File05

「えっ? これって……盗撮?」

 虎丸がつぶらな瞳をぱちくりさせた。

「ああ。終夜先生しゅうやせんせいの協力を得て盗撮カメラ仕掛けておいたんだな」

 佐茂は1ミリも悪びれることなく言った。終夜しゅうや 究一郎きゅういちろう先生は帝東大学理学部出身の理科教師。降魔高校では化学を教えている。父親が日本人、母親がドイツ人のハーフで端正な顔立ちをしているが人を寄せ付けないオーラを放っている。科学で証明できないオカルティックなことを忌み嫌っていたが、二家から美魂さんを引き離そうとした際に、美魂さんが吸い取っていた二家の強過ぎる霊能力の欠片が終夜先生の中に入り込んでしまったことがきっかけで霊能力に目覚めこちらの世界にどっぷりと浸かり、当時顧問不在で学校側から認可されていなかったオカルト部の顧問を買って出て、今に至る。

「まじで? あの人、謎を解き明かすためなら手段を選ばないのな。てか、そういうところ、終夜先生と佐茂っち、そっくりだよな」

 虎丸が、呆れたような感心したような微妙な表情をしているのを見て、

「まあ、小生たちは変人だからな」

 と、佐茂が嬉しそうに言った。

「まあ、今回の銅像事件の謎を解き明かすためなら、盗撮ごとき些末なことなんだな。まあ、皆、しかと見給えよ。このリアルライブを見逃す手はないんだな」

 佐茂の言葉に誘われて、虎丸、二家、美魂さんの視線がノートパソコンの画面に注がれた。

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