【19】にんげんホイホイ(素通り寺(ストーリーテラー)旧三流F職人) 読みながら感想


【19】にんげんホイホイ(素通り寺(ストーリーテラー)旧三流F職人)

https://kakuyomu.jp/works/16817330661188819829



昨日は十二時間、爆睡してしまいました……

身体が睡眠を欲しがってるとあきらめて、マイペースで書くとします。

頑張り過ぎて体調崩したら、元も子もないですし。

ただでさえ気温の変化が異常ですからね、ここ最近。


さて、十九番目の参加者は、素通り寺(ストーリーテラー)旧三流F職人さん。

作品は「にんげんホイホイ」です。

多分ですが、三鞘ボルコムさん経由で知られたのかな、と。

あちらの人脈はすごいみたいですから。(羨ましい反面、これ以上感想希望が来たら確実に死ぬという顔)


素通り寺さんとの交流はなく、今回が初顔合わせですが、作品のお名前はどこかで見た覚えがあります。個性的なタイトルですしね。


そんな素通り寺さんの参加コメントはこちら。



────────────────


はじめまして、よければ企画に参加させて下さいませ。


・作品名:にんげんホイホイ

・特に意見が聞きたい部分:冒頭の1万文字ほどで読者を引き付け「続きが読みたい」と思わせる事が出来ているかどうか

・「梶野ならこう書く」具体的なアドバイスが欲しいか:お願いします

・学生(中高生以下)かどうか:オッサンですので遠慮なくこき下ろしてください。


────────────────



ふむふむ。スタンダートなご希望ですね。

それではさっそく、「じっくり感想」を始めたいと思います。



⬜️読みながら感想

二読後の感想を、読みながら書きます。(3話まで)



>プロローグ 人類の終わりの始まり


>あるとき、地球が、こう思った。

> ―そうだ、人間を滅ぼそう―


「寄生獣」(岩明均)の出だしを思わせるオープニングですね。

あちらは「地球上の誰かがふと思った」でしたが。


キャッチコピーにも使われているテーマ的な言葉ですが、ここで「地球」と明言してしまうのは微妙かも。総評にて考察。


>朝、目覚めた自分のすぐそばにある横長の画面を見て、誰もがそう訝しがった。


ここは「すぐそば」より「目の前」の方がインパクトが出ると思います。

また、この時点で「画面」と書くより「長方形」とだけ描写し、そこに何かが映るのを見てから「画面」とする方が臨場感が出るはず。

「訝しがった」より「訝しんだ」の方がシンプル。「いぶかしむ」は要ルビ。

もっとわかりやすくするなら「目を丸くした」などの方が読者の幅は広がるはず。難解な漢字の時点で読者を選ぶので。ここは対象年齢次第ですが。


>まるでSF映画でよくある空中ウインドウのように。


「ウインドウ」は「窓」なので、いまいちよくわかりません。

おそらくマイクロソフトのOSと混同されているのでは?

この場合は「空中ディスプレイ」などが適切。


>そのモニターに映し出されている画面を見た時


映し出されるのは「画面」ではなく「映像」。


>誰もが心の芯を撃ち抜かれたような衝撃に打たれた。


説明がくどいです。

[誰もが心の芯を撃ち抜かれた。]で十分。


>―そこにあったのは、その人だけが心から願う、理想の世界だったのだから―


ダッシュ(─)は基本的に二つ繋げて使います。


>周囲を確認する。誰にも見られていないことを確かめる。そして、その画面に吸い込まれるように近づいていく。


ここの描写はコマ割りを感じられてよいですね。

「吸い込まれる」が「吸い寄せられる」ならなおよし。後々本当に吸い込まれるので。


>画面の中では、様々な人が、物が、そして世界が自分に手招きをしていた。


この段落の描写は長すぎてくどいので間引くべきです。後々、現象の詳細も述べられますし、簡潔な方がスムーズに読めます。


>届かないはずの自分の栄光が、

[自分には届かないはずの栄光が]


>頭を、顔を画面の中に突っ込む。中には自分にとって理想の美女が、美男子が、求めて止まない世界が、届かないはずの自分の栄光が、笑顔で自分を迎え入れてくれる。


さすがに説明過多でだれ始めたので、この段落は丸々カットしてよいです。それでも意味は通じます。


>だけど、そこはその人にとってあまりにも理想的な世界だった。


「だけど」は口語寄りで、不適切に感じます。

「だが」「しかし」「けれど」などで。


>同時に、その人物は悟る。もしここに一度入ったら、もう二度と戻ることは出来ない、と。


理由は謎ですが、まあ画面自体が謎ですからね。

この説明があるかないかで、読者の納得具合が全然違うので、大変よい設定だと思います。


>ある冴えない男性には無数の裸の美女がその身をくねらせて投げキッスを放ち、自分が来るのを待っている。仕事と婚活に疲れた女性には、執事服や騎士の衣装を着た美男子たちが女王の玉座に手招きをしている。ゲーム好きな少年には大地に刺さった伝説の剣と、その向こうでモンスターに襲われている町娘たち、そしてこの中に入った瞬間に自分が得るであろうチート能力が感じられていた。


この段落の例の文末は「いる」でなく、全て「いた」で終わらせる方がよいと感じます。


>窓際のサラリーマンには、自分の名前の立て札の立った社長のイスと、にっこりと微笑む美人秘書、その傍らには土下座するいけ好かない上司が。


「画面の向こうの世界」の例示は18種類登場しますが、流石に多すぎますね。立場と対応が出来るだけ異なるものから厳選して、半分以下にすべきかと。


>自分の名前の立て札の立った社長のイス

「立て札」は間違いですね。

おそらくは「ネームプレート」のことかと。


>戦争中の兵士達には、田舎で婚約者と仲睦まじく暮らす未来が、侵略先であらん限りの略奪をする舞台が、敵の精鋭部隊を打ち破って勲章を授かる授与式に立つ自分の到着が待たれていた。


例の中では、これが一番完成度が高いですかね。

善悪関係ない理想という意味で。


>地球がその身をくるりと一回転した時。


この表現は綺麗ですね。

冒頭にもかかっていますし。

 

>人類の三分の一、二十億人がこの世界から、跡形もなく消えた。


ちょっと調べましたところ、2024年で世界人口は80億なので、数字か比率を治した方がいいかも。ちなみに60億は1998年らしいです。


むしろよく三分の一で済んだな、という印象。

まあ怪しいと思って手を出さない人も一定いるでしょうね。そう考えたらリアリティある気もしますが、地球人口だと考えると大半は発展途上国なわけで、半分くらい消えてしまうのが正しいかも。

いや、何が正解なんて誰にもわからないんですが。


ともあれ、興味を惹くプロローグとしては成功していますね。

上出来だと思います。



>第一話 椿山 湊の日常の終焉(舞台:徳島)


>まるでTV画面のようなモニター

ほぼ同義なので「TV画面のような長方形」などの方が。


>夕べ寝るときにTVを消し忘れでもしたのかと思った直後、


台詞で説明したのでまるまる不要。


>が、その次には全身が高揚する感覚と、それを追いかけてくるような悪寒に見舞われた。


ここは文章がくどいです。

性癖のツボを突かれた興奮と家族にバレるかもという不安の説明だと思いますが、一旦カメラを引いた上で、簡潔に書いた方が読者に直感的に伝わります。


[改めて画面の映像を見た椿山は、極度の興奮と悪寒に襲われた。]


>その画面に映っているのは、自分の性癖の具現化だったからだ。


最低のパラダイスですが、男なら共感せざるを得ない……


>そして今、目の前に浮かぶ画面には、その自分の妄想がはっきりと形になって映し出されていたのだからとんでもない事だ。


確かに、ベッド下のエロ本を発掘される比ではない恥辱ですねw


>ベッドの下にエロ本を隠した少年のように、パソコンのHDD奥深く隠したエロ動画が見つかりそうな青年のように、私は激しく狼狽した。


いきなり椿山の一人称に切り替わっています。

一人称で続けるなら、せめて冒頭から始めるべき。


>手で掴んで調べてもどこにもスイッチは無く、周囲を見回してもリモコンらしきものは見えない。どうすりゃいいんだよコレ!


