10月10日 たまごサンド
吹き込んだ風がガタガタと戸を揺らす音と、ひどい雨音で目が覚めた。
全くこの辺りは、ときどき馬鹿みたいに雨を降らせないと気が済まないらしい。子供の癇癪のように突然ざあっと降った後、しばらくすれば何食わぬ顔で止み、ボコボコに凹んだ道路に水たまりを残す。そんな日ばかりである。
ぼんやりした頭のまま洗面台に行き、その電気のスイッチをパチリ、と押したはずだった。しかしさっぱり明るくならない。パチリ、パチリ、とオンオフを繰り返すがやはり点かない。そのうちに、ああそういえば今日は工事の日だったと、ようやく思い出した。設備工事のために数時間ほど停電するという報せが、数日前ポストに入っていたのだった。
やれやれ、と面倒に思いつつ蛇口をひねった、はずだった。しかし水も出ない。ゴポポポポ、と水道は苦しげに呻くばかりである。断水まではしていないのだが、どうやら各戸に水を配るためのポンプが停電のために働いていないようだった。
これはなんとも想定外で、浴槽に水をはるようなこともしていない。困ったことになった。手も洗えなければトイレも行けない。そもそも停電なので冷蔵庫もなるべく開けたくない。
これが災害などで無く、通電する時間がわかっている工事で気付いたのがまだ良かったとは言えるが、なんとも難しい家である。日頃からペットボトルに水を貯めるべきだろうか、いや、その水を腐らせるのがオチだ。非常電源の類は備えてあるのだろうか。いやはや。
尚、コロナ禍で常備するようになった除菌シートやアルコールスプレーは、非常に役に立った。今後も使っていこう。
昼頃には電気も水道も復活し、いつも通りの生活を取り戻すことができた。陳腐な言葉だが、日頃どれだけこれらに頼っているかを思い知らされた日だった。
さて、復活したのならばと、昼食にはたまごサンドを作った。土曜に出雲で買った美味しい丸パンが残っていたのである。
たまごサンドには様々なスタイルがある。ゆで卵をマヨネーズで和えたたまごサラダを挟むもの、オムレツを挟むもの、目玉焼きを挟むもの。それぞれの美味しさがあるが、今回は食パンではなく丸パンということもあり、最もスタンダードであろう、たまごサラダを挟むスタイルにした。
とはいえ、自分一人のためにゆで卵を作りたくはない。剥いたり潰したりというあの作業、正直面倒である。というわけで、電子レンジを使う。耐熱容器に極少量の油を広げ、その上に卵を落とす。そのままではレンジで爆発してしまう為、フォークなどで黄身にぶすぶすと穴を空ける。これを加熱すること一分強。黄身がほどよく固まったら取り出し、フォークで卵をほぐす。塩胡椒を振り、マヨネーズを加えてしっかりと混ぜ合わせたら、たまごサラダの出来上がりである。
丸パンはトーストスチーマーと共にトースターで温める。ほかほかの丸パンの真ん中に切れ目を入れ、そこへバターとデジョンマスタードを薄く塗り、たまごサラダをたっぷりと挟む。そうしてできたてをすぐさま頬張る。
これぞ、たまごサンド。リベイクした丸パンはふかふかしっとりとして、とても二日経ったものとは思えない。そのパンの甘みの中にじゅわりと染みるからしバター、とろりとしたたまごサラダ。当然のように美味しい。このまろやかなコク、絶妙な塩気、ぴりりと黒胡椒やマスタード。シンプルなものが重なることで現れるサンドイッチの良さである。
我ながら美味しくできて満足である。
明日以後は晴れる予報にはなっているが、どうにか落ち着いた気候であってほしい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます