10月7日 オムレツにきのこクリームスープパスタかけ、フィナンシェ

 連休初日は重苦しい曇り空。

 夫の用事を済ませるついでに出雲へ行った。まだ行ったことのなかったパン屋でその場で食べるのと明日の朝食べるのを買った。カレーパンが大変美味しかったのだが、その他はそこそこ、という印象だった。明日も含めて判断したい。

 買い物も済ませて帰ってくると、天気のせいか二人して頭痛に苛まれ、横になっているうちに寝てしまった。なんともはや。


 夫はまた別の用事ででかけていき、夕飯はひとり飯。家にあるものを探ってみると、クノールの「ポルチーニ香るきのこのクリームスープパスタ」があった。お湯を注いで三分待つタイプのそれである。

 私はきのこ全般が好きだ。だからこの商品もまぁまぁ好きなのだが、正直なところ、味が少しぼんやりしていると思っている。そのままで食べるのもなぁ、と調べてみると、クノールが「ちょい足し」としてオムレツにかける、というものを提案していた。オムレツにスープパスタを?と思わないではないが、ちょうどタンパク質を足したいところだったし、卵も買ったばかりである。

 卵は贅沢に三つ。塩胡椒を振り、牛乳と合わせてよくかき混ぜた卵液を、バターを溶かしたフライパンに流し込む。バターを混ぜこむようにかき混ぜ続け、半熟になったところでゴムベラで折りたたむ。フライパンをトントンと叩く方法は、不器用な私には不可能である。ゴムベラでも危うい。しかし、なんとか枕状の形にはなった。これに例の、スープパスタをソースのようにかけ、仕上げに黒胡椒も少し。

 なんだか不思議な見た目だが、これがなかなか美味しい。スプーンを入れると理想的なふわとろ加減のオムレツ。これにきのこスープの旨味がよく合う。パスタだけで食べるよりもポルチーニの香りが立っている気がする。パスタに塩気がしっかりある為、そのままだとスープが負け気味なのかもしれない。オムレツを主体とすることで、パスタの塩気が卵の方に働き、きのこスープをちゃんとソースとして楽しめるようになった。卵は偉大である。決まった曜日に安くなる店があるおかげで、なんとか卵も買えているが、どうにか値段が落ち着いてほしいものである。


 さて、適当なひとり飯はこれくらいにして、今日本当に作りたかったのはフィナンシェである。

 日記には詳しく書かなかったが、先日のミールキットで卵の白身が二つ分余ることになり、「スープにでも使え(要約)」と書いてあったのだが、汁物にはまだ暑い日で、折角なので作りたくなったのである。

 私が如何にフィナンシェという菓子を愛しているか、ということは以前にも書いた通りである。(https://kakuyomu.jp/works/16817330654745085719/episodes/16817330654908680993)そしてフィナンシェは、焼き立てとそれ以降で全く違う味わいになる。そして焼き立ては、作った者の特権でもあるのだ。

 味の要となるのが、焦がしバターである。フランス語でブール・ノワゼットというように、ヘーゼルナッツのようなはしばみ色に焦がすのだ。鍋の中に溶かしたバターは徐々に泡立ち、香ばしく色づいていく。その香りと色の変化は何度やってもたまらないものがある。底を焦げ付かせないように泡立て器で混ぜ続けると、あっという間にきつね色に。火を弱めてもう少しだけ、ビターチョコレートくらいの濃い茶色になったら鍋底をを水に浸けて冷ます。これでバターがちょうど良い色合いに止まる。

 卵白に砂糖を混ぜ、小麦粉とアーモンドプードルを合わせてふるったのを加え、焦がしバターとしっかり混ぜ合わせる。バターは漉さずにそのまま。ねっとりとした生地を型に絞って焼けば、フィナンシェの出来上がりである。

 嗚呼、この香り!

 オーブンを開けた時、それが自分の労力が報われたのを感じる最初の瞬間である。ほんのりと甘く、こんがりと芳醇な。フィナンシェはすぐに型から外して、網の上で冷ます。粗熱が取れたのを早速いただく。

 表面はカリッと、中はしっとりとした食感のフィナンシェ。まだ仄かに温かい。焦がしバターとアーモンドが混じり合い、噛むほどにじゅわり、と濃厚な風味が押し寄せる。そしてなんとも言えぬ香ばしさ。これが、これが食べたかったのだ。

 我ながらなかなか美味しくできたと思う。一晩置けば今度はみっしりしっとりとしたフィナンシェになり、それはそれで美味しいのだ。


 さて、そろそろ夫が帰ってくるので、今日のうちに今のフィナンシェを食べてもらおう。

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