呼んだ方がフレンドリーであろうか……ただし子くんに直接会って話を聞いた方が良いと思うのだが、どうだろう?」

 そう言うと、美魂さんが、終夜先生の手の甲をかぷっと噛んだ。終夜先生がギャッと奇声を上げて悶えた。

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