第012食 焦茶色のカリーの底で:エチオピア(東京・西早稲田)名店会その4
二〇二四年三月中旬現在における『東京カレー屋名店会』の「5店盛り」のラインナップは、「共栄堂 ポークカレー」「東京スリランカ チキンカレー」「エチオピア チキン豆カレー」「エチオピア ビーフカレー」「デリー上野 カシミールカレー」で、そのうちの二つは『エチオピア』のカリーなのである。
『エチオピア』といえば、昭和末の昭和六十三年四月に神保町にオープンした老舗店で、その代表は「鈴木堅司」氏である。
ここでさらに、『東京カレー屋名店会』のサイトを参照してみると、こちらも、『エチオピア』と同じ「鈴木堅司」氏が代表である事が分かる。
もしかしたら、このように代表取締役が同一人物という事が、五のうちの二つが『エチオピア』のカリーになっている事の理由なのかもしれない。
もちろん、真相は〈カリー〉の中なのだが。
とまれかくまれ、五種のうちの二種が『エチオピア』のカリーである事は明らかな事実なので、書き手は、今回の企画の三店目と四店目は『エチオピア』のカリーにする事にしたのであった。
とはいえども、折角ならば、三軒目と四軒目は別の店舗を訪れよう、と書き手は考えてしまった。
二〇二四年現在、『エチオピア』は、神保町の本店以外にも、秋葉原の「アトレ」、御茶ノ水の「ソラシティ」、そして高田馬場など三店舗が存在している。
実は、高田馬場店は、名称こそ「高田馬場」となってはいるものの、店の場所は明治通りの付近、早稲田と高田馬場の中間、住所的には西早稲田三丁目に在る。実はこの辺は書き手の活動圏で、高田馬場店はラストオーダーが二十二時半と、深い時刻まで営業しているので、時々お邪魔している近所のカレー屋さんの一つなのだ。
ところで、神保町の「本店」以外の三店舗には、「カリーキッチン」という名称が付け加えられているのだが、『エチオピア』のホームページでは、「『エチオピア カリーキッチン』は本店とは多少趣を変え、本店同様のこだわりのインド風カリーはもちろんのこと、欧風カレーやカレーに合う様々なサイドディッシュやドリンクを用意して(……)」といった説明が為されていた。
例えば、高田馬場店では、ランチに廉価な「ミディアムカリー」(六五〇円)を提供していたり、平日のランチ・タイムには、マンゴープリンをサービスで出したりもしている。また、「ドライカレー」など高田馬場限定の皿があったりもする。
とまれ、四月末の『エチオピア』訪店の目的は、名店会の「5店盛り」を直接店で食べる事だったので、選ぶべき皿は、店舗限定のものではなく、「チキン豆カリー」一択なのだ。
ちなみに、『エチオピア』では、「野菜カリー」「チキンカリー」「ビーフカリー」など代表的なメニューが幾つかあり、「豆カリー」もその一つである。そして、豆カリーには、これに具材を加えた、「野菜豆カリー」や「ビーフ豆カリー」などもあり、つまるところ、今回の「5店盛り」の一つ、「チキン豆カリー」は、豆カリーがベースになっている次第なのだ。
実は、『エチオピア』では、「チキンカリー」や「ビーフカリー」に関しては、ワンプレートの〈ライスカレー〉タイプなのだが、「豆カリー」をベースにしたものは、カリーとライスの容器が別々の〈カレーライス〉タイプなのである。
厳密に使い分けると、ライスカレーとは、ライスにカレーがかかっているもので、カレーライスは、カレーとライスが別容器に入っているものである。
書き手の記憶が正しければ、一九八〇年代後半に観た『ライスカレー』というドラマで、そのような説明が為されていたような気がする。
とまれかくまれ、『エチオピア』では、ライスカレーとカレーライスと、カレーごとに二様の提供方法を採っていて、「豆カリー」系はカレーライスとして供されているのだ。
さて、エチオピアの豆カリーのルーは液状でサラサラッとしている。
〈ダル〉とは、ヒンディー語で〈豆〉を意味するのだが、書き手は、インド系のカリーを食べる時には、実は〈ダル・カリー〉を注文する事が多く、思い返してみると、『エチオピア』でも豆カリーを注文する事が多かった気がする。
サイトを参照してみると、『エチオピア』の豆カリーは、「3種類の豆をミックスして入れ込んでいる」らしいのだが、その異なるコリコリっとした豆の触感が面白いカリーなのだ。さらに、スープ状のカリーを食べ進めてゆくと、皿の底に残ったスパイスの欠片のようなものとカリーを一緒に口に運ぶ事になるのだが、その香辛料のゴリゴリっとした味と感触こそが、『エチオピア』の豆カリーであるようにさえ思える。
あっ、そうか、この触感の為にこそ、『エチオピア』では豆カリーを別皿で提供しているのかもしれない、と思う書き手であった。
〈訪問データ〉
エチオピアカリーキッチン 高田馬場店:東京・西早稲田
二〇二四年四月三十日・火曜、十九時半
チキン豆カリー(辛さ3):九七〇円(現金)
〈参考資料〉
『ライスカレー』、制作:フジテレビ、一九八六年四月期
〈WEB〉二〇二四年七月十二日閲覧
「店舗紹介」「会社概要」、『カリーライス専門店 エチオピア』
「COMPANY」、『東京カレー屋名店会』
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