第7話 魔法修行開始!
「あっ、いたいた」
イブリットが屋敷の裏側に回ると、そこには木々に囲まれながらも少し開けた空間がある。その一帯だけ地面に草が生えておらず、土がむき出しとなっていた。これは、「地を踏みしめて使ってこそ、魔法に磨きをかけることができる」というミアンの持論に基づき、意図的に造られたものである。
そんな修行の場にて、ミアンは目を閉じて意識を集中している。
やがてカッと目は開かれ、直後――強烈な魔力が突風となってイブリットを襲う。
「わっ!?」
それは思わずのけぞってしまうほどの威力だった。
「おや? 来ていたのかい?」
ミアンがイブリットの存在に気づくと、風もパタリと止んだ。
「今日は遅かったじゃないか」
「すいません。タニアさんと一緒に中庭の草むしりをしていて」
「あぁ、あの中庭か……確かに、手入れが大変そうだ」
すでにミアンもイブリットやタニアが住んでいる屋敷を訪ねており、その有り様を見届けてきた。なので、遅刻した理由についても理解してくれたのだった。
「それでは交代するとしよう」
「いつもの通り、まずは魔力の錬成からですね」
「うむ。やってみてくれ」
「はい!」
今度はイブリットが目を閉じて、意識を集中させる。
現在、彼女は長い詠唱を覚えるべく奮闘中――なのだが、それと合わせて魔法が使えるレベルになるよう練り上げていく必要があった。
魔法使いであれば、これは基礎中の基礎。
誰もが幼い頃に終えておく、いわば常識的な作法だ。
しかし、騎士一族に生まれたイブリットにとって、これをマスターするのは思いのほか時間がかかっていた。最近になってようやくまともに扱えるようになってきたが、それでもまだまだ未熟と呼べる段階だ。
一方、詠唱の翻訳については順調だった。
イブリットにはどうしても使ってみたいレトロ魔法があり、それを自分のものとするために古代文字で書かれた魔導書を翻訳しながら読み進めていくのだが、これが思っていた以上に楽しくてハマってしまった。
もともと、勉強については強い関心があったため、こうなることは必然であったと言える。
――だが、ここへ来てようやく師匠のミアンからある提案をされる。
「だいぶよくなってきたな。どうだろう……ここらでひとつ、君がやってみたかったという地属性魔法を使ってみては」
「えっ?」
イブリットが使いたがっていたのは、地属性魔法だった。
理由はただひとつ――この荒れ果てた大地をよみがえらせ、たくさんの人が住める環境に改善すること。
そのためには、絶大な威力を誇る古代魔法の力を借りるのが一番だと結論付けた。
ここがよみがえれば人が増え、人が増えれば産業が育つ。
最初は小さな灯のような村でも、やがては王都にも負けないくらいの大都市にしたい。
それが、イブリットの野望であった。
「……分かりました」
その夢を叶える第一弾として、イブリットは生まれて初めて魔法を使う覚悟を決めたのだった。
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