【01】かずら橋揺れたら(大田康湖) 読みながら感想


【01】かずら橋揺れたら(大田康湖)

https://kakuyomu.jp/works/16818093081245192364



さて、ついに始まりました「じっくり感想企画」。

トップバッターは大田康湖さんです。


太田さんは私と同年代くらいで、長く長く執筆活動を続けて来られた方です。その半生を記したエッセイは大長編で、現在も更新中。


作風としては、あっさりとした筆致と物語性。

ラノベ的なぎとぎと風味ではなく、和風の味付けが特徴。

藤子不二雄的といえば、伝わりやすいかもしれません。


太田さんは前回に参加されまして、感想を書いた後は精力的に手直しを重ね、流石ベテランと唸った覚えがあります。


そんな大田さんの、登録時の情報はこちら。



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応募作品


かずら橋揺れたら

https://kakuyomu.jp/works/16818093081245192364


カクヨムコンに出す予定の長編のプロローグとして作った作品です。


・特に意見が聞きたい部分。


読んでいて説明不足、描写不足な点


・「梶野ならこう書く」具体的なアドバイスが欲しいか。


お願いします。


・学生(中高生以下)かどうか。オブラート増量します。


学生ではありません。


以上、よろしくお願いいたします。


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ちょっとあらすじ見ると、伝記SFっぽい感じでしょうか。

あと恋愛風味?

前回はいかにも藤子的な作品だったので、その視点からアドバイスをしましたが、今回は果たしてどうなんでしょう。専門知識とかなくて大丈夫ですかね。


あと、長編のプロローグとして作った作品、というのも気になります。これを読んで本編が気になるか、という部分も評価しておきたいところですね。


──それでは「じっくり感想」を開始します。




⬜️読みながら感想

二読後の感想を、読みながら書きます。



□第1話 奥祖谷行きのバスで


>2000年7月16日

二十年近く前の設定。

今作は長編のプロローグとして書かれてるということなので、親世代のエピソードとかそういう感じ?


>徳島の秘境、祖谷(いや)

ちろっと調べましたが、祖谷は実在の地名なんですね。

かずら橋も確認。なるほど、日本三大秘境と。


一読した時、「大勢の観光客が来る場所を秘境というかな?」と感じましたが、宣伝文句なら仕方ないw


ただこの描写は秘境感とは真逆なので、初期の段階で払拭しておくべきです。例えば「観光客の大半はかずら橋が目当て」とか。

それならその先の祖谷は、滅多に誰も来ない=秘境のイメージが強まります。


>バスの中ではリュックサックやキャリーバッグを持った観光客に交じり、赤いポロシャツにデニムのショートパンツ、肩までの髪の毛を後ろで一つ縛りに結んだ少女がつり革を掴んで揺られていた。右手にはショッピングバッグを提げている。


ちょっと長いので分けた方が。

[リュックサックやキャリーバッグを持った観光客の中に、ショッピングバッグを提げた少女が一人。赤いポロシャツにデニムのショートパンツ、肩までの髪の毛を後ろで一つ縛りに結んで、つり革を掴んで揺られている。]