立体映像みたいなものかと思ったので、触れるのは驚き。そこは椿山にも反応してもらいたいとこ

>コンコン

>『あなたー、起きたー?』


それに合わせてか、いきなり文章がライトに。激しい違和感。


>妻と言う名の絶望の使者の声が

ちょっと笑った。


>これをなんとか・・・・・・

3点リーダー「…」を二つ使うのが一般的。


>ドアが開く音がした。

「ガチャッ」の時点で伝わるので、他の情報がなければ省くべき。もしくは「ドアが開く直前」など、次の行動に繋げるか。どの道「音」であることを書く必要はありません。


その意外な言葉に反応し、そして妻の後ろにある謎の物体を目にする。それはタオルケットで包まれた、今自分の後ろにあるモニターとほぼ同じ大きさの四角形だ。


意外な反応の理由はすぐわかった。妻の後ろに謎の物体が浮いている。タオルケットに包まれているが、今自分の後ろにあるモニターと同じ大きさの四角形だ。


>「え……お前も、画面が側にあるのか?」

この台詞も微妙。

私なら、


[「え……お前にも画面が?」]

とかですかねえ。結構難しい場面。


>私と違うのは妻がちゃっかりそれをタオルケットで覆って、中身が見えないようにしている点だ。


なるほど。実体があるならこういう対処も取れますよね。


>どうやら妻には砂嵐映像に見えているらしい……助かったー。


ふうむう。

ここは見える設定の方が、話が拡がりそうな気がします。


>おまえの方は何が見えてるんだ? と反撃開始しようとすると、妻はずざざっ! と後ずさりし、タオルケットで包まれた画面を手で押さえる。が、えてしてこういう場合に焦っていいことはない、タオルケットを押さえていたテープをはずみで剥がしてしまい、はらっと布が取れて画面が御開帳になる。

>「いやあぁぁぁぁっ! 見ないでえぇぇぇ~」

> いや、妻の画面こそ砂嵐映像だし。


コミカルなツボを押さえてあって、何気に高評価。


>娘の後ろにも同じようなモニターが浮かんでおり、そのせいで娘は部屋の鍵をかけて「今日は休む」と籠城の構えをとっていたのだが、私と妻が本人以外には見えないよと説得し、しぶしぶ扉を開けた娘に二人の砂嵐映像を見せたことで半信半疑にはなった。


長文なので分けるべきかと。


[娘の後ろにも同じようなモニターが浮かんでいる。そのせいで娘は部屋の鍵をかけて「今日は休む」と籠城の構えをとっていたのだが、私と妻が本人以外には見えないよと説得した。しぶしぶ扉を開けた娘に二人の砂嵐映像を見せたことで半信半疑にはなった。]


>妻に自分の画面を確認させて、娘の画面も他人が見たら砂嵐映像にしか見えなかったことに安堵し


この部分は不要かと。

「二人の画面を見て安堵」で十分な流れだと思います。もしくは念の為、隠しながらとか。


>まさかこんな物を従えたまま仕事や学校に行くわけにはいかんだろう、なんとかせねば。


これをなんとかしようとするシーンはあってもよかったかも。固定しようとしたり、狭い場所を通ったらどうなるのか、とか。


>「え、夕べの『マジックスプラッシュ』じゃん、なんで朝にもやってるの?」

>『音声のみでお伝えしております』の文字と、ニュースキャスターの不安げな声が聞こえている。


ここはリアリティがないと思います。

地震放送なんかもそうですが、緊急放送は何より最優先されるので、アニメの再放送が流せるなら、何をもってしてもテレビ局は報道するはず。それこそ素人のディレクターがカメラを回してでも番組を作るのが緊急報道です。


あと、放送局にとって、緊急事態と言うのはまさに活躍の場なので、画面の向こうの世界より現実を選ぶ確率は一般人より高い気もします。……その後はどうなるかわかりませんが。


