【18】転福為禍のインヴォーカー ~「嫌いだから一緒に旅はできない」と言われた俺と、言ったボク~ (三鞘ボルコム) 総評
【18】転福為禍のインヴォーカー ~「嫌いだから一緒に旅はできない」と言われた俺と、言ったボク~(三鞘ボルコム)
https://kakuyomu.jp/works/16817330669307554527
⬜️全体の感想
▷タイトルについて
>転福為禍のインヴォーカー ~「嫌いだから一緒に旅はできない」と言われた俺と、言ったボク~
「転福為禍」は「転禍為福(災い転じて福と為す)」を逆転させたものですかね。
意味通りに受け取ると、すんごい運の悪い人のイメージです。
インヴォーカーはざっくりと「召喚士」というところですか。
ちなみにどっちも知らなかったので、ネットで調べました。
ん-、タイトルの意味は現時点ではまったく謎ですが、後々意味が通じて来たらカッコ良くなるタイプではありそうです。語呂もいいし。
副題はプロローグまんま。
プロローグの場面が後々まで影響する鍵となっているならアリでしょうし、そうでなければ意味不明になるので、ちょっと不安が残ります。
個人的にはあのプロローグは肩透かしだったので。
▷キャッチコピーについて
>親友との、出会いと別れの物語
そのままですね。先の展望が見えなくてイマイチ。
タイトルの派手さの爪の垢を煎じて飲むべきです。
並んだらミスマッチもいいとこでしょう。
▷あらすじについて
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冒険者として仲間と共に旅をしていたユーキは、仲間の1人であり10年来の親友でもあるアレクから突然別れを告げられる。ユーキは突然のことに反発するが、別れの原因はアレクがユーキのことを「嫌い」だからと言う。当然、納得するわけがない……、と思いきや、ユーキはすんなりと受け入れる。予想とは違う反応に戸惑うアレクだったが、達観したユーキのおかげで揉めることもなく2人の別れは決定してしまう。最後の別れを告げ、去るアレクの瞳には大粒の涙が浮かんでいた。
アレクはなぜ、別れを告げたのか? ユーキはなぜ、すんなりと受け入れたのか? 2人はなぜ、旅に出たのか? そして、2人の今後は?
10年前、アレクとユーキの出会った日から物語は始まる——。
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ほぼプロローグまんまですね。
先の展望とか、ほとんどノーヒントなので、興味を惹かれません。
内容も地味で、完全にタイトル負けしています。
例えば「後に英雄と呼ばれる二人が」とか、多少なり未来の情報を散りばめて続きに興味を持たせた方がよいと思います。
▷文章について
ちょいちょい悪文はありますが、概ね読めるし、意味は伝わります。
最低限の文章力は確保できていると思いました。
ただ、この時点ではそこ止まり。次のステップが必要です。
二話まで読んで、特に感じたのは文章の無駄。
同じ内容の重複、情報も面白みもない台詞、不必要な描写などなど、文章の贅肉が多すぎて、物語が冗長に感じられます。どうでもいいCMが挟まる動画のようです。
これを改善するには、引き算を覚えること。文章のダイエットです。不必要と思われる文章を削り、文章をシャープに磨き上げましょう。ユーモアやジョークも文章のキレがあって初めて笑えるものです。
もちろん、必要な描写は削ってはいけません。取捨選択を重ね、いかに簡潔に必要な情報を残すかがテクニックです。文字数制限をつけて掌編を書くなどすればいい練習になります。
もう一つは、表現のばらつき。
一般小説のような言葉を使う一方で、ラノベや漫画のような表現も頻出するので、いかにも背伸びをして難しい言葉を使っているように見えます。どちらかに寄せた方が、少なくとも安定はするはずです。どちらがいいというより、内容や書きたい世界に合った表現を選ぶべきです。気軽に読めるラノベを書きたいなら、小難しい表現は逆にノイズになりますから。
▷ストーリーについて
色々問題がありましたが、ざっくり思い出せるものを。
>プロローグ
単刀直入に言うと、インパクトがまるでありません。
プロローグはもっとかっとぶべきです。読者の頭をブン殴って読む気を起こさせるのがプロローグの役目ですから。手加減とか良識とか投げ捨ててください。
