第38話 作戦会議
鈴木たちの部屋のドアをノックするとすぐに鍵が開いた。
「どーぞー」
もこもこルームウェアを着た鈴木が現れる。
くそっ、か……可愛い。
「今、可愛いって思ったでしょー?」
「悔しいが思った」
「やった」
小さくガッツポーズする姿も愛らしい。
こういうところがズルいんだよなぁ。
「神乃ちゃんもお揃いのパジャマなんだよー?」
じ、神乃さんも⁈
俺はそそくさと部屋に入る。
窓際のベッドに座り、テレビの前でドライヤー片手に髪を乾かす神乃さんがそこにいた。
「あまちんおっすー」
先程の鈴木とは比べ物にならないボリューム(敢えてどことは言わないが)で、風呂上がりということもあり、妙に色っぽい。
鈴木が持ってきたもこもこルームウェアの色違いで、青と白の鈴木に対して黄色と白の色合いだったが、チャックが胸元で上がり切らず、チラ見えしてるのがポイント高い。
「ナイスだ鈴木」
「何が?」
「鈴木さんお待たせ」
甘神も俺のすぐ後に部屋に来た。
「さてと、みんなにそれぞれのコス衣装渡しておくから明日は朝から会場入りして、準備しまーす。寒いから始まるまではコート羽織っててね」
神乃さんと甘神の2人が頷く。
「あと、天野くんは基本的にボクの隣にいて。ボク達の推しの人から写真お願いされたら基本断らないことっ」
「写真って、俺は一般人だぞ」
「妹ちゃんの本には毎回出てるんだしもう一般人じゃないよー。それに今回の新刊は天野くんが主人公で、神乃ちゃん改め神乃くんが、ボクから天野くんを寝と」
「あー! もう分かった鈴木! これ以上は言うんじゃない」
「……天野くん、なんで神乃さんが神乃くんになっているの?」
「そ、それは、だな……」
俺がB●本の、それもNT●の受けとか口が裂けても言えないが、今回ばかりは良い誤魔化し文句が浮かばない。
これは間違いなく詰んだ。妹よ、すまない。
「あ、あーしが頼んだんだよー。2次元の時くらいは男になってみたかったってゆーか」
「そ、そうなのね」
神乃さんのフォローもあり、その場はなんとか事なきを得た。
ある程度察しのいい人からさっきの会話で大体分かるが、叡智の甘神知神にだって分からないことはあるのだ。
「神乃ちゃんも甘神さんも色々と気をつけてね。芸能スカウトを装って近寄ってくる輩もいるから」
「あーしはまだしも、ちかみんはやばくね。学校でもあんな感じだし」
「私なら大丈夫よ。慣れているし」
甘神はそう言うが、2人は心配そうだった。
完璧超人の甘神の場合、もう慣れっ子で別に強がっているわけではなくそれなりの防衛能力はあるだろうが……心配にはなるな。
「そうだなぁー。人が少なくなったらボクはマネちゃんに居て貰えばなんとかなるし、写真集と同人誌を売り切ったら、あとはボク一人のファンサでいいから天野くんは2人の方についてもらおっかな」
「いいのか?」
「ボクは大丈夫っ。それに天野くんも妹ちゃんからお遣い頼まれてるんだから色々と見て回りたいんじゃない?」
「それは、そうだが……」
鈴木はこの2人の保護のついでに2人と一緒に腐向け本の買い物をしろと言うのか?
「私は構わないわ。天野くんの買い物に付き合ってあげる」
「あーしもいいよー」
なんか既に胃が痛くなってきたのだが。
「天野くんは剥がしをやりながらボク達のファンへのサービス、2人は天野くんとデートしたいならしっかり売ってねー」
鈴木、やっぱこいつ悪魔だ。
協力関係になりつつあった俺たちだが、この一言で今回のイベント参加は、こいつへ借りを返す意味を孕んでいたことを思い出させられる。
俺たちは最初から鈴木の掌で踊らされていた。
って事実があるのに、なんでこの2人は平然としていられるんだ。
「ちかみん、頑張ろうね」
「そうね」
むしろ謎にモチベーションが上がってるんだが。
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