第14話 テスト結果と苦悩
全教科のテスト返却が終わり、順位表も廊下に張り出された。
時代も時代だし、廊下へにプライベートを張り出すのはやめて欲しいと個人的に思うのだが。
廊下に出ると、やはり話題は甘神知神で持ちきりだった。
ぶっちぎりの連続1位、流石としか言いようがない。
まぁ、当人は1位を確信してずっと席に座りながら本を読んでいるのだが。
えーっと俺は、50位……。
少しは上がってるけど、やっぱ普通だな。
平均点は越えなかったが数学は前回より点数上がってたし、良しとするか。
教室に戻ると、神乃さんが甘神の机に寄りかかりながら楽しそうに話していた。(甘神は真顔)
「あ、あまちん50位って凄いじゃん! あーし87位だったー」
「甘神の前で50位を褒められてもな」
「50位おめでとう、天野くん」
嫌味にしか聞こえないんだよなぁ。
まぁ、嫌味のつもりで言っているんだろうが。
「しかし、このままでは天野くん理系化計画が失敗に終わりそうね」
「あまちん文系なん?」
「あぁ、数学嫌いだしな」
「うっそ、あーしも文系だから来年同じじゃんっ。よろー」
甘神の目が怒りモードに変わった。
神乃さん、発言には気をつけてくれ。こいつは
「あ、甘神は、その、理系で頑張ってな」
「天野くん、なんでこの流れで私だけハブるのかしら」
「だって、俺たちがいるからって甘神が進路変えるわけにはいかないだろ」
「あなたがこっちに来るという選択肢もあるのだけど」
「ちかみんはあまちんと一緒がいいんだもんねー。アツアツですなぁ」
「べ、別に私はあなたが思っているようなつまらない理由では無く、天野くんの将来を考えてアドバイスをしているの。文系に未来は無いわ」
過激派発言やめろ。全国の文系を敵に回したぞ今。
「お前は1位だから文句言えねぇけど、容赦ないな」
「まぁ? 天野くんがどうしてもというなら私が文系に」
「天野くーん」
鈴木が前の引き戸から教室に入ってきて、俺の席までくると、強引に俺が座っている椅子に座ろうとしてきた。
「座るとこ半分ちょーだい」
「はいはい」
俺が半ケツで座り直すと、鈴木が空いたところにちょこんと座った。
「鈴木、今回も最下位だったな」
「えへへー、目立つならそれでいいかなって。全部寝てたー」
「鈴木ちん連続最下位おめー」
「神乃ちゃんにイジられるのはちょっと」
「はぁ? 最下位に発言権ねーし」
「そうだぞ鈴木。黙ってろ」
「なんか最近、天野くんの当たりもキツいんだよねぇ。甘神さんは優しくしてくれる?」
「……」
「ねぇ天野くん、口もきいてもらえないんだけど」
「1位と最下位が話すことはないってことなんじゃないか?」
鈴木は「やればできる」と言いつつもやらない男なのでどうしようもないだろう。
「ボクは天野くんに養ってもらうから大丈夫だもーん。子供は4人がいいなぁ」
「お前はもうネットでかなり稼いでるんだから一人で頑張れ」
「あ、それなら天野くんをボクが養ってあげる。天野くん、ボクと結婚してヒモになってよ」
「あまちん、ヤバー」
「天野くん、それはダメよ。ネットインフルエンサーは必ず衰退の一途を辿るわ」
こいつ文系に続いてネットインフルエンサーにも喧嘩を売りやがった。
「天野くん、誠実に働くのが一番よ」
「ダメだよー、天野くんはボクが養ってあげるの」
どーでもいい言い争い。
「神乃ちゃんは? 仮に天野くんと結婚したら養いたい?」
「あ、あまちんと⁈」
「おい鈴木、変なこと聞くな。俺となんて神乃さんに失礼だろ」
「そ、そんなことないよあまちん! まぁ、現実味がないけど……。そーだなー、あーしは2人みたいに取り柄ないから……あまちんには養って欲しい、かな。共働きだとお互いに忙しすぎて2人の時間とかあんま取れないから。その代わり家事とか頑張るし、ふ、夫婦の営みも……ねっ」
俺は最近読んだギャル妻本を思い出す。
瞬間、俺の脳内に溢れ出した、元ギャルの癖が残りつつも新妻している神乃さんの存在しない記憶。
時々、学生時代の話をすると恥ずかしがるくせに、夜になると当時の制服を着てギャルメイクで——。
「やけに設定細かいねー神乃ちゃん、もしかして妄想したことある?」
「ね、ねーし! あまちん! ほんとちげーから、これはあくまで」
「……」
「天野くん、なんて顔してるのさ」
「あまちん、キモいよ」
2人が呆れた顔でこちらを見ている。
「すまん、気を失ってた」
「天野くん、放課後覚えてなさい」
俺はもう、ダメみたいだ。
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