File10

 勇み立つオカルト部員たちを嘲笑うかのように、翌日、またしても怪異事件が起こった。恐田 狡毅似の銅像の右隣に新たな銅像が建てられていたのだ。第一発見者は、3年C組の高増たかます けいだった。高増は新聞部部長だ。降魔高校は文化系の部活動にも力を入れており、新聞部は『全国高等学校マスメディア大会』の新聞部門において過去5回、最優秀賞を受賞している強豪校だ。オカルト部同様、今回の事件の真相を解明しようと、高増は、早朝、周囲の目を掻い潜って立入禁止となっている旧校舎の敷地に足を踏み入れ、件の銅像を写真に収めようとした。そこで、銅像が一体増えていることに気付いたのだ。その銅像は男女が絡み合うように抱き合っておりエロチシズムを漂わせていたという。高増の証言によると、銅像のモデルとなった男女は虚を突かれたような間の抜けた表情をしており、お楽しみに夢中で何者かが彼らに近付いて来ていることに直前まで気付かなかった。そんな印象を受けたという。

 その後の調べで、新たに増えた銅像の男女は、1年D組の江口えぐち 一色いっしき白桃しらもも 艶香つやかに酷似しており、恐田 狡毅の時と同様、2人も消息不明になっていることが分かった。さすがに、連日で気味の悪い事件が起こると生徒たちも動揺を隠すことができないようで、体調不良を訴える生徒や泣き出す生徒が続出し、学校側は臨床心理士の資格を持つスクールカウンセラーを派遣し生徒たちの心のケアに努めた。恐田 狡毅が消息不明になっていることと突如出現した銅像の件とは因果関係がないとして、恐田 狡毅の捜索にのみあたっていた警察だが、新たに2人が恐田 狡毅と同様のパターンで姿をくらましたことを重く見て現場検証がを始めたため、旧校舎へ忍び込むことが難しくなり、オカルト部は新聞部の後手に回ってしまった。

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