第61話 潜入工作

 夕方、酒場が開くと同時にオレたちは中へ入り込んだ。そして、見渡しの良さそうな中央の席に座る。


「いらっしゃいませ! 3名様ですね!」


 すぐに店員らしいメイドが現れて、注文を取りに来た。

 オレたちは適当にジュースやおつまみを注文する。正直、メイド姿の店員がかわいかったのだが……今はそんな事を気にしている場合ではない。


「ユリカ、どうだ? 魔力は感じるか?」


 向かいの席に座ったユリカに尋ねる。店内には次々と他の客が入って来ていて、互いに顔を近づけないと声が聞こえないくらい騒がしくなっていた。


「う~ん……変な感じ……床の下から感じる……」


 ユリカがそう言って、床を指差した。そうか、この店に地下があるのか!

 オレは周囲を見回した。店の奥の方にドアが1つある。おそらく従業員だろう。一般の客は入れ無さそうだ。


「ユリカ。すまないが、もう一度だけ確認してみてくれ。その魔力は、お前が以前から感じていたベルファのものなのか?」


 オレは念には念を入れた。これからやる事を想定して。


「う~ん……ちょっと懐かしい感じがする……まるで、ベルファがそこにいるみたいな……」


 間違いない。オレは意を決して手持ちのリュックからこっそりと煙幕弾を取り出した。そして、ポケットから素早くライターを取り出すと導火線に点火して破裂するタイミングを見計らってドアの方へ投げつけた!


 ドカン!


 大きな炸裂音が店中に響き渡り、たちまち店内をモウモウとした煙が一気に包み込んだ。


「きゃあああ! この煙は何なの!?」

「火事だ! 逃げろ! ゴホゴホッ!」


 店内は、店員も客も大混乱になった。オレたち3人は、煙に構わずドア目がけて突っ走った。


 ダンッ!


 オレは、そのままドアに体当たりしてそれを吹っ飛ばした。ドアのあった所を抜けると、奥に細長い廊下が続いていた。オレは叫ぶ。


「地下へ行ける階段を探せ!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る