古典の小説指南書で「冒頭いかに早く暴力とエロと動物を出すか」みたいな、身も蓋もないアドバイスを見たことがありますが、そのえげつなさに比べて、今作のプロローグはあまりにもお上品すぎます。
アレクが謎の別れを切り出し、ユーキが「別にいいぜ」と言った。
読者からしたら「ふーん」てなもんです。
だって二人について、何も知らないんですから。
たまたまテレビで見たドラマのワンシーンで、知らない俳優が同じ台詞を言ってたとしたら、三鞘さんだって多分同じ反応になると思います。要するに衝撃が足りないんです。
このインパクトのなさは、アレクがユーキに切り返されて動揺したり、ユーキに内心を見透かされてる様子を描いてしまっていることも一因です。そこら辺がお上品たる理由です。もっと手加減も容赦もない、読者が「なんでだよ!!」と叫びたくなるのが、いいプロローグなんです。
例えば私なら、同じやりとりをユーキの処刑シーンでやりますね。
火あぶりか生き埋めか、ギロチンにかけてるシーンか。とにかくアレクがユーキに止めを刺しながら「残念だけどキミとはここでお別れだ」と言い、業火や土の中からユーキが「俺はお前のこと嫌いじゃなかったぜ」と返す。
双方の感情の描写は一切なし。全て読者の想像に一任する。
プロローグで掴むなら、これくらいすべきです。
後のことは後で考えます。掴めなければ後もクソもないので。
……嘘です。真面目にプロットを立てておくのが正しいやり方です。
ともあれ、プロローグに必要なのは大胆さ。
ブレーキはあらかじめ外してください。
>内容が薄い
ここからは1話、2話について。
共通して言えるのは、内容が薄いことです。
理由は明白で、たらたらと必要に乏しい日常風景を続けていること。ながら感想で贅肉と断じた部分です。文章もそうですが、構成としても脂肪レベル。
「冒頭が面白くなければ、読者は続きを読まない」はエンタメを書く上で常識です。そのもっとも重要な冒頭の話に、何故、必要のない要素を混ぜるのか。
牛乳の美味さをアピールしたい農家が、生乳に水を混ぜるがごとき愚行です。
朝食のやりとりや引っ越しシーンが不必要とは言いません。
それを面白おかしく、読者が飽きないように書けるならアリです。エンタメなので。
でも、そうでない場合は贅肉です。必要な情報すら含まれていません。
家族の情報や引っ越しの経緯は説明は、無駄ではありませんが、最重要な冒頭で文字を割いて書く必要があるか、という取捨選択の話です。冒頭を盛り上げた後、じっくり後から説明すればいいことですし。
とにかく最初の数話は、プロローグに次いで気合を入れるべきところ。
とくに密度を高めて読者を掴まなければいけません。贅肉を蓄える余裕はないのです。
>展開に面白みがない
「つまらないか」と言えばノーですが、「面白いか」と聞かれてもノーな感じ。
つまり、「面白い」のバーをクリア出来ていません。
余計な情報で薄める以前に、ストーリーそのものの味が薄い。
具体的には、「子供のケンカ」以上になっていない点が問題です。
先によい点を言っておくと、
「いじめられっ子を助ける主人公を、さらに助ける主人公」という構図は一捻りあってユニークだと思います。
一話と二話がリンクする構成も褒められます。
後の二人の関係性にも繋がっていきそうでグッドです。
ですがそこを除けば、話の展開は想像がつきますし、よくあるパターンです。
子供のケンカなので、剣や魔法が出たりもしません。(多分)
奇しくもプロローグで作者が注意書きしたように、「子供時代は面白くない」が
正解になってしまっています。
ここをもっと面白く、或いは次の展開(ケンカパート)を読みたくさせるには、どうすべきか? それには、キャラをもっと押し出すことです。
せっかく二話も使って主役二名を描いているのに、二人のキャラ性はいまいちメリハリがなく、特徴に欠けます。この場合は強みと言ってもいいです。
アレクはまあよいです。育ちが良く正義漢。無鉄砲だが勇気はある。わかりやすいし好感も持てます。問題はユーキの方で、別に性格はこれでよいのですが、キャラ設定が甘いと感じられました。
私ならユーキは、「冒険者の息子」という部分を最大に押し出して描きます。
