第10話 レジーヌからの提案
朝食中にレジーヌから提案を受けたイブリット。
その内容は――
「もし、イブリットの夢が叶って、ここが緑豊かな場所になったら……私はここの領民になりたい」
「えっ?」
思いもよらぬ提案に、イブリットは一瞬言葉に詰まる。
だが、すぐに笑顔で答えた。
「もちろん。私としてもレジーヌがここにいてくれたらとても嬉しいわ」
「なら……」
「むしろ私の方からお願いしたいくらいね。商人であるレジーヌが加わってくれたら心強いもの」
「任せて」
胸を叩いて言い切るレジーヌ。
もともとは魔女ミアン専属の商人としてこの地に足を運んでいたが、本来は国内でもトップクラスに栄えている商業都市で老舗とされる商会へ所属する商人。
本来はそちらでの業務がメインなのだが、イブリットが領主となってから足を運ぶ頻度は大幅にアップしていた。
「でも、本当にいいの? 魔法がきちんと扱えるようになるまでどれくらいかかるかまったく分からないのに」
「その点は心配していない」
「なぜ?」
「イブリットはしっかり努力している。やるべきことをやるべき時にきちんとやれている者は大成する――私を拾ってくれた恩人がいつも言っているの」
レジーヌの語る恩人。
以前、イブリットはその人物の話を聞いていた。
実はレジーヌには家族がいない。気がついた時には周りに誰もおらず、ひとりで孤独な日々を過ごしていた。そんな彼女を引き取り、商人としてのイロハを叩き込んで育てあげたのが、現在所属している商会のトップだった。
命を救ってくれたといって過言ではないその人物――レジーヌは恩人と呼び、実の親のように思っていた。
そんな大事な人物の言葉から、レジーヌはイブリットなら夢を叶えられるだろうと判断してそう提案したのだ。
「ふふふ、その話を聞かされたら、やるしかないわね」
もともと高かったイブリットのヤル気がさらに高まった。
窓の外に広がる荒れ果てた大地――ここが、習得途中のレトロ魔法によって多くの緑に囲まれた理想的な領地になる。
それが、イブリットの最終目標だった。
「でも、本当にそれが実現したら……イブリットお嬢様は一躍有名人になりますね」
「えっ? どうして?」
「どうしてって……それだけ凄いことですよ。これだけの荒野を自然豊かな場所に変えられたら」
それはそうか、と妙に納得してしまうイブリット。
しかし、勉強すればするほど、レトロ魔法の可能性は底が見えてこない。
「さて、レジーヌから嬉しい提案がされたわけだし、今日も一日頑張らないとね」
「応援していますよ、お嬢様!」
「一応私も」
相変わらず対応がドライではあるが、レジーヌからすれば商人としてではなく、友人として初めて接するイブリットにどう声を書けたらいいのか迷っている感じに映った。
ともかく、何もかもこれからだ。
具体的な目標を掲げ、あとはそれに向かって突っ走ればいい。
今日もまた、魔法の修業がはじまろうとしていた。
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