【02】戦士オリビアの憂鬱 ~勇者のいない世界で『お前が魔王を倒してこい』と師匠に家を追い出されたので、世界を救う〈英雄〉になってみせます!~(夜月 透) 読みながら感想


【02】戦士オリビアの憂鬱 ~勇者のいない世界で『お前が魔王を倒してこい』と師匠に家を追い出されたので、世界を救う〈英雄〉になってみせます!~(夜月 透)

https://kakuyomu.jp/works/16818093083505300909



「じっくり感想」二人目の参加者は、夜月 透さん。

初参加で、作品名は……上記の通り(長いので)。

長文タイトルはいまだ廃れませんねえ……異世界転生とかではないファンタジー小説というところでしょうか。


夜月さんの参加時コメントはこちら。



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・応募作品

戦士オリビアの憂鬱 ~勇者のいない世界で「お前が魔王を倒してこい」と師匠に家を追い出されたので、世界を救う〈英雄〉になってみせます!~


・特に意見が聞きたい部分

描写不足、説明不足などがあって読みづらくないか見て欲しいです。文章の書き方など、至らない点があったら直したいので知りたいです。


・具体的なアドバイスが欲しいか

欲しいです!よろしくお願いします!


・学生かどうか

学生ではありません!


初めての参加ですが、よろしくお願いします。


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ふむふむ、なるほど。

告知文にも書きましたが、梶野はいわゆる「なろう系ファンタジー」は読んでいません。コミカライズは一話くらいはチェックしますが、たいていそれきりです。


小説を書き始めた時はファンタジー一辺倒だったのに、歳を食ったせいか最近はもっぱら現代ものを書くことが多くなりました。おっさんになってようやく、現実の面白さに気付いたというか。

あと、真面目にファンタジーを書くとなると容易には手を出せないことに気が付いた、ということもあります。つまるところ世界の全てを構築するジャンルですから。


その点、なろう系のファンタジーはテンプレ設定が許され、気軽に書けるという一点はアリだなと思っています。読むとなるとオリジナリティを求めてしまうので、どうも舌に合わないことが多いのですが。


こんな私ですが、ライトファンタジー小説のポイントだと考えるのは、にアドバイス「文章の軽さ(読みやすさ、わかりやすさ)と面白さの両立」かなーと。

これが案外難しいんですよね。

面白さを維持したまま文章を軽くするというのは、筋肉を落とさずダイエットするようなもんですから。実はハイレベルなテクニックだと思うんです。


さてさて、今作はダイエット成功してるでしょうか。筋肉は落ちてないでしょうか。

それでは「じっくり感想」を始めます。



⬜️読みながら感想

二読後の感想を、読みながら書きます。



□第0話 若き戦士の冒険譚


>おどろおどろしい、魔空間の中。

あー、ありますね、こういうやつ。

背景書く手間がないので、プロローグには向いてます。


>強大な敵〈 魔王 〉を目の前にしても、オリビアの心は決して折れる事はない。


最初の台詞的に、別に心折れそうなシチュではなさげ。

「人間ごときが、……舐めた真似をッ……!」とか言ってる魔王の方が心配になります。やられそうやん、おまえ。


>双剣の柄を握り直した彼女が魔王と距離を取りながら勢い良く駆け出すと、


わりとわかりやすく動きを伝えられてて好印象。

でもやや長文なので、「駆け出す。」で切った方が読みやすく、躍動感が出ます。


>バチバチと音を立て閃光している攻撃魔法を彼女に向けて、魔王は容赦なく放った。


表記順に違和感。上記指摘と合わせて、私ならこんな感じ。


[双剣の柄を握り直した彼女が魔王と距離を取りながら勢い良く駆け出す。バチバチと音を立て閃光している攻撃魔法を、魔王は彼女に向けて容赦なく放った。]


>その電撃のような球状の光が、魔空間の地面にぶつかる度に、激しい音を立てて崩れ、爆発した。


ビジョンはわかりますが、もうちょい描写は凝って欲しいところ。「電撃のような」は「スパークする」とか。


あと、攻撃魔法が複数放たれたことが音以外で説明されていません。

これだと二発しか撃ってないことになります。

どうせならたくさん撃ってる方が派手でかっこいいはず。


「激しい音を立てて崩れ、爆発」は、地面の方ですよね?

