第73話 だからこそNever Give Up!!


「頑張れ頑張れできるできる絶対できる頑張れもっとやれるって! やれる気持ちの問題だ頑張れ頑張れそこだ! そこで諦めるな絶対に頑張れ積極的にポジティブに頑張る頑張る! スピカだって頑張ってるんだから!」


「うるっっっさいですわよッ!!!」


 ぶちギレるクローディア。


 なんでそんな怒るんだよぉ……。

 俺は心からフレンを応援してただけなのに……。


 ただ応援に熱が入り過ぎて、周囲の気温をちょっと上げちゃったかもだけど……。


「え……俺はただフレンを応援しようと……」


「応援の仕方ってものがありますでしょう!? お陰でフレンが飛びづらくなってるじゃありませんの!」


 そう言って彼女が指差す方向には、岩の上でプルプルと震えるフレンの姿が。


「きゅわぁ……」


 どうやら高所から飛び降りるのがまだ怖いらしく、一向に動こうとしない。


 まるで初めてバンジージャンプを体験する高所恐怖症の人みたいだ。


「きゅーん」


「きゅわぁ……?」


「きゅきゅーん!」


 フレンの背後にはスピカも待機。


 いつ飛び降りても大丈夫なように、しっかりと彼の身体を保持している。


 スピカくらいの飛行力があれば、フレンを掴んだまま飛ぶくらいは難なくできるはず。


 実際岩の上までフレンを運んだの彼女だし。


 だからもしフレンが飛べずとも、彼女がスカイダイビングのインストラクターの役割を果たしてくれるだろう。


 後は、フレンの気持ち次第。


「きゅわぁ……」


「フレン……頑張りなさい! あなたならきっと飛べますわよ!」


「きゅわ……」


「大丈夫です! しっかり私たちが見ておりますから! ほらノエルさん、あなたも真面目に応援して!」


「諦めんなよ……! 諦めんなよ、お前!! どうしてそこでやめるんだ、そこで!! もう少し頑張ってみろよ! ダメダメダメ諦めたら! 周りのこと思えよ! 応援してる人たちのこと思ってみろって! あともうちょっとのところなんだから!」


「きゅ……わ……?」


「一番になるって言ったよな? 日本一なるっつったよな! ぬるま湯なんかつかってんじゃねぇよお前!! 今日からお前は! 富士山だ!!」


「やっぱりお黙りなさいッ!」


 彼女の怒りは遂に沸点に達し、物理的に俺の口を封じるべくチョークスリーパーを仕掛けてくる。


 オウ……ギブ……!


「どうしてあなたって人は時々おかしくなりますの……ッ!? というか”ニホン”とか”フジサン”ってなんですか……ッ!?」


「ぐうっ……ウドン……スシ……テンプーラ……っ!」


 そういえば、もう永らく和食って食べてないなぁ。


 異世界にいるんだから当たり前だけど。


 お醤油の味が恋しい。

 でもお米ライスは存在してるから、まだ幸せかも。


 やっぱり日本人なら、お米食べろ!!!


 ――俺たちがそんなアホみたいなやり取りをしていた、その時――


「……きゅわっ!」


「「え?」」



「きゅわぁ――ッ!」



 フレンは意を決したようにキリッとした顔になると――そのまま、岩の上からジャンプした。

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