>その時、対向車線から走ってきたバイクを避けようとしてバスが左側に寄った。


対向車線を走っているだけなら、バイクを避ける必要はありません。

対向車線から「はみ出した」などの方が。

ただ、バスはそんな機敏に対向車を避けたりしないイメージはあります。狭い山道でしょうし、避ける方が危険かなと。


なので私なら、この場面は単に「急カーブで揺れた」くらいにします。このバイクが伏線とかでもないですし。


>「すみません」

> Tシャツにカーゴバンツの青年が頭を下げる。

>「い、いえ」

> 少女はあわててショッピングバックを拾い上げると、つり革を握り直した。


主役二名のファーストコンタクトとしては、あまりにも薄味です。

短編ですから、使える場面は全て利用してしかるべき。

とくにこの場面は、主役二人のキャラを読者に印象付ける、最初の機会です。両方とは言わずとも、せめてヒロインの方はもっとアクションを起こすべきかと。


まあ二読して感じたのは、総じてキャラが薄いことなので、まずはそこの強化からかな、とは思いますが。


>少女は空いた椅子に座り、隣の青年も椅子に腰掛ける。


ここは離れた席に座った(おそらく)ことを書いた方がよいです。

二人のこの時点での距離感にも通じます。


>「すみません、『民宿 山乃端やまのは』ってご存じですか」

> 少女は改まった顔で答えた。

>「うちの民宿です。ご案内します」


ここら辺はお約束ですが、いいと思います。


>「今夜予約した斗南となん速登はやとと言います。茨城の陽光原ようこうばら大学一年生です」


初対面の女性相手に、いきなり学校と学年を告げるのは、ちょっと現実味が乏しい気が個人的にはします。普通は名前を告げる程度ではないでしょうか。教える必然性が欲しいところ。例えば、鐘子の方が「どちらから?」「大学生ですか?」と問うなど。


>「私は山乃端鐘子しょうこ、高校二年です。うちは小さな宿だけど、剣岳つるぎだけへの登山客がよく泊まってます。温泉も引いてるし、料理もおいしいって評判ですよ。お客様も登山にいらしたんですか」


ここは上手く民宿の説明が出来てます。


>速登はリュックサックを背負い直した。

とくに意味のない描写……かと思いましたが、読み直すと「リュックを気にしている」的な意味合いですかね。

でもこの書き方だと、ちょっと伝わりづらいかと。


この流れなら、

[そう言えば速登のリュックは登山用ではない]

くらいの方が適切かと。


>「もしかして、『鎮めの舞』ですか」

>「はい。詳しくはお父上にお目にかかってからお話しします」


この感じだと、父親は事情を知ってる風ですね。


>鐘子はその横顔に不思議な懐かしさを覚えた。


何かの伏線ぽいですが、未回収のような……

いやまあ、「ぽい」だけなのでいいんですが。


>髭面の精悍な男性だ。

「ひげづら」「せいかん」はルビがあってもいいかも。


>今日は日曜なので、予約のお客さまはお一人だけです。


ちゃんと実際のカレンダーに合わせてありますね。



□第2話 古文書と謎の物体


>「鮎の塩焼きに阿波尾鶏あわおどりと根菜の煮物、祖谷いや名物のこんにゃくと石豆腐いしどうふの味噌汁でございます。祖谷そばの小椀を後でお持ちします」


地元の特産料理の名前が並ぶのは、雰囲気あっていいですね。

阿波尾鶏は昔食べたことあります。美味しかったです。


欲を言えば、「石豆腐」なんかはイメージがしづらいので、何かしら描写があってもいいかな、くらいです。まあ短編なのでここは流して正解ですかね。


>『今夜22時02分から23時49分まで、20世紀最長時間の皆既月食が起こります。


お。この月食も現実通りなんですね。凝ってるなあ。


>「手紙に書いてあった件かね」

ここだけ敬語でないのは謎。父親の台詞ですよね、これ?

もし心情の変化の反映なら、何かしら描写を加えるべきかと。

[父親は顔色を変えた]とか。


>「ああ。鐘子も着替えて一緒に話を聞きなさい」

速登は話をするとは言っていないので、「話を聞きなさい」は午後九時の件と別の話かな?とも読めます。


ここはわかりやすく[一緒に来なさい]がいいのでは。


>厨房から幸星こうせいが食器を洗う音が聞こえてくるだけだ。


ぶっちゃけ、今作に兄の名前を出す必要はないのですが、まあプロローグということで、後々登場するのかもしれませんね。


>丸い物体が降ってくる様子が筆で描かれており


丸い物体のサイズが知りたいところ。

後に月や宇宙船とか出てくるので、余計に。


>「乃地日のちひの星 鎮しずめし娘に 光の剣を授けたり』と書かれています。


『が抜けています。


>『鎮めの舞』という門外不出の踊りが伝わっている


後に鐘子が、

「毎年お盆の時に踊ってたけど、よその人の前で踊るなんて初めて」と言ってます。

「門外不出」と言われると「誰にも見せない」というイメージが強いですが、実際のところはどうなんでしょう?

