第二部 

異界編

第56話 国境の長いトンネルを抜けるとそこは――。


 国境の長いトンネルを抜けるとそこは――。


 ――異世界だった。


「どこなんだ……ここ」


 ダンジョン深層を抜けると、そこにはまるで異世界としか思えないような光景が広がっていた。

 異世界転生っていう感じの漫画は、読んだことがある。

 だけどまさか、自分の身に降りかかるなんて思わないじゃないか。

 でも、よく考えたらそりゃそうだ。


 現代にダンジョンがあって、モンスターがいて……亜人もいる。

 だったら、どこかに異世界があっても全然不思議じゃない。

 むしろ、異世界がないほうが不自然だろう。

 ダンジョンはなぜ出来たのか、ダンジョンはどこから来たのか。

 その答えが、この異世界にあるような気がする。

 だったら、ひかるんの亜人症の答えも……。


 目の前に広がる異世界の光景を、ダンカメがとらえる。

 コメント欄が盛り上がる。


『うおおおおおおお……!? マジで異世界なの……!?』

『なんで異世界なのに電波通じてるんだ……?』

『とりあえず探索しよう』

『まさかダンジョンが異世界へ通じているなんて……』


 俺とひかるんは、なにもない草原に立ち尽くす。


「ひかるん、とりあえず……どうする……?」

「そうですね。とりあえず、散策してみましょうか」


 俺たちはゆっくりと草原を歩き出す。

 一応、帰り道がわからなくならないように、方角だけは意識しながら。


 てか、なんでスマホもダンカメもインターネットにつながってるんだ……?

 異世界にも電波通じてるのか……?

 まあ、ここまできたらなにが起こっても不思議じゃないけどな……。


「って……同時接続者数えらいことになってるな……!?」


 ふとスマホを確認すると、なんと、同時接続者数だけで100万人超えていた。

 さっきチャンネル登録者数100万人超えたと思ったら、もう300万人になってる。

 なにがあった……?


『ニュースでやってたからな』

『今海外でもニュースやってるで』

『全世界同時中継やるみたい』


「マジか……」


 どうやら、外の世界ではそんなことになっているらしい。

 まあ、それもそうか。

 ダンジョン深層の制覇なんか、前代未聞の出来事だ。

 それに、まさかまさかのダンジョンの向こうが異世界になってたんだもんな。

 そりゃあ、全世界からの注目を浴びても不思議じゃないわな……。


 そうしている間にも、みるみるうちに、視聴者数は増えて、500万……一千万まで到達した。

 チャンネル登録者数もみるみる伸びる。

 ダンジョン制覇したことを祝うスパチャが飛びまくってて、もはや目で追えないくらいだ。

 これ……俺は億万長者にでもなるのか……!?


 あ、ちなみになぜそんな状況でも俺がコメント欄を拾えているかというと。

 それは注目すべきコメントをAIがある程度選別して表示してくれる、ダンチューブのシステムによるものだ。

 おかげで、いくらコメントが増えても、大事なコメントを見逃すおそれがない。


「とりあえず……みんな異世界に興味津々だな……」

「ですね……」

「まずはこの世界のことを知る必要があるよな……。とりあえず街でも探すか……。てか、街とかあるのかな……」


 しばらく草原を歩いていると。

 草原の向こうから、馬車がこちらに向かってきた。

 馬車は後ろから、なにかに追われているようだ……。


「&&&$$$#!!!*!*!ARAFAWRWW!!!!」


「え……?」


 馬車に乗ってる男が、なにやら叫ぶ。

 

『は……? 今なんて……?』

『何語?』

『異世界語……!?』

『日本語でおk』

『なにいってだこいつ』


 馬車は、どうやらモンスターに追われているようだった。

 モンスターは獰猛な、猪モンスターで、馬車に対して怒りを向けている。

 これは……とりあえず助けるか。

 第一村人発見だ。

 この異世界人を助けて、なにか話をきこう。


「よし、だいふく! よもぎ! あの猪モンスターに攻撃だ……! 馬車を助けるぞ……!」

「がう!」「ぐるぅ……」


 だいふくが馬車と猪たちの間に割って入る。

 そして上からよもぎがドラゴンブレスで攻撃だ……!


 猪たちは踵を返して逃げ出した。

 だが、

 そこをいなりが追い詰める……!

 いなりはだいふくと反対側に回り込んで、猪を挟み撃ちにする。


「よし、いなり、だいふく! トドメだ!」


 ――ズガーン!


 いなりとだいふくによって、猪モンスターは全滅だ!


 そして勢い余って馬車は止まれないでいた。

 どうやら馬がパニックになってしまっているようだ。

 このままだと馬車はどこかにぶつかってしまったりするかもしれない。

 そうなれば大けがだ。

 俺はおもちに命令を出す!


「おもち! 馬車を助けろ!」

「きゅいー!」


 まるで任せろと言わんばかりに、おもちは馬車の目の前にはだかった。

 おもちは超巨大サイズのスライムに変身すると、馬車をそのまま大きなぷるぷるボディで受け止めた。


 ――ぷるん。


 おもちをクッションに、なんとか馬車は制止する。

 俺は馬車に駆け寄る。


「大丈夫ですか……?」

「JAJKNDA’”YRAN”!!)#)#””!!!!」


 なにやら言われるが、なに言ってるのかわからん。

 すると、馬車の男はなにやら荷物から取り出した。

 これは……こんにゃく……?


 そして、それを俺に食べるように促してくる。

 怪しいやつじゃないだろうな……?

 とりあえず、おそるおそる一口食べてみる。

 すると、男の言葉が明瞭にききとれるようになった。


「助けてくださり、まことにありがとうございます……! あなたは命の恩人です!」


 俺は思った。


「これ、翻訳こん〇ゃくかよ……!?」





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【あとがき】


ちなみになんですが、みなさんはどのキャラが好きですか?

僕はおもちとひかるんです。

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