第58話 話の途中だが○○○○○だ!
とある岩場の近くに、中くらいの卵がゴロンと転がっていた。
だが、そこにあったのはその卵一つだけではない。
既に割れて中身が漏出してしまった残骸――というには残酷だと思うが、無事に孵化できなかった卵が幾つもあった。
「なんですの……? この場所はいったい……」
「上を見てごらん。あの崖の隅に巣があって、あそこから卵が落下したんだ」
見上げると、かなり上の方にある崖にドラゴンの巣が複数あった。
あまり強くないドラゴン種は、ああいう地上から襲われにくい場所に鳥の巣に似た住処を作る特徴がある。
だから時々、どうしても卵やヒナが落ちちゃうんだよな。
そのほとんどは落ちた衝撃で割れたり亡くなったりするんだが――たまにこういう無事な個体も出てくるのである。
これを俺たち
基本的に、こういう”はぐれ卵”は見つけたら保護するか安全地帯まで運ぶよう
場合によっては売買の対象になったりもするからな。
――ちなみに巣には親らしきドラゴンが鎮座し、こちらを警戒している。
が、警戒以上はしてこようとしない。
俺たちの目の前に、自分たちの卵があるにもかかわらず。
「……あの親たちは、どうして卵を拾いに来ませんの?」
「弱いドラゴン種は、巣から落ちた卵やヒナには関知しない。……そういう習性なんだ」
「……」
「酷い親だと思うかい?」
「いえ、別に。落ちる方の運が悪かったと思うだけです」
そう言ってプイっと顔を背けるクローディア。
相変わらず捻くれてるんだから。
「でもこの卵は違う。運よく割れずに済んだし、キミに拾われることになるんだから」
「私が?」
「そうとも。この子はキミがこれから育てるんだ。ドラゴン
俺はそんなことを言いつつ、卵を抱きかかえてクローディアに手渡す。
卵の大きさはスピカの時よりもやや小ぶりで軽量。
ヒビも入っておらず、大きさに対して重さも適切。
きちんと温めてあげれば、問題なく孵化してくれると思う。
彼女は微妙にばっちい物を触るような感じで「うえぇ……」と抱え、
「はぁ……ところでこの卵、中身はなんてドラゴンなんですの?」
「名前は知っているはずだよ。ドラゴン育成で誰もが必ず通る道であり、通称”
――その名を言おうとした、矢先であった。
ピシッ
「「え……?」」
ピシピシッ
なんと――卵に亀裂が入り始める。
同時にガタガタと震え始め、卵に包まれていた命が元気よく暴れ出す。
「マジか!? このタイミングで……!?」
「どっ、どどっ……どっどど、どどうど、どどうど、どどうっ、どうしましょう!? 私どうしたらいいの!?」
「クローディア、お、落ち着いて! 風の又三郎みたくなってる!」
慌てる彼女を落ち着けようと慌てる俺。
まさか異世界で宮沢○治を聞くとは思わなかったよ。
もうてんやわんやだが、そうこうしている内に――その瞬間は訪れた。
ピシピシッ――パキン!
「……きゅわっ」
卵を破って現れた赤ちゃん。
それは、緑色の鱗をした――”ワイバーン”だった。
=====
ワイバーンです。
ワ○ャンではありません。
スーパーワギ○ンランド。
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