File04
「ああ。恐田 狡毅には裏の顔があるらしいってさ」
「裏の顔?」
佐茂が虎丸の言葉をもごもごと復唱した。
「恐田は表面上は、絵に描いたような優等生だ。しかも、リーダーシップもとれてカリスマ性もある。そんな彼が、出身中学の百鬼中学で『裏ボス』と呼ばれていたらしいってさ」
「男子トイレで煙草吸っていたなの?」
美魂さんの言葉で場の空気が和んだ。
「まだ、その方がマシかもしれないね。彼は、そういった分かりやすい不良たちを束ねて、恐喝、傷害、いじめ……あらゆる悪事に手を染めていたってさ。自分は手を汚さずにね。そのせいで、不登校になったり自殺をした生徒もいたらしいんだけど、すべての事件が揉み消されてしまって被害者の家族や遺族は泣き寝入りするしかなかったらしいってさ」
「もし、その噂が本当だとして、なぜ不良たちは恐田の命令に従ったです? 実は恐田は喧嘩がすごく強いとかです?」
二家が首を傾げていると、ノートパソコンを弄っていた佐茂が答えた。
「恐田が喧嘩強いかどうかは分からないが、理由は分かったんだな」
佐茂は、二人と一匹にノートパソコンの画像を見せた。そこに写っていたのは三十代から四十代くらいの爽やかな雰囲気を醸し出す政治家が選挙演説をしている姿で、肩から掛けられたたすきには「
「
「親の権力乱用ってわけです? 恐田は改心するために、自分の過去の悪行を知っている人が少ない降魔高校に越境入学したですか?」
「だったら良かったんだけどね。俺っちの陸上部の後輩から聞いた話だと、恐田は、入学早々素行の悪い連中をうまく飼い慣らして裏で悪さしてるらしい。1年A組ではすでに一人不登校になってるってさ。学校側はそのことを知っているはずなのに見て見ぬふり。なぜ、学校側は恐田を罰しないのか不思議だったけど、なるほど、そういうことか」
「それじゃ、恐田を恨んでいる人はたくさんいそうです……ところで、肝心な恐田 狡毅は、今、どうしているです?」
二家の問いに対して、ずっとノートパソコンを弄っていた佐茂が答えた。
「恐田 狡毅は昨夜から消息不明らしいんだな。今、恐田の両親が職員室に押しかけて来て大騒ぎになってる」
佐茂は、2人と1匹にノートパソコンの画面を見せた。画面越しに映し出されたのは職員室の様子だった。
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