第44話 44
44
俺の名前は
現在、名古屋のテレビ局に勤めている男だ。
今、受け持っているのは平日の10時から11時までの情報番組『昼前ブラリンコ』のディレクターを担当していて、企画が通り『特殊能力者集合』を制作した。
結果は俺もビックリの大反響だ。
ちょっとだけ深夜帯なのにも関わらず視聴率・ビデオリサーチの数値はもちろん、ネットでの人気も上々だ。
一時的ではあるが芸能ニュースサイトにも取り上げられていたくらいだ。
俺の想定は間違っていなかった。
テレビに出ていない奴らを使えば何かしらの演技をし、俺に突破口を開いてくれるのだ。
特に都市伝説ハンターミヤギのフリップボードには笑った。
女の胸のサイズを隠し文字として使うとは。
奴が本当の天才なのかもしれんな。
この番組は第2回の放送をどうするか今上層部で話合っている状態だ。
どちらにころんでも俺のポジションは揺るぐことがない。
次はどんな奴らがネット内に転がっているか今から探さないとな。
*
俺の名前はミヤギ。
都市伝説ハンターミヤギと言うチャンネルで動画配信で生計を立て、いずれ日本、いや世界最高の動画配信者になる者だ。
ここ数週間は激動の日だった。
最初は楽しい大阪旅行より帰ると家に大阪で会った女マインが居て当面一緒に住む事になり、テレビ局から特番の依頼が来て、マイン主導の逆ナンパ動画を作成して、俺がテレビに出ながら動画を紹介しつつマインの体も披露してやった。
その結果…今までの動画再生数がとんでもない事になっている。
桁だ桁が一つ上がった。
少なくとも10倍以上、多い物は30倍近く伸びているのだ。
俺はこれを見て決心する時が来た。
世界に俺の動画を見せつけよう。
その為には動画に英語の字幕や英語のアナウンスが必須だ。
しかし当然俺は英語の『え』の字も知らん。
だから使える者は誰でも使う。
「マイン!ちょっとこっち来い」
「なぁ~にぃ~♡」
マインがネコの様にじゃれついてくるが振りほどく。
「お前は英語が分かるか」
「私帰国子女さらにハーフでペラペラだよ~」
「よっしゃぁー来たー!俺のターンが来たー!これからずっと俺の…」
俺はトランクス一枚で拳を振り上げる。
何がなんだか分からないマインは何が始まるの?と期待満々の瞳で見ていた。
俺は咳払いをして告げる。
「マインお前に指令を与える」
俺が真面目な声で言うとマインは正座をしてキリっとする。
「俺の動画を世界に羽ばたかせる為に、日本語から英語への切り替えを命じる。編集は少しは手伝うぞ」
マインは敬礼のポーズをして叫ぶ。
「
そしてミヤギの人任せによる、世界進出が今決まったのだ。
ミヤギの野望は続く。
*
私はVチューバーヤミコ。
顔出しなしでコアラの被り物をして、テレビで私のダンスとチョットした歌声を披露した。
反響はいまいち良くわからないけど、テレビ後初のライブ。
私は緊張しながらヤミコを登場させる。
最初に見るのは来てくれた人の数…!!
ヤバイ!ヤバイヤバイ!桁がバグってる!
こっ声掛けなきゃっ。
「みんな来てくれてありがとう!ヤミコ今日も全開で行くね!」
そして白熱のライブが開催されたのだったが、新規と一部のファンはテレビ映像から切り抜いたリアルヤミコの画像を見ながらの視聴だった事はまだヤミコは知らない。
*
俺はテレビ放送後、安藤さんとホームページの来場数カウンターやネット内の噂を探っていた。
「どう?ホームページの来場数カウンターは」
「ん~少しは伸びてるけど、あんまり変わらないかな」
「じゃあ、ネット内の噂とか掲示板は?」
「検索掛けてるけど…たいした物はないわね」
俺は椅子にどっかりと座り天を仰いで呟いた。
「俺全然ダメじゃん」
すると安藤さんが俺の上から見下ろしながら言って来た。
「鈴木君はダメじゃないよ。今回の相手はお客を喜ばせる人達なんだから土俵が違うの。もし見ている人病気持ちなら鈴木君100%支持だよ。今回はテレビで多少顔を売れたと思えば十分じゃない?」
「たっ確かにそうだよな。俺ダメじゃない。よし、クヨクヨしていても仕方ないから例の不動産屋の物件今から見に行けるかな」
「ちょっと待って直ぐに電話して確認するから」
安藤さんは直ぐに携帯電話で確認をしてくれて、お昼過ぎから物件を見に行く事になった。
-
物件の最寄の駅で担当者(安藤さんのいとこ)と待ち合わせをして歩きながら物件を紹介してもらう事にした。
「今回紹介する物件はご指示のあった店舗と事務所が設置出来る物でしたので、1階が店舗で2階が事務所兼自宅にも出来る物件を紹介します。建物は1階2階がワンセットになった物が5つ連結で連なっている建物です。今回はその一番左の物件が対象となります。元は1階が個人服屋で2階を住居として使ってました。階段は内階段です。この物件の一番の売りは駐車場です。店の前に縦に3台駐車出来、敷地の周りにもとめる場所がありますので、ある程度ご希望の物件だと思います」
俺は病気を占うと言う事は歩けない人などが来る可能性が高いと見込んで、駐車場の確保は必須と考えた。
「さあ、着きましたここです」
俺は直ぐに腕時計を確認する。
駅から歩いて15分、ギリギリ妥協できる範囲だ。
正面の扉が二つあるのだ。
左が普通のドアで、右がスライドドアだ。
「すみません、ドアが二つあるんですけど?」
「あっ実はですね、前々のオーナーはラーメン屋を営んでいまして、次に入られた服屋の方が左のドアを新たに付けられたのです」
俺は二つのドアを見てピン!と来た。
通常は左のドアで、例えば車いすなら右のスライドドアが使えるのではと考えた。
俺の考えと安藤さんの考えは一致していて、安藤さんから直ぐに「このドア使える」と提案があったのだ。
俺達は勢いのまま一階を確認してそのまま二階を確認した。
前のオーナーが服屋だった事からとても綺麗になっていた。
もしラーメン屋だったら油の匂い取りからと思うとラッキーだと思った。
それから俺達は早速値段交渉し契約を締結した。
安藤さんの紹介プラス俺が学生と言う事で、大学卒業までは20%割引の金額で、その後正規の値段に戻す事になった。
安藤さんのおかげと俺達の初めての店を祝いして、その夜焼き肉へと二人して出かけたのだった。
-
数日後、俺は思考していた。
会社を作る上で一番大事のなのは金だ。資本金だ。
今の時代なしでも可能だが、俺としては信用を得る為にもある程度はいると思う。
なので金をたくさん得る手段を思いついた…ちょっとだけ人だよりの方法だが。
俺は早速安藤さんに俺の提案を聞いてもらう事にした。
聞いた安藤さんは口角を上げてこんな言葉を掛けて来た。
「お主も悪よのぉ~鈴木屋~」
安藤さんは時代劇の見過ぎだろうか俺はどう返事をしようか考え返事をした。
「ふふふ、安藤屋程じゃございませんよ」と。
そして二人で笑い合った。
大丈夫か、これ!?と思いつつ。
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