馬車や引っ越しのシーンで、8歳なのに大人顔負けの頭の回転と器用さをアピールしたり、冒険者だった父に教えられたスキルがあったり。旅に慣れていて独特の物の見方をしたり。何なら父の冒険に何度か連れて行ってもらったことがあるとか。
街育ちのアレクやロドニーとは一味違う、そんなユーキがケンカに参戦したら、どんな風に三人を倒すのか、どんな手管でやり過ごすのか、気になりますよね。
そんな感じの差別化をユーキにしておけば、育ちのいいアレクともよい対比になるはず。もしかすると元々そういう設定である可能性も少なくないと思うのですが、もしそうなら二話の時点でそれが読者に伝わるよう、演出を強化すべきべきでしょう。
>ライトノベルなのかファンタジーなのか
これはまあ先を読んでいないので、どっちを想定して今作が書かれているのかはっきりとはわかりません。プロローグは真面目そうでしたが、その後はラノベ的な要素も散見されたので、両方取るつもりなのかもしれませんし。
ただ、個人的には「どっちつかず」に感じられたので、どちらかを選んで徹底した方が面白く読めそうだなとは思いました。もちろんシリアス路線でもギャグを入れるとかはいいんですよ。ただ、ラノベ的なノリが標準で混じると、シリアスに戻すのはなかなか難しいのでは、と私には思われますので。たまにならいいんですが。
ちなみにこの「育ちのよい少年が女の子をいじめっ子から救う」という冒頭、「ジョジョの奇妙な冒険」(荒木飛呂彦)の第一部冒頭とほぼ同じ展開です。あっちは人形を取られてましたが、キャラの立て方とか台詞回しとかが個性を越えてヤバい領域です。もし未読なら是非ご参考あれ。いや、あれは参考にすると不味い奴か……w
▷キャラについて
ストーリーで書いてしまいましたが、アレクはまあよいです。
ユーキはもっと特徴を際立たせればなおよし。
ただ、どちらも現時点ではこれぞという強烈な個性、オリジナリティには欠けます。
そこら辺も「地味」に感じられてしまう原因ではないかと。
基本の筋はこのまま、キャラの特徴をもっと押し出し、個性を強調しては如何かと思います。
▷アドバイス回答について
>・特に意見が聞きたい部分。
>第1話~第2話でPV数が4割以上も落ちております。(342から190)
>いくつか原因は推察してはいるのですが、ぜひ梶野カメムシさまのご意見も賜りたく思います。
理由はいたってシンプルかと。
はっきり言いますが、地味で内容が薄く、先が期待できないからです。
「次は子供のケンカか」「よくある奴だな」「じゃあいいや」みたいな感じ。
もう一つの原因は、二話でリンクして繋がることが、一話の時点ではわからないこと。ここは評価できるので、そこまで読んでもらう工夫があれば求心力が増す可能性が高いと見ます。
それを踏まえた私の改善案は、一話と二話を合体させてしまうことです。
前半をアレクパート、後半をユーキパートにして、同じ場面で一話を終えるんです。
最後のユーキ合流部分だけ分けて書き、両サイドからの合流を演出します。
エピソードタイトルは「二人の英雄」くらいで。
当然長くなりますが、そこはダイエット。各エピソードを2000文字まで圧縮し、一話合計で4000文字程度にまとめます。
内容も濃くなるし一石二鳥です。無駄な部分が結構あったので、そこを絞ればそう無理のない改善案だと思います。
こうすれば少なくとも二話分は読んでもらえますし、変わった演出で読者受けを狙えそうです。その先はまあ、地力次第ですが。
⬜️総評
・プロローグは地味すぎ。もっとインパクトを。
・文章は及第点。引き算と統一感が次の課題。
・二人の主人公が合流するアイデアはよい。
序盤の評価としてはこんな感じですね。
まあ子供時代が地味になるのはある程度仕方ないのは理解します。
ですが、プロローグが地味なのは大問題。
ここの期待で子供時代を乗り切らせるくらいの覚悟は必要でしょう。
それに、子供には子供の魅力があるので、これはこれで面白くもなるはずです。
「少年もの」というジャンルもあるわけで、ある意味魅力あふれる素材かと。
これが処女作と言うことで、遠慮なく斬らせていただきました。
歯に衣着せぬ感想でまことに恐縮ですが、この感想が三鞘さんの今後の創作の一助になればと願っております。
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