「お盆に踊っていた」だと盆踊り的に村では踊られてる印象がしますし、「よその人の前」は祖谷の人以外、とも読めます。


要するに「門外不出」の範囲が、山乃端家なのか奥祖谷なのかわからないわけです。


私なら[山乃端家にのみ伝わる]とかにしますかね。

その方が秘伝という感じがしますし。


>「これは『光の剣』の変化した姿だと思います。僕がこの箱を祠に供えるので、その前でお嬢さんに踊っていただけませんか」


いやいや!

このお願いは、相当論理がかっ飛んでると思います。


この時点での情報を整理すると、


・月食の夜、かずら橋が揺れ、星(丸い物体?)が落ちた。

・乃地日の星は(丸い物体を?)鎮めた娘に光の剣を授けた

・光の剣=塊だと思う


だけです。

ここから「箱=光の剣を祠に供えて、その前で踊る」ことに何の意味があるのか、全然わかりません。詳しくは「総評」にて。


> 速登の頼みを貴星は快く受け入れた。

>「お話は分かりました。午後10時前に祠へご案内します」


いや、そこはちょっとは首を捻りましょうよ。

フィールドワークとか越えてますよこれ。


>速登の声を聞きながら鐘子は、なぜか胸の動悸が高まるのを感じていた。


私はこの話の先の展開が危ぶまれて、動悸が高まってます。



□第3話 乃地日祠と『鎮めの舞』


>(毎年お盆の時に踊ってたけど、よその人の前で踊るなんて初めてやな。なんか緊張してきた)


前述しましたが、ここはいまいちわかりづらいです。


>「さあ。星の名前なんでしょうが、何が真実で、どこからが伝承か、今となっては見当も付きません」


私だったら「星が降って来た」とか「星が剣をくれた」の時点で懐疑的になります。平家落ち武者伝説がある地ですし、星=平家の武将の一人……みたいな解釈をしそう。


>「僕の勝手な推測ですが、かずら橋に落ちてきた丸い物体は宇宙船で、『乃地日』というのは光の剣を授けたという宇宙人の名前ではないかと思っているんです」


いやあ……まあ、速登がこれを信じるのは百歩譲っていいとして。

父親がこの話に納得してしまうのは、流石にリアリティを感じません。


>(この人、意外にロマンチストなんやな)

> 鐘子は速登の新たな一面が見えた気がした。


この感想も、ちょっとズレてる気がします。

そもそも速登の性格がここまで全く描写されていないので、「新たな一面」と言われても共感できません。


私的には速登は学者肌と言うよりオカルトマニアな印象に変化してるので、民宿親子のあるべき反応は、


(ねえ、宇宙人ってマジで言ってるのかな?)

(お客さんのご希望なんだ。黙って踊ってやれ)


みたいな感じかなと思うんですが。

それを避けるなら、もっと速登に論理的な思考をさせるべきだと思います。


>「この乃地日祠は三波石さんばせきでできています。阿波あわの青石と呼ばれる綺麗な石です」

>「大歩危おおぼけの吉野川下りの遊覧船に乗れば、辺り一面この石が取り巻いてる光景が見られますよ」


こういう特産品情報は大変よいですね。

「三波石、阿波の青石」という名前も素敵でわかりやすい。

舞台選定は上手いなと思います。


>既に満月はかなり欠けており、影となった部分が赤銅色に沈んでいる。


ちょっと月食の写真を探しましたが、確かに赤銅色のものがありました。いい表現かと。


>鐘子は扇子を開くと、満月を掬すくうように掲げる。


この描写も素敵ですね。


>扇子を静かに上下に動かし、蝶が羽ばたくように舞う鐘子は、


ここはやや平凡。私なら、

[音もなく扇子を羽ばたかせ、蝶のように舞う鐘子は、]


>速登が鐘子をかばうように前に立つ。


「ように」は不要。

[速登が鐘子をかばい、前に立つ。]


>光が消えると、鐘子は速登と共に森の中の獣道のような場所に立っていた。


ここでタイムリープが起こったわけですが、過程に疑問があるので、この展開にもご都合感を覚えてしまいます。

まあタイムリープ自体が論理的な話ではないので、とばっちりと言われればそうなんですが。納得感は大切です。


>「父さん?」

ここは自分をかばった速登を気遣うのが先では。


>「それより、ここは一体どこなん?」

むしろ地元民である鐘子に聞きたいくらいです。

見覚えのある場所かどうか、まず自問させるべきかと。


>「僕たちはあの本に書かれた月食の晩に来てしまったのかもしれないな」


そ の 理 解 は お か し い。


>「それじゃ、これから星が落ちるってこと?」


誰 か つ っ こ ん で !


