第83話 プロゲーマー


 太陽さんは、めちゃくちゃ俺に親切に教えてくれた。

 初心者にイライラするプレイヤーの多いこのオーバーウィッチの中で、太陽さんだけは神みたいに優しかった。

 やはりトッププレイヤーともなると、見えてる世界が違うのかな……。

 しかも、教え方もすごく上手い。

 おかげで、俺はみるみるうちにうまくなっていった。


 そうこうしているうちに、俺は次第に、オーバーウィッチにドはまりしていった。

 正直、こういう対戦ゲームにはまるのは初めてだった。

 年甲斐もなく、俺はオーバーウィッチにドはまりした。

 今の俺は、仕事もしなくても食っていけるし、外に出るような必要もない。

 それもあってか、俺は一日中オーバーウィッチにのめりこんでいった。


 それに、今は外に出るとマスコミや人に注目されて、正直歩けたもんじゃない。

 買い出しも、転移魔法を使えばすぐだしな。

 あとはたまにおもちたちをダンジョンに連れていくくらいか。

 それ以外は、外出することもないし、俺はオーバーウィッチだけに熱中した。


 普通の人は仕事にいったり学校に行ったりする中で、俺だけはオーバーウィッチに時間を割ける。

 そのおかげもあってか、俺はどんどん上達した。

 そして、オーバーウィッチに染まっていった。


「なんだよこの味方……! 全然キルしねえじゃん……!」


 次第に、俺も味方にイライラするプレイヤーの気持ちがわかるようになった。

 まあ、さすがに暴言とかはやらないけど……。

 俺はソロで配信しながら、オーバーウィッチを一日中やりまくった。


 最初は、コメント欄も冷ややかだったが、俺が熱心にやる姿に、どんどん視聴者からの評判もよくなった。

 そして実際に俺が強くなっていくと、コメント欄も手のひらを反すようになった。


【いやー最近の辻おじナイスだわ】

【めっちゃうまくなったね】

【どんどん上達するから見てて楽しい】


 俺はソロで、マスターランクにまで達するまでになった。

 さすがにグランドマスターは無理だけど……。

 これでも、かなりうまくなったと思う。


 さて、そろそろカレンたちとまたコラボしようか。


 俺はカレンとひかるんを呼び出した。

 そして、また3人でパーティを組んでプレイする。


「二人とも、オーバーウィッチやろう!」

「わかりました! 最近先輩うまくなってますもんね……! 私も、今度はなるべく怒らないようにします……」


 カレンは、初心者の俺にキレ散らかしたことを、あとになって謝ってくれていた。

 プレイ中はムキになるが、冷静になると、後悔したらしい。

 まあ、今では俺も、カレンの気持ちがわかる。

 最初の俺は、マジで酷いプレイをしていたからな……。


「よし! 今日は勝ちまくりましょう!」


 ひかるんがそう言って、ランクマッチのプレイボタンを押した。



 ◇



 その日、俺たちは完璧な連携を見せた。

 そして、ランクマッチで勝ちまくった!


「すげえ! 俺たち息ぴったりだったな!」

「さすがです!」

「やりましたね!」


 今日はコメント欄も、めちゃくちゃ盛り上がっていた。

 神プレイに継ぐ神プレイで、同時接続人数は1000万を突破していた。

 オーバーウィッチは世界中でプレイされている人気ゲームだから、海外からのリスナーも多い。


 おかげで、かなりゲーミングPCの宣伝にもなったと思う。

 トラオからは電話がかかってきて、感謝を伝えられた。

 そして、プレデターウェアから、とんでもない申し出があった。


 なんと、俺をプロゲーマーとしてスポンサードしたいというのだ。

 プロゲーマーには、主に二種類ある。

 チームを組んで大会に出たりして、賞金を稼ぐもの。

 ストリートマーとして、配信で金を稼ぎ、スポンサーから給料をもらって生活するもの。


 今の俺の同時接続人数からしたら、スポンサーになってもいいというのだ。

 俺は、その話を受けることにした。

 今日から俺は、プレデターウェア所属の、オーバーウィッチプロゲーマーになったのだった。

 太陽選手のように大会に出たりはまだできないだろうけど、配信で楽しくやっていこうと思う。


 次の日には、【辻おじ、プロゲーマーになる】と記事が出ていた。

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