でも主語は「球状の光」のままなので、ここも文章的に変です。


[スパークする球状の光が、続けざまに魔空間の地面にぶつかり、激しい音を立てて爆発・崩壊させる。]


>ㅤ物凄い速さで飛んでくる魔光の攻撃をギリギリの所で身を躱かわしながら、オリビアは魔空間内を旋回した。


「旋回」はなかなかいいかと。わかりやすく雰囲気もあります。

私なら[着弾する魔法弾を置き去りにしながら]とか書くと思います。


魔光の攻撃は、ここまで描写されている限り、まるでスピード感を感じさせません。とりあえず「物凄い速い」って書きたかっただけに見えます。


スピードを脅威に書くのではなく、数を脅威として描いた方が映える場面かと思いますし、次に出す魔法との差別化にもなります。


>「馬鹿がッ……!!ㅤそんなに死にたいなら、望み通り死なせてやろうッ……!!ㅤ」


この魔王、弱そう。


>魔王は不敵に笑いながらまた黒い魔光を作り出した。

「また」って書いてありますが、「黒い魔光」を作るのは初めてです。


>ㅤ魔王の右方向、遠くから放たれた白い光の矢が猛スピードで飛んできて、魔王の肩や腕に深く突き刺さる。


スピードを強調するなら、「飛んできて刺さった」と書いてはいけません。「刺さった」という結果から始めるのがコツです。

過程を書くと、とたんにスピード感がなくなります。


「何も持たずに」を意外性として読者に示したいのだと思いますが、先に〈 聖魔法 〉と答えを書いてしまってるので、驚き半減です。


──以上を踏まえて、私が書くならこんな感じ。


[その魔光が放たれる、その瞬間。


 白い光の矢が、魔王の肩や腕に突き刺さった。


「何……だと……ッ?!」


 矢の飛んできた方向に、魔王が鋭い視線を向ける。


 そこには頭から血を流す一人の男が、地面に膝をついていた。


 魔王に照準を合わせた所作をしているが、


 男が空中で弓を引く所作をとると、そこに白い光が集まり、矢の様な形状をとる。

 魔族の嫌いな〈 聖魔法 〉──相手が強大な敵だとしても、威力抜群である。


「貴様ァァァアアア──ッ!!私の邪魔ばかりしおって──ッ……!!」 ]


魔王の台詞は「お前」より「貴様」が相応しいと思うんですが、どうでしょう。

あと絶対弱いと思います、この魔王。


>力いっぱい剣を振り上げる。

ここは「振り下ろす」では。


>仲間たちと出会い、強く成長しながら進む。

>時に助け合い、時にふざけ合い( ? )絆を深めながら縁を繋いでいく。

>魔王を倒し──英雄になるまでの冒険譚。

>今、ここに開幕!


ああ、よくあるやつだなぁ……という印象。



□第1話 旅立ちの日は唐突に。


>ㅤオリーブ色の長い髪を一つに束ねた若い女性、オリビアは師匠アテナの言葉にしばらく立ち尽くしていた。


ゴテゴテの描写は勧めませんが、せめて体格や服装の描写は最初に欲しいところ。職業クラスが何なのか、かなり後までわからなかったので。


>───旅に出ろって、急すぎない!?


ここだけダッシュ「─」が三つです。


>旅に出るも何も…。

「…」は「……」と二つ繋げるのが、一般的な小説のルール。


>荷物をまとめて、デリカリアに向かうんだ」


「旅に出ろ」と言った後に「隣町へ向かえ」は意味が通じてません。

「旅に出ろ」→「旅の目的」→「まず隣町へ向かえ」が筋では。


>師匠アテナは呆然とするオリビアの言葉を遮って、真っ直ぐ正面から見つめている。


[師匠アテナは呆然とするオリビアの言葉を遮ると、真っ直ぐ正面から見つめた。]


>冒険を始めたばかりの者が必ず行くと言われている、いわば始まりの街だ。


あー、ドラクエ的な。


>それどころか、魔王を倒すと伝承でも言われている【勇者】のポジションの者さえ、現在もまだ現れていない。


あー、ドラクエ的な。


>「お前をそれなりに戦える戦士に育てたつもりだ。戦士は冒険者になって、魔物と最前線で戦う!ㅤそれが当然だろ?」


それって旅なんですかね?

魔物の最前線がどこにあるかにもよりますが……


>ㅤオリビアが尋ねても、一撃でアテナに言い返される。


「一言で」かな。


>ㅤそんな明るく輝いた髪の色を。その背中を追い掛けるのが、小さな頃からオリビアは好きだったんだが──


アテナの情報が髪の色しかないので、まったくイメージが湧きません。オリビアと対比する意味でも年齢と背格好くらいは必要。


>「魔王討伐の話は置いといて……。最近体の調子だって、良くないじゃないですか。師匠、大丈夫なんですか?」


「師匠、一人で大丈夫なんですか?」の方がわかりやすい。


>「あー、大丈夫大丈夫。もう私、年寄りだから!一人でのんびりしたいし。それに、ぼちぼち暮らしていくから全然大丈夫!」


台詞回しが不安定で、どうにもアテナの実像がイメージできません。口で年寄りと言ってるだけなのか、高齢で気が若いだけなのか。


あと、「!」の後は1マス開けるのも一般的なルールです。


>ㅤアテナは体の調子が悪いのか、最近動きが悪くなっている。腕や足をさすっている姿を、オリビアはよく見かけていた。


この説明は「あー、大丈夫大丈夫」の前に持ってきた方が。


>アテナが冗談交じりに笑いながら言ってくるせいか、


行頭1マス開け忘れ。


>もう定年(この世界で65歳)ですもんね

冒険者に定年とは……?

魔法使いとか、ドラクエだとジジイがいたりしましたがw


>───そう、オリビアは元々孤児だった。

ここも「─」三つ。


>───だって、そうするしかないんだよ。師匠は昔から、キレたらすごく恐いんだ。


ここも三つ。

思考には三つとか、そういうルールはありません。


あと「非日常から日常に戻る」という展開なのに、締めくくりがこれなのは、意味がさっぱりわかりません。



□第2話 始まりの街


>始まりの街、デリカリアにオリビアが到着したのは昨日の午後の事だった。


のっけから「何故、昨日の午後?」ってなりました。


>あの後すぐ二人はデリカリアに向かって出発した。


おまえも来るんかーい!

一人で大丈夫みたいな話の時。普通説明しますよね?


>オリビアは自分の荷物を背負い直し、アテナの方を向いてやれやれ……。といった様子で声をかけた。


これ、旅立つ前のシーンですよね?

普通、「到着は昨日の午後」という始まり方なら、当日=到着した翌日の話から入るものです。

回想シーンを入れるにせよ、あの前置きは読者を混乱させるだけです。


>オリビアは急にアテナとの別れを感じて胸が少し苦しくなった。


いや、二人で旅に出とるやん。


>始まりの街、デリカリアの小さな石造りの門をくぐり抜けると


次の場面も隣町到着時で、翌日じゃありません。

時系列バグりそうです。

あの前置き、まったく必要ないのでは?


>煉瓦と木造を交ぜた様な建物

ここであえて「煉瓦と木造」を主張する意味がわかりません。

「煉瓦造りの建物」の方がわかりやすいし、一般的では?


ちょっと調べてみましたが、木造に煉瓦を組み合わせる手法がメジャーかというとそうでもなく、煉瓦オンリーで組み上げた建物でも十分な強度と住居性を保てるようです。


>中世の様な雰囲気の街だった。

お、おう……まあ多くは求めまい。


>石畳の通路に並んだ出店

別に間違いではないですが、「通路」だと屋内的なイメージも混じるので、私なら「街路」にします。


>「装備品はいかがー!?

さすがにこの呼び声はRPGまるだし。

せめて「アクセサリー」くらいで。


>新鮮なプンジャオの焼串はいかがですかー!?

焼肉に「新鮮」って売りにしますかね?

刺身とか生食ならわかりますが。

新鮮なバーベキュー!とか言います?

まあプンジャオの肉がよほど腐りやすいなら別ですが。


>プンジャオの丸焼きが店頭に掲げられている。

うん?焼き串てバーベキューとか焼き鳥的なイメージでしたが。

丸焼き?


あと、プンジャオのサイズがわかりません。

「猪のようなモンスター」だけでは、イメージしようがないです。

猪くらいのサイズなら、それはもう猪でしょう。


>オリビアは堪らなく心が惹かれていたが……。

[堪らなく心惹かれるオリビアだったが……]

かな。


>足早に人の波を避けながら進む、アテナの背中を渋々追い掛けていくと、とある建物に彼女は颯爽と入っていった。


アテナの背格好がわからないので、こういう場面でも情景を想像しづらいです。


>ㅤオリビアも後に続いて建物に入ると、奥にある木製のカウンターの前で、黒髪の女性と話すアテナの姿を見つけた。


ここはオリビア視点で物語が進んでいるので、アテナの会話の前にこの文章はもってくるべきです。でないとオリビア不在なのに、店内の会話が聞こえていたことになります。


もしくは「オリビアが店に入ると、そんなアテナの会話が聞こえて来た」とするか。


>その建物は壁や天井、床に煉瓦が敷き詰められている様な造りで、オリビア達が住んでいた家より遥かに頑丈そうだった。


この程度の描写なら、しないほうがましです。

それより店内の様子や調度品、客の有無を語るべきです。


>しばらく話し込んでいたアテナに手招きをされ、オリビアが小走りで近付いていくと、話していた女性を紹介してくれた。


[しばらく話し込んでいたアテナはオリビアを手招きし、相手の女性を紹介した。]


>アテナが話していた女性の名前はベティ。

「話していた女性」が被っています。


>40代の黒髪の女性で、デリカリアで有名な宿屋の店主であった。


この書き方だと、まるでこの店が彼女の店でないように思えます。あと宿屋の名前くらいはここで出すべきです。定番の展開だけど。


>これが昨日の午後の出来事。

いや、そういうのは、「今日の話」をしながら書くものです。

ずっと昨日の話しかしてないでしょう。


>宿屋でベティと話した後、アテナは「疲れたから少し寝る」と言って、ベティの宿の一室を借りて眠ってしまった。


ほら。

根本的に使い方を間違っています。

というか、思い出しながら書く必要がないんです。

ずっと昨日の話なんですから、普通に書いてください。


>六畳ほどのシンプルな部屋

ファンタジー小説の表現に厳密さとか求める気はないですが、さすがに「六畳」はどうかと思います。

別に部屋の広さの説明が必要な場面でもないですし、省いては?


>昨日アテナからこの街について聞いた時の事を、ふと思い出していた。


1マス開け忘れ。


>「デリカリアは、どんな街なんですか?」

また昨日の話に飛ぶんかーい!!

しかも、街に到着する前だこれ!

時系列ぐちゃぐちゃ。


>「デリカリアは、どんな街なんですか?」

えっ、オリビアは隣町に来たことないの?

十年以上、森の中だけ?


>アテナは遠くを見ながら思い出すように話してくれた。


いや、隣町の話に遠い目をされても。

あまりに認識に食い違いがあるので、本当に隣町だったか、思わず確認しました。


一話の説明だと、「この家から少し離れた所にある街」と書いてますね。

うーん。思ったより遠い場所にあるのか?