……せめてこうもう少し、タイムリープした根拠的な何かを提示すべきです。

私ならそうですね……事前に古文書にその時にしかない手掛かりを残しておくとか。例えば山火事が発生して描き残されてるとか。


あとはスマホの確認とかどうでしょう。見覚えのある場所なのに電波が来ていない=過去に飛んだのでは?とか。これでも苦しいですが。


いや、そもそも奥祖谷ってスマホ使えるんですかね?


>「とにかくかずら橋を探そう」

これも、何故飛ばされた先が奥祖谷だと判断してるのか謎です。

ここはまず鐘子に「見覚えがある」と言わせるべきです。



□第4話 かずら橋の男女


>速登の持つ「光の剣」が懐中電灯代わりだ。

こういう細かな描写はさすが。

脳内イメージしやすいです。


>「申し訳ないことをしてしまった。君のためにも絶対に現代へ帰らないとな」


この後の将来の会話とかも含めて、激しい違和感。

そんな話をしてる場合じゃないでしょう。


理屈も何もなく飛ばされたんですから、帰る方法なんてわかるはずもない。

わからないので「とりあえずかずら橋へ」という判断はわかりますが、内心で無関係な話が出来るような余裕があるか?と感じました。

特に速登の方。もう少し申し訳ない気持ちを出した方がいいかも。


例えばこういう会話でも、一人が心配性で一人が呑気だったりすれば、キャラが立ちます。将来の話よりキャラを魅せる方が優先事項です。


>森を離れた道は、谷川の脇に続いていた。

ここ、谷川に対する距離感が読み取れません。


1.谷川のすぐそば、渓谷の下に出た。

2.谷川を見下ろす、渓谷の上に出た。


読み進むと2だと思われますが、この時点で明記すべきかと。


>「今というか、未来というか」

悪くない突っ込みですが、速登の性格が不明瞭なのでパンチがイマイチ。


>そういえば、斗南となんさんはかずら橋渡るの初めてやな。


えっ、渡るの前提なの? 何のために?


>道はどんどん川に近づいていき、上り坂になった。


あれ、谷川の脇についたのかと思ったら、違った?


>速登はとっさに「光の剣」を背中に隠すと、鐘子の手を引っ張って橋のたもとに身を寄せた。


懐中電灯を背中に隠しても意味ないですよね?

橋のたもと=そばに隠れるとは?

まだ上り坂の途中で、橋は「見えて来た」距離のはず。


ここは私なら「剣を服の下に隠す」「大木の陰に身を寄せた」とかにしますかね。


>男は光る物体を持ち

見たらわかるはずなので、ここは「光る剣」でいいかと。


>「お願い、見逃して」

この台詞も意味不明です。

隠れてる相手に「見逃して」もないでしょう。


>若い女が手を合わせる。速登は覚悟を決めたように『光の剣』を取り出した。

>「僕たちはあなたがたの味方です。話を聞かせてください」


まず、剣を取り出しながら言う台詞じゃないですw


この台詞もさっぱり意味が分かりません。

相手が誰かも知らない状態で、味方も何もないでしょう。

二人は逃げている最中のようですし、話を聞く余裕があるとも思えません。



□第5話 乃地日とお鐘


>「僕は斗南となん速登はやと。今夜と同じ月食の晩、ずっと先の時代の祖谷いやから来ました。


いやまだ確定してませんよ、その設定!


>「お鐘が名付けてくれた。我らはあの道の先の祠に行くところだ」

> 乃地日はかずら橋の先に延びる分かれ道を指す。


ううん?

「かずら橋の先に延びる道」だと「渡った先の道」と読めますが。

でもこの二人、かずら橋を渡ってこちらに来てましたよね。

ここの道の説明は手を加えるべきかと。


>「僕たちもご一緒させてください」

ま、行くあてがあるわけでもないですし。


>速登の言葉に乃地日はうなずいた。

考えたらこの人、速登の「未来から来た」発言をスルーしてますね。宇宙人から見て、タイムリープってどうなんでしょう。


>四人は塚の後ろに隠れた。

え、何故?

塚の後ろに隠れるのも謎ですが、何故速登と鐘子まで?


あと、ここに出てくる祠って、山乃端の裏にあった祠と同一なんですかね。だとしたらここで鐘子に「将来家が建つ場所」だと語らせて、改めてこれがタイムリープであることを確信させるべきでは。


>「お盆に舞う舞のことかいな。去年かずら橋の前で舞の稽古をしてたら、星が落ちてきたん。そこから出てきたのが乃地日さんなんよ」


舞いに超常性があるわけではないみたいですね。


>お鐘は傷ついた我を介抱してくれた。里の人たちも壊れた船を祠の下に隠してくれた。


介抱はともかく、何故壊れた船を隠す必要が?


>「祖谷は平家の落人をかくまった隠れ里やもんな。昔から困っとる人に優しいんや」


これは一定説得力があって、いいかと。


>「しかし、『光の剣』を通して、星の仲間が迎えに来ると知らせが入った。このままではお鐘と別れなければいけない」


ここも謎ですね。帰らないと言えばいいだけでは。

強制的に連れ戻される理由を設定すべきですし、誰かにその点を突っ込ませるべきです。


>「我らが逃げられるよう、囮になってくれないか」


な に 言 っ て ん の。


>「斗南さん、うちは二人の味方になってあげたいけど、未来に帰れるかも分からないし、どないしよう」


台詞が支離滅裂です。

パニックの表現だとしたらある意味深いですが。


>「僕らが呼ばれたのが月食のせいだとしたら、月食が終わる時が帰るチャンスだと思う。時間稼ぎを兼ねて、かずら橋の前で『鎮めの舞』を踊ってもらえないかな」


「おまえは何を言ってるんだ」のAAが脳内に。

「月食で呼ばれた」という根拠も謎なら、「終わる時がチャンス」も根拠不明です。

仮定に仮定を重ねて根拠っぽくしないでください。


かずら橋の前で踊る……こっちはもっと意味不明です。

囮って意味ですかね。踊る必要がどこに?


というか、逃げているのは乃地日なので、鐘子が踊っても囮にすらならないのでは?

まあ速登でも囮になる気がしませんが。乃地日、緑色だし。



□第6話 星の船


>まだ満月は赤銅色に沈んでいる

この表現は二度目なので、変化を付けた方がよいです。


>「折角やし、かずら橋の上で踊ろうかな」

>「さすがに危ないよ。僕が『光の剣』を出すから、橋のたもとで踊ってほしいんだ」


もうこの二人が何を考えて行動してるのか、理解不能です。


>「うん。二人が山の小屋に逃げるまでの時間稼ぎやしな」


そんな話、初耳ですが。

それなら何故、塚とか祠に向かってたんで?


>丸い物体がバウンドするように浮かんだ。


ここは「跳ねた」の方がいい気も。

あと、丸い物体のサイズを書いてください。

宇宙船が着地したら地響きくらいしそうなもんです。


>(ノチィヒ星の仲間よ、迎えに来たぞ)


宇宙人、節穴なの?


(現地人が何故『光の剣』を持っている? もしや仲間から奪ったのか)


>「違う、誤解だ!」

> 速登が声を上げるが、宇宙人、いやノチィヒ星人は右手を伸ばした。その手に『光の剣』が握られている。


この流れから何故、


>(あの二人から少しでも引き離さないと)

> とっさに鐘子はかずら橋へと走り出した。


になるのか、まるでわかりません。

狙われているのは速登で、鐘子がかずら橋に向かっても意味不明です。

これが速登をかばって前に出るとか、宇宙人に体当たりとかならわかりますが。


>速登は叫びながらかずら橋の前に立ち、

いやだから、狙われてるのは君の方。


>「光の剣」から緑色の光が放たれた。光はかずら橋に当たり、橋桁が切り裂かれる。


???!

