第44話 塔の中

 二時間。夢の中の時間だから現実の時間でどのくらい経過しているのかはわからないけど、でもその二時間が果てしなく長い気がする。


 だって、こんなよくわからない世界で、しかも知らない人たちに囲まれて一人ぼっちなんだもの。


「はあ~」

 とりあえずベッドに横になる。


 よくわからないけど、これが夢ならそのうち目が覚めるだろう。

 それまで待つしかないのか。


「はあ~」

 今度はベッドから降りて部屋の中を歩き回ってみる。


 本当に、どこを見ても青い色。

 壁も天井も家具もみんな青一色。

 窓から外を覗いてみてもやっぱり一面青色。


 この砦の中にいる限りは安全だということだけど、不安だし怖いし。


 さっき塔の上から見た感じただの平原が広がっているだけみたいだし。


 テペ隊長が戻るまでの間、砦の中だけでも見て回ろうかな。


 そう決めて部屋を出て廊下に出る。

 廊下は薄暗く、所々にあるランプだけが灯りとなっていて、そのせいなのか、なんとも言えない不気味さが漂っている。


 壁に掛けられている絵や彫刻を見るに、ここはどこかの貴族の屋敷といった雰囲気だけど、もちろん現実の私はドラマかアニメでしか見たことはない。

 そんな塔の廊下に、ところどころ鎧が置かれている。

 これは強者の兵士が着ていたものなのだろうか。


 廊下の突き当りまで来ると、そこには大きな扉があり、開けてみるとそこは食堂だった。いくつもの長テーブルが置かれていて、そこに椅子が並べられている。


 部屋の中央には暖炉があって、その周りを囲むようにソファーが配置されている。


「あのお、どなたかいらっしゃいますか?」


「はい。何か御用でしょうか?」

 奥の方から声が聞こえてきた。

 そちらを見てみると、コックのような格好をした人がこちらに向かって歩いてくる。


「え、えーっとですね。私、ちょっとお腹が減っちゃって。もしよろしかったらご飯食べさせてもらえないかなあって思いまして」


「それは構いませんよ。ちょうど朝食の準備を始めたところでしたから」

「あ、ありがとうございます。ではお言葉に甘えて」

「はい。すぐに準備致しますので、あちらの席にお座りになってお待ちください」


 よかった、これでちょっとは暇つぶしができそうだ。

 言われた通り、私は近くの空いている席に座って待った。


 ふと壁にかかった古びた一枚の絵が目に入った。


 これってこの戦争を描いたものだろうか?


 絵の左下にこの塔らしきものが描かれテペ隊長と。


 え?

 なにこれ?


 私がいる。

 なんで?


 あ! そうか、これってアプリの中だもんね。

 そんな事があってもおかしくないのか。

 びっくりした。


 その時、扉が開き、テペ隊長が戻ってきた。

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