私的にはこの書き方は「森を出てほどなく」くらいに捉えていましたが。少なくとも家から一番近い街なんだろうなと。


ここら辺、距離や旅程の描写がまったくないが故の問題かと。


>【魔王】という言葉を出すとアテナは一瞬ピクッと反応したが、すぐにフッと笑って応えた。

>「考えた時も…あったかもしれないね。だけどほら、私はもう…年寄りだから、後は若いもんに任せて。余生を楽しまないとね」


難しい表現ゼロなのに、アテナがこの場面で何を思っているのか、皆目伝わってきません。


とにかくアテナのキャラは輪郭がぼやけている印象。謎めかせるのを通り越して、表面上のキャラさえ掴めないというか。一言で言えば「雑」。


>「師匠。起きてますか?」

やっと「今日の話」が始まった。


>ひんやりとした煉瓦の壁に触れながら

煉瓦はひんやりとしない素材じゃないですかね。

気密性が高く、「夏は涼しく冬は暖かい」らしいですよ。

ひんやりするのはタイルとかでは。


>「ああ、アテナさんね!ㅤ朝早くに酒場へ行くって言ってたよ。何かやる事があるからって」


一般的な酒場は朝からやってないものです。

夜の営業がメインなので。

まあファンタジーだからいいんですけど。


>──師匠は酒場なんて普段行かないし

そりゃ森の中で住んでいればねえ。


>「メイン通りにある「アマリリス」って場所に行ってみて。そこにアテナさんはいるはずだから」


あー、冒険者の集う酒場的なやつですかね。



□第3話 出会いの酒場「アマリリス」


やっぱり。


>一階建てで煉瓦れんがと木造が交ざっているような造りのお店だった。


まるまる同じ描写が出てきて、ちょっと笑いました。

別に煉瓦造の建物が主流ならそれでいいんですが、それなら街全体の説明をする時にそう書けば、いちいち説明しなくて済みます。もっと違う部分で店の個性を主張しましょう。


花とかハーブはそういう意味では悪くないですが、酒場のイメージとはちょっと合わないかな、と。


>オリビアがやれやれ…。と項垂うなだれていると、


1マス開け忘れ。


>まつ毛はとても長く、美意識の高そうな印象だ。


まつ毛から美意識に繋ぐ理由がよくわかりません。

つけまつげなら、まだわかるんですが。

美意識に繋げるなら化粧とか服装の描写からでは。


>「アテナさんからお話は聞いてたよ〜!ㅤ孤児だったのを拾われて、今まで育ててもらったんだってぇ〜?ㅤ可哀想に……。大変だったねぇ〜?」


「デリカシーがない」というキャラ付けの意図はわかりますが、酒場の(それもギルド的な)主人のキャラがそれというのは、激しい違和感があります。潰れるでしょそんな店。


>人のナイーブな事をズケズケと言ってくる、その無神経さがものすごい苦手かも!


ここら辺のオリビアの心理も、意外な一面というより、ここだけ普通の女の子みたいな反応で、戸惑いが先に立ちます。


森から出たこともなく(多分)、人生の全てを戦士になるため老婆に鍛え上げられてきた人間が、そんな普通の反応をするのか?という意味で。


オリビアの個性が確立していれば、こういう意外な点も変化として面白いと思うのですが、まずオリビアの描写自体がここまでたいしてないのが問題。


師匠との関係性くらいしか出ておらず、人間をどう見ているか、コミュニケーション能力や経験はあるのかなど、前提となる情報が一切ないですから。


>「お前は無神経なやつだな。いちいちそんな事、人に言うもんじゃねーだろうが!」


いや、こいつにオリビアの過去を話したのはあんただ。


>「モーニングのメニューはここから選んでねぇ?どれも美味しいから是非全部食べて欲しいわぁ〜!」


「美味しんぼ」なら「出ましょう!」つって金置いて立ち去る展開。


>「悪いやつじゃないんだけどさ。無神経でうるせーだろ?ㅤでも、飯は美味いから。勘弁してやってね」


何のフォローにもなってませんね。

あと、「勘弁してやってね」だけ別人みたいです。

「勘弁してやってくれ」かと。


……しかし展開が遅い。

物語の進まなさにそろそろ嫌気が差してきました。



□第4話 お喋り店主、ユリア


>ㅤもういい大人なので、叫び出すのは我慢した。


オリビアのキャラも、どうにも掴めません。

「戦士として育てられたので子供のようなところがある」とかなら、まだ筋が通るんですが。


>ㅤナイフで切り分け、丁寧にステーキを口に頬張ると、甘辛いタレと肉汁が絡まっていて咀嚼そしゃくすればするほど、とても美味しかった。


グルメレポはいまいち。

[ナイフで切り分け、丁寧にステーキを口に入れる。咀嚼するほど溢れ出す肉汁が甘辛いタレに混ざり、オリビアは恍惚となった]とかでどうでしょう。


あと、切り分けたステーキを「頬張る」はおかしいです。

「頬張る」の意味は文字通り頬が張る、ものを口いっぱいに入れて頬がパンパンになる状態を指します。ステーキまるごと食べたとかならわかりますが。頬張らないために切り分けたわけですからね。


>───こ、これは!!ㅤさっきの嫌な出来事が、帳消しになるくらい美味しいんですけど…!!


ふううむ。

別にこういう風に感じるキャラがいてもいいんですが、これってもしかしてギャグパートなんですかね?

「ごはんが美味いから全て許す!」みたいな。


だとしたら、前振りが長すぎてコミカルになっていないので、もっと縮めるべきです。店主の発言、オリビアの反応、アテナのフォローをコンパクトにして、すぐに料理の場面に繋げた方が読者の反応はよくなるはず。現状だと笑えも納得も出来ず、なんだかなあ……みたいな読み口になっています。


この流れを変えず、真面目に話を落とすなら、そうですね……

私なら、「ユリアには災害で生き別れになった娘がいる」とかにしますかね。それを最後にアテナに語らせ、「だからまあ、大目に見てやりな」とか言わせます。

そうすれば読者的にユリアを憎めなくなり、料理の美味さもあってオリビアが許すのも共感できるかなーと。


>ㅤそう思いながらハーブティーを口に含んだオリビアは、そのすっきりとした味わいと香りに驚きが隠せなかった。

>ㅤ先程まで残っていたステーキのずっしりとした肉汁の重みが、すっきりと消えたからである。


「すっきり」が被っているので、どちらか変えるべき。

あとハーブティーはともかく、食後にスコーン持ってきて「ステーキの重みが消えた」とか言われても、ちょっと首を傾げますw


>「へぇー、自家栽培……。すごいです」

オリビアは森育ちのはずですが、食料はどうやって到達してたんでしょう。

ハーブは元々野草なので森でも採れそうなものですが。


>「それでね、それでね」とまた話が始まりそうな雰囲気だ。


これはこの作品全体に言えますが、

長話するキャラの出番でも、本当に長話を書く必要はないんですよ。

詳しくは総評にて。


>「おばさんの長話は聞きたくねーわ!

「おばさん」だと丁寧口調に聞こえます。

ここは「おばん」で。


>金の腕輪をコロンッとテーブルの上に置いた。

「コロン」は転がす音なので、テーブルから落ちますよ。

擬音なら「コトリ」とかの方が。


>「これって、登録された冒険者の証じゃないですかぁ〜!ㅤギルドの所で貰えるやつですよねぇ?オリビアちゃん、知らなかったのぉ〜!?ㅤ見たこと無かったぁ?」


「?」の後だけ1マス開いていません。何故?


>アテナの言葉を聞いて、オリビアの体は石のように固まり、時が止まったように感じた。


二度同じことを書くとくどくなり、ギャグの切れが落ちます。

[アテナの言葉を聞いたオリビアは、石のように固まった。]

が適切です。



□第5話 勝手に受理されたDクエスト


>何でも、遺体の判別を分かりやすくする為の制度らしいよぉ〜?ㅤほらぁ。その人の体全てが帰ってくるかなんて分からないでしょ〜?」


「冒険王ビート」で、似たような設定を読んだことがあります。

そちらは胸に証を刻んであり「腕や足が飛んだら判別できない」みたいな理由だったはず。腕だと、そこは不十分ですね。


あと、この証はいわば身分証明、免許証のようなもののはずですが、普通に考えれば本人登録が必須だと思われます。

こんな風に別の人間が適当にもらって来れるなら、偽物の冒険者が横行するので。


呪い的に外せないほど厳重なら、そこら辺は考えて設定した方が読者も納得いく気がします。


>「死んでも取れないものだけど、登録を解除すれば外れるから。私みたいに」


この台詞は悪くないですね。確かにウソは言ってません。


>「アテナさんも有名な元冒険者ですもんねぇ!?私も初めて話した時は感動しちゃったぁ〜!」


もうちょっと自然な会話を心掛けて欲しいところ。

いかにも説明口調でげんなりします。


>オリビアはチラッとアテナの表情を盗み見た

ここも表記がブレていて、アテナの心情が見えてきません。

並べてみましょうか。


>興奮しているユリアを横目で見るアテナの表情は、全くもって冷め切っている。

>オリビアはチラッとアテナの表情を盗み見たが、彼女は表情を変える事はなく飄々ひょうひょうとした感じだ。


「冷え切ってる」からは、アテナが過去を語りたくない、触れられたくないのだろう、と読めます。

でも「飄々とした感じ」には、そういう意味合いは含まれません。気にした様子のない、どちらかといえば恰好をつけてる感じに受け取れます。


二つの描写が食い違うので、アテナの心情が読めず、輪郭がぼやけるのです。今作には少なからず、そんな場面が見られます。


>───うん。たぶん師匠の事だ。肩書きに全然興味がないんだな!

>ㅤ長く一緒に暮らしていた、オリビアの勘がそう言っている。


ここを読んでも、オリビアの勘違いの可能性があるのでどっちなのか全然わかりません。確信してる風でもないし。


>「全く。話が進まねーじゃねぇか……」

このアテナの台詞は、ここまで読んだ私の気分そのものですね。

ここで約一万字。それでは、総評に移りましょう。


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