第25話
中のカメラは小さな箱だった。
ボタンの穴から撮影する物のようだ。
バッテリー式で無線対応のメモリーカードが刺さっている。
無線の接続先は我が家のWi-Fi。
カメラを分解する前に電源を切った。
そこから外にデータを送っているようである。
メモリーカードの中の俺がつかんだ瞬間より後は削除しておく。
紫苑がアクセスログを見る。
つうかこいつ詳しすぎないか?
「うーん、あやしいのピックアップすると200件くらいかなあ。エッチなサイトへのアクセスについてはあとでおばさんに通報するとして……」
「やめろ! 俺が死ぬ!!!」
『あら、賢太郎は逆バニーが好きなのね♪』とか言われて見ろ!
切腹するしかないぞ!!!
「それを除外すると数件。海外のサーバーを間に挟まれたら個人じゃ追跡難しいかなって思ったけど、逆引きしたら、地元のケーブルテレビ会社のIPでしたー!!!」
「えーっと?」
「要するに地元の人ってこと」
「加入者多くね?」
「だからカメラの音声切って、レンズにシール貼ったのよ。壊れたと思って新しいカメラを設置するか、それとも証拠隠滅しに来るか……使い捨て覚悟でなにもしないって可能性もあるけどね。でもこのカメラ1万5000円くらいするんだよね」
「回収する可能性があるってことか」
「うん、1万5000円を捨てられる人はログにIP残さないと思うんだよね~」
「で、具体的にどうするのよ?」
「マネちゃんにファイル含めて今送ったよ」
着信、「マネちゃん」。
速い。
「どもども」
「ストーカーが出たって本当ですか?」
「いや監視カメラが部屋から出ただけなんですけど」
「わかりました探偵事務所に連絡します! 今から行きますんで、自分たちで動かないでくださいよ!!! お願いですからね!!!」
「うむ、母親に言わないと。メッセージ送っとくか」
『部屋から監視カメラ見つかった』
母親にメッセージ送信完了。
するとすぐに外からバイクの音がした。
「やっぱりストーカーが現われたって!!!」
珍しくブチ切れた母親が全速力で帰ってきた。
「いやまだわかんない。家に帰ってきたらさ、見覚えのないぬいぐるみ見つけて……」
「よし殴ろう」
脳筋が叫ぶ。
「やめれー!!!」
30分後くらいにマネちゃんと探偵がやってくる。
探偵さんは20代後半くらいの女性だった。
まあそりゃ俺以外女性の事務所だから女性だわな。
探偵さんは一目俺を見ると奇声を上げた。
「ぎゃわいいいいいいいいいいいッ!!! え、嘘、男の子!?」
「男ッス」
「むしろ男の子だからこその色香が……どう、お姉さんとデートしない? なんでもおごっちゃう! あ、私は布施恵子。独身だよ♪」
ボキボキと紫苑が指を鳴らした。
「……彼女が怖いからやめておくわ。それでストーカーの件だけど、おそらく犯人はここを見てると思う。だからみんなで外食でもしてきて。その間、私は張ってるから」
「了解ッス。紫苑なに食べたい?」
「人数多いしお寿司かなあ」
と言うわけでお寿司。
探偵の布施さんと途中で別れてマネちゃんの車で寿司屋へ。
親父と布施さんのテイクアウトを注文。
俺たちは好きに注文する。
「光り物♪ 光り物♪」
「けんちゃん青魚好きだよね」
アジトかイワシとか最高だろ!
あと生しらすとか。
「そう言う紫苑だって穴子好きじゃん」
なお母親は漬物やまぐろの漬けを頼んでいた。
茶碗蒸しとアラ汁頼もうっと。
紫苑は容赦なくラーメンを注文。
マネちゃんは中トロとかサーモンとか普通のを注文していた。
「ポーテトポテトフライドポテト♪ ついでにチーズハンバーグ。けんちゃん頼む?」
「しんこ巻きを」
「相変らず顔と真逆で渋いっすね」
「好きなものは好きなのだよ……わかるな?」
「晶ちゃんのキャラシートに属性足しておきますね」
「また余計な属性が増えた!!!」
「あらあら」
と楽しく食事をし帰ってくると下手人がつかまっていた。
なんでも忍び込もうとして捕まったらしい。
「IP偽装したり、海外のサーバー中継したりしてないからすぐ捕まるかなあと思ってたけど……」
「……つうか……なにやってんの清水」
それはクラスメイトの清水小春だった。
いやびっくりだよ。心の底から。
「高橋恵のファン」
「お、おう」
「蘭童くんと恵ちゃんが似てることに気づいてた」
そりゃ親子だからな。
ただし高橋恵の正体は親父だが。
「最初は鉛筆とか消しゴム盗んで満足してた」
「お前か!!! お前が犯人だったか!!! もしかして虐められてる? とか思ってたぞ!!!」
「使用済みの体操服をくんかくんかして満足してた。恵ちゃんの子どもじゃないかって妄想するの楽しかった……夢小説もたくさん書いた」
ママン、紫苑助けて。
そう思って二人を見たら目をそらされた。
物理攻撃で解決できない事柄は苦手のようだ。
この脳筋どもめ!!!
「それであの日、屋形船の動画見たら……恵ちゃんの娘と蘭童くんとほくろの位置が同じ事に気づいた」
うん怖くなってきたぞ。
「耳の形も似てる。恵ちゃんの……恵ちゃんの……娘……は蘭童くん。本当は女の子。はぁはぁはぁ……私、私だけが気づいた。私だけの秘密!」
妄想と現実の限界が曖昧になってきたぞ。
これは危険だ。
だから俺は真実を言おう。
「なあ、清水。これから言うことは誰にも言わないって約束してくれ。もし言ったら警察に突き出すってのはどうだ」
「いいよ。なにを教えてくれるの」
「あそこの金髪が血の繋がった俺の母親」
「うん……? 恵ちゃんの子どもじゃ……ない?」
清水は小首を傾げた。
耐衝撃体勢取った方がいいぞ。
「あのな。高橋恵は俺の親父だ」
「え? 意味が……わからない……」
「高橋恵は40歳のおっさんなんだ……」
「あ、あの場所にいた恵ちゃんは!?」
「かつら被った親父だ。そもそも親父も地毛はこの色」
「め、恵ちゃんがおじさん……おじさん……おじ……嘘、嘘、嘘!」
ぐるんと清水が白目をむいた。
そのままバターンと倒れる。
俺は慌てて抱えて、リビングのカーペットの上に寝かせる。
「鬼か!!!」
マネちゃんと布施さんに同時にツッコまれた。
いやだって真実を話して仲間に引き入れた方がいいじゃん。
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