>―本日未明より、謎のTVモニターのような画面が、あらゆる人に張り付くように出現しました。画面は本人以外には砂嵐にしか見えない模様で―


ここもテレビ放送の再現度は低め。

私ならうーん。少なくとも「人に張り付く」なんて部分は入れません。

あと、「決して画面mに触れないように」とか、説明抜きで危機喚起すると思います。「中に入れる」なんて放送すると、自殺幇助になりかねませんし。


>「うっわー、この窓の事で日本中がバズりまくりだよー!」


前述した理由で「窓」はないです。


>ライソで、ツブヤイッターで、NSNで、この話題は持ちきりになっていた。


現代社会の日常風景。


>『これ、画面の中に入れるらしい』

> うそ、マジで、悲願達成、俺の世界キター、などのコメントが追随して流れている。


まあこうなりますよね。

こことの対比という意味でも、テレビ放送では禁止した方がよいかと。


>でもそれも上の空で、心中はもしそれが出来るなら今すぐにでも、というはやる気持ちを、なんとか見栄で押さえている状態だった。


ここはどうなんでしょう。

「半信半疑ながら、試してみたい」くらいの気持ちの気がしますが。

恐れの気持ちも多分にあるでしょうし。


>私は画面に向き直り、そこにそっと手を伸ばす。


「そこ」が続くので、ここの「そこ」は省くべき。


>まるで超えてはいけない国境を跨いだような違和感。


ここは「違和感」より「背徳感」の方がしっくりきます。


>見目美しすぎる彼女は自分の手を両手で包み、それを胸の谷間に埋めている。


[見目美しすぎる彼女は自分の手を握り、胸の谷間に挿し入れている。]


>―それが妻と娘、私の大切な家族との、今生の別れになるとも知らずに―


ここは文頭文尾をダッシュで挟まず、片方だけの方がよいと思います。


[──それが妻と娘、私の大切な家族との、今生の別れになるとも知らずに。]


こんな感じですね。

これまでの同じ使用法にも言えることですが、こういった使用はまず見ないですし、効果より違和感が先に立つので。文頭と文尾、どちらがよいかは好み次第ですが。


>キャラクター紹介 椿山湊つばきやま みなと

https://kakuyomu.jp/users/4432ed/news/16817330666429446444


ちょっとしたものですが、キャラ紹介を挟むのは悪くないですね。

いいアクセントになっています。


>第二話 人食いウィンドウ

こう書くなら、「窓」表記もありですね。

画面だと言い続ける限りはナシでしたが。


>全員の顔の高さに、その人の願望を詰め込んだ映像が浮かんでいるのだから。


「ここにいる全員」という話だとは思いますが、社員が全員出社してるはずはないので、そこについての言及は必須かと。


>砂嵐映像にしか見えなのだとしても。

脱字。

「見えないのだとしても」


>男なら仕事をしてりゃ悩み事は忘れられるもんだ。


この場合は「悩み事」ではなく、「余計な事」ですね。

言い分はわかりますが。


>徒歩や自転車で通学する学生の姿も心なしか少なく思えた。


ここは画面がくっついてることも描写した方がよいですね。


>仕方ないのでドアをそっと引いてみると、カギはかかっていなかった。


状況的に見れば鍵はかかっているはずですが、まあ話の流れ的に開いてる方がスムーズですね。何か理由をこしらえられれば理想的なんですが。


>「もしかして……『入った』、のか?」

この「小さな画面になる」というアイデアは秀逸ですね。

「中を確認できる」「外には出られない」という二つの特徴を視覚的に表現している点が素晴らしいと思います。絵面もよいですし。


>宙に浮かぶ小さなモニターに声をかける。だが彼らからも、その世界の住人からも反応はなく、その世界の外から見られている事すら気づかない。彼らは画面の中の自分の望む世界に赴き、そして戻ってこれなくなった事を気にも留めていなさそうだ。


「画面の中から外は見えるのか」といった読者の疑問に、ちゃんと先回りして説明が入っていますね。


>全てがご破算になってしまった、のか?


仕事か!とは思いますが、まあ社会人はわりとこんなんですよね。


工事は、全く進んでいなかった。


> 現場には交通誘導の警備員以外、誰も居なかった。代わりにそこかしこにスマホ大のウインドウが、空しく浮かんでいた。

>「そんな……そんな!」

> 持っていたジュース入りの袋をがらん、と落とす。


ここもなかなかいい場面作りだと思います。


>そりゃそうだ。今は真夏なんだ、このキツい炎天下で現場労働をするのと、自分の理想の世界に行って楽しく暮らすのと、どちらを取るかなんて分かり切っているじゃないか。


まあ普通だと、出社する前に気付きそうなもんですが。


>その中に飛び込んで行った。

私なら「行ったのだ。」にしますかね。


>同時に大きかった彼のモニターがすすす、と縮小化し、出入り不可能なサイズに固定化された。そして砂嵐の映像だった画面がぱっ、と切り替わる。


推理の裏付けを出すという意味でも効果的。


>社長も、専務も、事務員さんも、そこにはいなかった。代わりにそれぞれのデスクの上に、小さなウィンドウを残して。


[代わりにそれぞれのデスクの上に、小さなウィンドウが残るばかりだった。]


なるべくしてなる、という感じですよねえ。

むしろ主人公が誘惑されていないのがすごいというべきか。


>『画面の中に決して入らないでください』というテロップが漂っている。


お。わかっておられますね。

ただ前述したように、「中に入るな」だと入れることを教えるようなものなので、おそらく放送局は「触れるな」と書くと思います。


>ニュースキャスターや解説者の座るべき席にも、小さなウィンドウが浮いているだけだというのに。


さすがにカメラの前で画面に入ることはしないと思います!

食卓の時も思いましたが、「画面に入る」ということは、「欲望に負けました」と同義なので、入るにしても人目を避けると思います。画面を人に見せられない真理と同じですね。


>人間はこの窓に、まるでゴキブリホイホイのように、次々と『食われて』行っているんだ!


「『食われて』行くんだ!」の方が。

「窓」か「画面」か、どちらかに呼称を揃えた方がよいかと。

或いは「中に入れる」とわかった時点から切り替えるとか。


>もう仕事は無理だ、そう思った時、私に電流が走った。


「もう仕事は無理だ。」ですね。


>そうだ家族だ! どうしてそれを失念していた、この異常事態に何より守らなければいけない物があるじゃないか!!


気付くのが遅いですが、まあ気付いたところで結果は同じでしょうねえ。


>そう最初に書かれていた手紙には、パートの仕事が人手不足で工場のラインが回らず休みになった事。娘の学校でも次々と自分の画面に飛び込む者が続出した事、そして娘もまた妻に『お母さん、私も行くね』と電話で言葉を残して居なくなってしまった事。学校まで飛んで行って、いくつものモニターの中から娘のモノを見つけ出し持ち帰った事。その中の娘がもう何年も見せなかったような幸せな表情をしていることが記されていた。


読ませる説明で、とてもいいと思いますね。

小さくなった画面は持ち運べるんですか。ちょっと意外ですが、まあその方が何かと使いやすそうではあります。


>私が猫アレルギーだったばかりに猫が飼えず、幾多の猫グッズで心を慰めていた妻の理想が、そこにあった。


猫カフェとか行けばよかったのに……w


>そして私、椿山湊つばきやまみなとは、ひとりぼっちになった。


崩壊のテンポが早いのがいいですね。

絶望まっしぐらという感じで興味を掻き立てます。



>第三話 崩壊する社会


>あれから一週間がたった。

>世界は、もう、どうなっているのかも分からなくなった。TVやラジオは何も伝えず、新聞の配達も途切れている。ネットからもすっかり人は消え、ライソやツブヤイッターもすっかり沈黙してしまった。


むしろよく一週間も持ったな、という印象。

周囲が消えたら自分も、となりそうですし、三日で滅んでもおかしくないレベル。


>唯一、匿名掲示板のサイトにある『まだこっちの世界に居る人いますか?』というスレッドが、一日いくつかのレスを残してるくらいで、その数も日を追うごとに減少している。


