第13-2話 付き合う?
「ちょっ、跳ねてる跳ねてる! てかそんなに砂糖入れたら甘いでしょ⁉︎」
蔦原に指摘されて俺はコーヒーがあちこちに飛び散っていることに気付く。
「ご、ごめん! 蔦原が急に変なこと言うから……」
「変なことって、普通に付き合おって言っただけなんですけど?」
普通に、ってこいつ自分がとんでもないこと言ってるって自覚あんのか……?
とはいえ蔦原の雰囲気的にこの発言は本気ではなく、何か別の意味合いが含まれているのだろう。
「どこが普通なんだよそれの……。どうせあれだろ? 賀川たちを見返すために付き合ってるフリでもしようって言うんだろ?」
「おっ、鋭いね、紅」
「当たり前だ。陰キャ舐めんな」
伊達に陰キャをやってきていないので、少しだけイジワルそうな声の出し方で蔦原の発言に別の意味があると察することができた。
というかまあ仮に蔦原の演技が上手くて本当に付き合ってほしいと言っているような雰囲気があったとしても、それを本当だと信じることなんて絶対にないんだけど。
「まんざら嘘ってわけでもなかったんだけどなぁ」
「え? なんだって?」
「何でもないよっ」
「そっか。とりあえずは付き合ってるってフリまでしないといけない程ってわけじゃないんじゃないか? 親友くらいにしとこうぜ」
「大親友ね!」
「はいはい」
「それにしても面白かったなー。紅が焦ってるの」
キャッキャと笑う蔦原に殺意が芽生えそうになる。
まあ本当に殺意が芽生えることはないとはいえ、それくらい蔦原の笑い方は憎たらしかった。
「誰だって付き合ってなんて言われたら焦るだろ。てかどうする気だったんだよ。仮に俺が蔦原の演技を真に受けて付き合おうとか言い出したら」
蔦原は俺を揶揄う意味も含めてわざと俺が勘違いするような言い方をしてきていたが、俺がその発言を真に受けた場合のことは想定していないはず。
あー、真に受けたフリして付き合おうって言ってやればよかったな。
「うーん。そうだねぇ……。おっけー、て言ってたかもね!」
「--っ、おまっ、揶揄うのもいい加減にしとけよ⁉︎」
「さあ、揶揄ってるのか本心なのかはご想像にお任せしまーす」
相変わらず俺を揶揄いながら自分の好き勝手に喋りまくる蔦原に腹を立たせながらも、自由奔放に生きている蔦原という女の子のことを本当に魅力的に感じてしまっていた。
魅力しかない蔦原のことを嫌いになる男子なんてこの世に存在するのだろうか。
……あ、賀川がいたわうん。
「まあとにかく、復帰したら大親友で、いじめられたらやり返す、ってスタンスで、お互い支え合っていくってことでいいな」
「はーい。それで問題ありません! あ、あとこれ」
「……? 何だこれ」
蔦原から渡されたのは手のひらよりも小さい小袋。
その小袋を開けると、中にはお守りが入っていた。
「見ての通りお守りだよ。自作のね」
「自作?」
「うん。もしお互いが知らないところで酷いいじめにあっても、このお守りがあれば乗り切れるかなって」
「……そっか。確かにこれがあれば、乗り切れそうな気がする」
「でしょでしょ! ほら、最後に」
そう言って蔦原は右手を上に挙げ、ハイタッチを要求してきた。
俺はその要求に、力強く答えた。
こうしてついに、俺たちは来週から学校に復帰することになったのである。
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ここまで呼んでいただきありがとうございます!
次回より、再投稿無双編が始まります!
引き続きお楽しみいただければ幸いです。
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