第73話 ゼグロンの猛攻

 しかし、エアリスはユリカほどのアホではない。


「こ、国王陛下! ご無事ですか!?」


 連れて来た5人の衛兵たちとともに、眠っている国王のそばへ駆け寄った。これで、国王を人質に取られる心配も無くなった。


「たかが人間ごときが……ここまで私にダメージを与えるとは……許さんぞ……!」


 青いフレームの眼鏡の奥に宿る眼光をギラつかせて、オレたちを睨みつけるゼグロン。大量の汗までかいていて、全く余裕は感じられない。


「サンダーフレア!」


 ゼグロンの右手が激しく光った。さっき放った電撃の魔法だ。

 しかも、今度は放った光が3つに分かれていく。


「くっ!」


 オレは、ギリギリでそのうちの1本をかわした。だが、残りの2本は……。


「きゃあああ!」


 同時にベルファの悲鳴が響き渡った。やはり、ベルファとユリカも狙われていたのか……!


「ベルファちゃん!」


 不幸中の幸いか、ユリカは偶然にも電撃をよけていたらしい。慌てて、倒れたベルファのそばへヒーリングをかけるべく走り寄った。


「よくもベルファを……! こうなったら、ボクが相手だ! キミたちは、陛下をお守りして!」


 すっくと立ち上がったエアリスが、そばにいた衛兵たちに指示を出す。お前、意外とリーダーシップがあるね。やっぱり、勇者を目指していると、こうなるのか?


「行くよ、ナリユキ! フォーメーションBだ!」


 エアリスが、今度はオレに指示を出した。ちなみに、この手の作戦内容って、全部エアリスが考えてくれている。短期間だけど、一応練習させられたんだよね。

 オレはゼグロンへ向かって走り出し、エアリスもオレの動きに合わせるように走り始めた。そして、オレはゼグロンの右手側へ、エアリスは逆に左手側へ回り込み、ヤツの真横の位置から同時に襲いかかった。つまり、挟み撃ちだ。これなら、よけられないだろ!

 しかし、ゼグロンはその場で真横に両手を突き出して叫ぶ。


「ダブルトルネード!」


 その瞬間、左右の両手からそれぞれ天井まで届くほどの高さの竜巻が生まれ、オレは一瞬で飲み込まれてしまった。空中で激しく回転させられたあげく、最後は壁に背中を叩きつけられ、その反動で床へうつ伏せになって倒れ込んだ。


「ぐはっ!」


 そして、その数秒後に激しい金属音を立てて、名刀『鉄子』が部屋の隅へ転がり落ちた。しまった……唯一の武器が……。

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