プロローグ後編 こんな理不尽な最後があるだろうか?
待て待てこういう場面ってよく漫画で見ることあるけど現実だとどうすればいいか全くわからん。
ととと取り敢えずまずは警察電話しないと。
いや、ここで電話したら俺の声があの男たちに聞こえてしまう。
だったら少し離れた場所で電話するべきか。
けど、もう女の人脱がされてるし、できるだけ早く助けてあげたい。
何か助ける方法はないのか?
焦燥して混乱する頭で俺は必死に解決策を模索する。
「もうあきらめろって」
「もう抵抗するのやめようぜ」
「早くやらせろよ!」
男たちが女の人の体を貪っていくのを見ていると俺は増々冷静ではいられなくなる。
くっ!しょうがない。
あいつらを掴まえ、断罪することは出来ないけどあの女の人を助けられるのであればもうこの手で行くしかない!
俺はスマホを操作して、ネットから音声データの配布をしているサイトを開く。
少し震えている指でそのサイトから俺はパトカーのサイレンの音を見つけ出す。
俺が咄嗟に思いついた作戦はまずパトカーの音で奴らを驚かせ、その後に俺がまるで警察が来たかのような声をあげる。
そうすればきっとあいつらは路地裏の奥へと逃げ出す…ことを信じたい。
なにせ咄嗟に考えた作戦だから成功する自信はない。
でも、指をくわえて警察を来るのを待つわけにはいかない!
ありったけの勇気を込めて俺はスマホの音声再生ボタンを押した。
”ピーポーピーポー”
「ちっ察か」
「くそ!誰か呼びやがったか!」
男達がパトカーの音に気付き、明らかに顰蹙した表情を見せる。
「君たち!何をしている!」
出来るだけの大声で俺は路地裏の男達へと言い放つ。
「おい逃げるぞ!」
すると俺の目論見通り、男たちは路地裏の奥へと逃げ出して行った。
ふへぇー何とかなった…
安堵で俺はその場で腰を落として、頭をうつむかせて深い息を吐く。
にしても現実でこういう事ってあるんだな。
今まで出くわせた事がなかったから二次元の中だけだと思っていた。
まあ何とかあの女の人を助けられたしほんとに良かった。
ふと俺は女の人の様子が気になり、路地裏のほうを確認する。
女の人は半分下着姿になっており、何が起こったか分からないのかその場で呆然としていた。
うわあ…エロい。
童貞の俺にはかなりきつい絵面だ。
いやいかんいかん。傷心している女性を邪な目線で見るのは犯罪者への第一歩だ。
でもあの女性、全く動かないけどやはりよほど怖かったのだろうか?
それともいるはずの警察が来なくて呆然としているのか。
うーん、心配だ。なんだかあのまま放置してしまったら今日寝れそうにない気がする。
…はあ。仕方がない。少し気になるし、ちょっと行ってみるか。
気乗りしているのかしてないのか分からないまま俺は立ち上がり、路地裏に入ってお姉さん方へと歩き出す。
「あの…大丈夫ですか?」
声を掛けると女の人はこちらへ振り返り、真顔のまま少し首を傾けた。
うわあ改めて見るとやっぱ凄い可愛い人だな。スタイルもいいし。
童貞の俺では目を合わせることさえ不可能に近い。
しかしこの人の髪色、近くで見るとハーレム漫画でしか見たことない程のピンク髪だな。
「…あなたは?」
「僕は…その…たまたまそこであなたが襲われていたのを目にして」
「ということはあなたが助けてくれたんですか?」
「えーっと…まあ一応」
「ありがとうございます!」
照れながら俺は首肯をするとお姉さんは表情を急変させて、嫣然としながら俺の右手を両手で包み込みながら感謝をした。
やばいやばいやばい。近い近い近い。
手あったかいし柔らかいしそれに俺の腕に胸が当たりそうなんですが。
神様…ありがとう!善行の褒美にこんなに良い体験をさせてくれて。
「いいいいえ。ひひひ人として当然のことをしたまでですから」
胸の鼓動が高鳴りすぎて、俺は完全に呂律がおかしくなってしまった。
「あの、是非ともお礼をさせてください」
「おおおお礼ですか?」
「はい。私のとっておきのお礼を受け取ってください」
とっておきのお礼?これはもしやエロ漫画のような展開なのでは!?
今から俺、このお姉さんに大人にされちゃうのか!?
やばいやばい体が熱い。体が異常事態に対応できず、謎に急速な発熱を行っている。
神様ありがとうございます!善行のご褒美にここまでしてくれるなんて。
母さんと父さん…俺、今から大人になります。
まだお礼がなにかも聞いていないのに俺は完全にエッチなお礼をされると決めつけていた。
「まあそういうつもりじゃなかったんですけど…くれるっていうなら貰います」
「本当ですか?ありがとうございます!」
いやいやありがとうはこちらのセリフですよ。
「じゃあ受け取ってくださいね」
照れて緊張して目線を合わせられず体を火照らせ俯いているとお姉さんの方から人生で一度も聞いたことの無い不穏な音が聞こえてくる。
ん?なんだこの音?
不思議に思いお姉さんの方を見ると俺は浮足立っていた自分の心を酷く後悔する。
俺の目に入ってきた酷く信じ難い光景にもはや焦るとか驚くとかではなく、完全に体が固まってしまった。
「私のとっておきのお礼を」
あざとい声音を出すお姉さんを取り巻いていたのは漫画やアニメでしか見たことのない黒く染まった異様な物体。
そしてその後ろには人間の手の何十倍の大きさもある黒い物体で作られた手。
その手の指には熊よりももっと鋭い爪が生えており、不思議なことに自分が今から何をされるのか俺は理解した。
「さようなら」
黒い手は人間の目で捉えられないような速度で俺の胸からお腹を切り裂き、俺の体から大量の血しぶきが放たれる。
えっ?何この人?というか人なのか?
何だよこの黒い物体。こんなの現実で見たことないぞ。
ていうかこんな理不尽なことあるかよ。
俺、人助けしたんだよ?救ったんだよ?
神様よ、善行の褒美がこれは流石に酷くないか?
切り裂かれた俺はその場で倒れ、やがて俺に痛烈な痛みが襲った。
痛い…痛すぎる。でも声が出ない。
こんなに痛いのに痛いって言えない。
ああ…なんか寒いな。さっきまであんなに体が熱くなっていたのに今は凄く寒い。
これが死ぬってやつなのか。もうどう考えても助からないよな俺。
「ちっ。こいつが余計なことをするせいで作戦失敗だわ」
薄れゆく意識の中、女の人のそんな言葉が聞こえてきた。
作戦失敗?作戦っていったいなんだ?
ていうかそんなことよりもヤバイ。本当に死ぬ。
ああ…走馬灯が…走馬灯が俺の脳によぎっていく。
さよなら…父さん母さん。親孝行できなくてごめん。
せめて…もっと…生きたかったな…
何が起きたか分からず困惑し、薄れゆく意識の中で後悔の念に苛まれながら俺はその場で絶命した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます