第34話 おじさんアニメみるんだ


 ここ最近、ダンジョンに行ったりして疲れたな。

 今日は久々に家でのんびりするか。

 せっかくだから、のんびり配信でもするか。

 俺はカメラのスイッチをオンにする。


「そういえば、おもち……進化したとき狼の形に変身してたよな」

「きゅい?」


 おもちは進化したときに、だいふくの姿をまねて、狼の形に変形していた。

 そのことを思い出す。


「もしかして、他の形にも変身できたりするのか?」

「きゅい!」


 すると、おもちは俺の顔に変身した。

 スライム色の俺の生首が、その場に誕生する。


「うわああ……!? きもい……! おもち、それやめて!」


 するとコメント欄が盛り上がり始める。


『草wwwwwwww』

『おもちきもいwwww』

『おじさんの顔で草』

『大好きなおじさんになろうとしたんだね』

『おもち可愛い』


「きゅい……?」


 おもちはなにが悪かったかわかっていないようだ。


「おもち……きもいとか言ってごめんな……。でも、どうせならもっと他のものに変身しようか……」


 他になにかいい変身できるものはないか、俺は部屋を物色する。


「お、これなんかどうだ」


 俺は部屋に飾ってある、アニメのフィギアを持ってきた。

 『Re一から始める異世界旅行記』というアニメのヒロイン、『リム』のフィギアだ。


『お、リセカか』

『おじさんアニメみるんだ』

『リセカとはいい趣味してるな』

『リムちゃんじゃん』


 俺はリムのフィギアを、おもちの目の前に持ってくる。

 すると、おもちはそれをしばらく観察したあと。


「きゅいきゅいー!」


 おもちは見事に、リムの姿に変身した。

 進化状態だから、大きさは等身大だ。

 そして、細部まで再現されている。

 精巧なつくりのフィギアなのに、大したものだ。


「おお……! 等身大のリムちゃんだ……! すげえ……! すげえぞおもち!」

「きゅい!」


 おもちは褒められたとわかったのか、飛び跳ねて喜んでいる。


「おもち、芸術の才能もあったんだなぁ……」


『親バカだwwww』

『でもおもちすげえわ』

『たしかに、精密なコピー能力だな』


「他にもなにかなれるかな……」


 俺はインターネットで、画像検索をしてみる。

 そして、PS5の画像を表示する。

 PS5、最新型のゲーム機で、品切れしまくっててなかなか手に入らないやつだ。


「きゅい?」

「これになれるか?」

「きゅい!」


 すると、おもちはPS5そっくりの姿に変身した。


「おお……! すごい! ずっとほしかったんだよなー。でも全然売ってなくてさー。実物触れただけで満足だよ……。……これ、まさか起動できたりは……さすがにしないよな……?」

「きゅい?」


 すると、おもちPS5から、コンセントケーブルがひょいと伸びた。

 そして、HDMIケーブルも伸びた。

 まさか、おもちはこれを刺せって言ってる?


「おもち、これコンセントにつないで大丈夫か?」

「きゅいきゅい」

「マジか……」


 俺はおもちPS5から伸びている各種ケーブルを、テレビとコンセントにつないでみる。

 これ、おもちは感電したりしないのだろうか……。


「まさか……マジで起動できるのか……?」


 俺はおそるおそる、おもちPS5のスイッチに手を伸ばす。

 ――ピ。

 すると――。


 ――パン!


 PS5の軽快な起動音とともに、画面にロゴが表示された。


「うえええええ……!? マジか……!?」


 おもち、どこまで精密機械を精密に模写できるんだよ……。

 怖いよ……。


『起動できてて草』

『キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!』

『PS5手に入れてて草』

『これは草wwwwwwww』

『ゲームできるんか……?』


 もしかして、ソフトも指定したらゲームできたりするのだろうか。

 俺はまたスマホで、画像を検索した。

 エルデムリングというゲームのソフトの画像を、おもちにみせる。


「おもち、これもコピーできるのか?」

「きゅいきゅい!」


 すると、おもちPS5から、一部塊が分裂し、分裂したその塊は、ソフトになった。

 俺はソフトを、おもちPS5に入れてみる。

 すると――。

 画面に、エルデムリングの文字が表示される。


「マジでできた……やべぇ……」


 そうだ、コントローラーだ。

 俺はコントローラーの画像も見せる。

 すると、おもちPS5からコントローラーが出てきた。


「おお……! マジで遊べる……!」


『ゲームいらんやんwwww』

『おもち万能すぎるだろwwww』

『なにこれwwww』


 しばらく俺はエルデムリングで遊んでみることにした。

 普通に遊べてびっくりだよ……。

 おもちの身体どうなってるの……?


 でもさすがに、これってゲーム作ってる人にも悪いよなと思い、しばらくしてやめた。

 まあ、そのうちPS5はちゃんと買おう。

 でも今回のことで、おもちにできることの幅がとんでもないということがわかった。


「おもち、お前はいったいどこまでできるんだ……?」

「きゅい?」


 おもちは自分がやったことがいかにすごいかわかっていないようだ。

 それからもいろいろ試してみて、わかったのだが。

 どうやらおもちは、その姿だけでなく、コピー元のものがもつ性質や機能までコピーできるらしい。

 だから、だいふくをコピーしたときは、だいふくと同じ強さになったのだ。

 狼の牙やスピードもそのまま映しとった。


 おそらく、他のモンスターをコピーすれば、そのモンスターの能力を使えるのだろう。

 そう考えると、戦闘面でもおもちの可能性は無限大だ。


 俺はそれから、おもちをギターに変身させて弾いてみたりして、遊んだ。


「でもやっぱり、俺は元のおもちが一番大好きだ」


 俺は元に戻った小さなおもちを抱きしめる。


「きゅいー♡」




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