何故、「光の剣」を持つ目の前の現地人より、逃げる女を優先して狙う必要が? 別にほっとけばいいと思うんですが。誤解されてる速登が攻撃されるならいざ知らず。


ここら辺の展開、ずっと違和感の嵐なんですが。

各自の心理と目的を整理してイチから書き直すべきだと。そう難しくないはずです。


私ならうーん。

例えば速登に「光の剣」が向けられる寸前、飛び出した鐘子が剣を奪い取り、そのままかずら橋を渡って逃げていく。これを危険視した宇宙人は、別の一人が取り出した剣で橋を撃つ──みたいな展開にすると思います。見せ場がここに来るのは正解なので。


>カプセルの前面が壊れており、乃地日のちひとお鐘かねが乗っているのが見える。


これ、村人が祠に隠したという宇宙船ですよね。

山小屋に向かった意味とは……?


> 乃地日は「光の剣」を掲げてノチィヒ星人に呼びかける。

>(我はお鐘とこの星に残りたい。他の仲間を迎えに行ってくれないか)


いやいや、ちょっと待ってくださいよ。

あなた見つかったら強制連行されるから、囮まで使って逃げてたんですよね?

なんで自ら戻ってきて、お願いしてるんです。

囮を引き受けた二人にしたら、完全に意味不明じゃないですか。


>(それは許されない。一緒に帰るのだ。さもなくば)


ここら辺も理由が不明なので、いまいち展開に乗れません。


>ノチィヒ星人の持つ「光の剣」から再び光が放たれた。光は乃地日とお鐘の乗る「星の船」に当たり、大きな爆発が起きた。


ええー。なんですかその展開は。

完全に馬鹿みたいじゃないですか。四人とも。



□第7話 阿波池田行きのバスへ


>母さんや幸星こうせいにも隠せないし

ここはいまいち意味がわからないので、削ってよいと思います。


>「これは、鐘子さんの扇子では」

> 桐箱の中には古びた扇子が入っていた。


時間旅行ものの定番ですが、まあいいかと。


>「それじゃ、お鐘さんたちがうちの扇子を見つけて供えてくれたんかな」


あの爆発で生きてたんですか?

妊娠してたのに?


>「これは僕の推測ですが、僕や箱を手に入れた先祖、そして鐘子さん達には乃地日さんの星から来た人たちの血が入っているのではないでしょうか。だから『光の剣』を使え、彼らのテレバシーも受け取ることができたんだと思うんです」


山乃端家に宇宙人の血が混じってるのはよいとして。

速登がそうだという話は、推論にしても飛躍が過ぎます。


そもそも「光の剣」が使えるという根拠も、「血筋以外は使えない」という場面が皆無なので、根拠になっていません。私は誰でも使えるものかと思ってました。ビームなんかは別として。


テレパシーも同じで、一方通行で送られるものなら相手関係ないものではないかと。速登自身がテレパシーを使ったとかならまだわかるんですが。


>「ともかく、今夜のことはここだけの話にしておこう。乃地日さんも静かに眠りたいだろうしな」


私もようやっと、静かに眠れそうです。


>「うち、斗南さんの通う大学に行ってもええかな」


ここ以降の二人の会話シーン。

内容は特段悪いわけではないですし、高所恐怖症なのに助けた点を持ち出すとかは評価できるんですが、どうにも取って付けた感があります。


一言で言うとどちらもキャラが立っておらず、二人の将来に興味が持てないのです。聞いても「ふーん」という感じで。

ここら辺は、改めて総評で触れます。


>その後、陽光原ようこうぱら大学に進学した鐘子は速登と結婚する。速登は実家の骨董品屋の後を継ぎ、二人には天界てんかいという名の息子が生まれた。


ここも「ふーん」ですね。

共感できない二人の未来なんて、知らない芸能人の結婚くらいどうでもいい話です。


まあプロローグとして設定開示して締め、みたいな感じなんだと思いますが、個人的には失敗作ですね。この内容で続きが気になるかと言えば、はっきりとNOです。グダグダなので。


この短編で大田さんが何を描き、何を伝えたかったのか。

それはプロローグとしての役目より大事なはずですが、何も見えてきません。

そこからもう一度、見直すべきではないかと思います。


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