第29話 恐怖! 呪いの騎士

「ち、違う! この人はゴーディスさんじゃない!」


 ユリカが叫んだ。敵か! オレは素早く身構える。

 鎧の騎士は、その様子を見て笑い出した。


「フハハハハッ! たかが人間風情が、よくこんなところまで来れたものだ! ほめてやろう!」


と、持っている剣を振り上げた。


「お前も魔王軍の一味か! それなら容赦しねえ!」


 オレはダッシュして一気に敵との距離を詰め、顔に右ストレートを叩き込む! 吹っ飛ぶ鎧の騎士!


 ガラガラガランッ!


 激しい金属音が塔の中に響き渡る。倒したと思った。

 しかし……。

 鎧の騎士は何事もなかったかのように、むくりと起き上がった。


「きゃああああ!」


 再びユリカが叫んだ。無理もない。騎士がかぶっていた兜が外れたのだが、その中身は無く、がらんどうだったのだ。

 兜は騎士の足元に転がっていた。それを騎士が拾い上げる。


「我は鎧に魔力を定着されて動いておる! 我を倒すには、我の魔力が尽きるまで戦うか、バラバラにするしかないのだ。残念だったな! この呪いの騎士に、お前は勝てん!」


 兜を再び身に着け、高らかに勝利宣言する呪いの騎士。


「そうか。じゃあ、バラバラにしよう」

「えっ!?」


 オレは再びダッシュして、呪いの騎士の体を捉える。鎧の姿なので、しょせん動きは鈍重だ。その鎧を一気に抱え上げる。


「えっ? えっ?」


 戸惑いの声を上げる呪いの騎士。オレは、そのままテクテクと近くの窓まで持ち運んだ。


「ま、まさか!? いや~! やめて~!」


 情けない悲鳴を上げる呪いの騎士。


「そんなの関係ねえ! そんなの関係ねえ!」


 窓の下へ目がけて、思いっきりブン投げた!


「いやあああぁぁぁ~っ!」


 グシャッ! ガラーンガラガラ…………


 外で一際高い金属音が鳴り響いた後、その場がシーンと静まり返った。

 オレは外をのぞき込む……よし、バラバラになったぜ。

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