おっさん感漂いますが、逆にこういう場所の方が残ってる人間が多い感じはわかる気がします。


>朝食のパンと缶コーヒーを胃に流し込みながら


缶コーヒーはともかく、一週間後のパンって大丈夫ですかね。

まだ配送システムとか生きてるんです? 自家製のパンとかならわかりますが。


>そう、この中の世界はどうやら固定ではなく、その世界の主である妻が望む世界にどんどんスイッチしていけるみたいだ。


「理想世界が続くと飽きるんじゃないか」と思っていましたが、ナイス説明。

しかし隙がないですな。これは入らない理由がますますなくなっていく。


>それでも妻が私の事を理想の世界の片隅に置いていてくれるのは、ほんの少し救いではある……執事を見る目と比べて冷めているのは切ないものがあるが。


正真正銘の本音ですからね。まあ運転手ですが。


>娘の方の画面ももう毎日見ている。最初は愛娘のプライバシーを覗くのは控えた方がいいと思っていたが、こうも長期に留守だと娘が元気で笑顔で居られているかのほうがやはり心配になって来る。


こちらも納得感の高い親心。


>身支度を整え、家を出て会社に向かう。だけど行ったところで誰も居ないのは分かり切っていた。


骨の髄まで社畜、という感じですね。

嫌だけど、わかるわあ……w


>人と言う人の姿が消え

「人という人の姿が」


>もしかしたらあのウインドウが世界中で一斉に割れ、瞬時に元通りの世界になるんじゃないかという淡い期待を胸に秘めて。


なるほど。

いきなり始まったんだから、いきなり終わるかもしれませんよね。


> だけど、期待は裏切られ、予想は裏切らなかった。


後半の対比は良いとして、やはり「だけど」は違和感があります。

社会人の椿山が使いそうにない言葉というか。ここまでの語り口にそぐわないというか。


>帰宅時、いつものように無人のコンビニに立ち寄り、今日と明日の朝の食料を拝借する。


想像通りの生活ですが、無為に仕事先を周る余裕があるのか心配ですね。

ライフラインとか時間の問題で止まりそうだし。

まあ一人分の食糧なら、車があれば年単位で確保できそうですが。


>帰宅し、食卓の上に浮いているウィンドウに声をかける。返事など返ってこないのは分かってるが、それでも家族が確かにそこに居るのだから、それでいいと思う。


なかなかしんみりする光景。


>ちなみに我が家は十年前にリフォームしたばかりで、オール電化に合わせて屋根には太陽光発電のパネルが付いているので、例え送電が死んだとしても電気は生きている。


電気はいいとして、水とガスは問題ですね。全自動にはなっていないでしょうし。

ああいや、オール家電ならガスは不要なのかな?

まあここの説明は主人公にもわからないことなので、説明がつかない方がリアリティがあります。インフラ関係は、誰かまだがんばってるのかもしれないし。


>浴場で欲情しそうだったので

おっさんギャグはNGw


>だが、それも時間の問題だろう、ほどなく社会インフラは全て止まり、人間が生きていくには衣食住全てを文明社会以前に戻さなければならなくなる。


ちゃんとわかってるのは偉いですね。

まあ文明の遺産はあるでしょうが、自給自足は必要になりそう。


>もうひとつの横に浮かぶモニターが、また違う映像を映し出して私を誘おうとしている。


この文章はいまいち。

[その横に浮かぶモニターが、また違う映像を映し出した。]


誘おうとしているのは、後の反応でわかるので不必要です。


『徳島の人ー、生き残りでオフ会やってますんで、貴方も来てくださいよー』


>なんか小洒落たカフェテリアで数人の女性がひらひら手を振って私を招き入れようとしている。その胸には『東京』『名古屋』『石川』『北九州』などと書かれた名札が付いていた。


なるほど。

望みを映し出すのだから、こうなりますよね。


>「よかったら、会いませんか?」


おお。この展開は熱いし、面白いです。

モニタを見て閃くという展開も無理なく意外性がありますし。

絶賛もの。


>翌朝、雀のさえずりで目を覚ます。ああ、寝ちゃってたなぁと目をこすってアタマを起こす。

>「ありゃ、パソコン点けっぱなしだった」

>やれやれ、蓄電の無駄遣いをしてしまったなと思いつつシャットダウンしようとして、画面表示にはたと気付く。


こういうふにゃふにゃした文章は、せっかく面白くなってきた物語に水を差すので、一定の水準を保ってもらいたいところ。


>画面が一度ホワイトアウトし、すぐに掲示板サイトが更新される。そこには、夕べには無かったふたつのレスが付いていた。


続きが気になりますね。

大変よい引きだと思います。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る