第33話 婚約者なんて呼びたくない
「っ! マシュー……!」
「おいおい呼び捨てかぁ? "婚約者様"と呼べよ」
現れたのは、金色の短髪をしたニヤケ顔の男。
左右に取り巻きを立たせており、片方がガリガリでノッポの男、もう片方がダルマ体型で背の低い男。
――あ、こいつらダンプリで見たことある。
マシュー・ヴェルドーネと、その腰巾着シュガー&ソルトだ。
マシューはロゼの"名目上の婚約者"で、侯爵貴族ヴェルドーネ家の嫡男。
ロゼの実家であるアリッサム家とは昔から繋がりのある、名門の出身だ。
そんな高貴な血が流れているマシューだが、その性格は傲慢で狡猾。
それと、虚栄心が異常に強い。
虎視眈々とアリッサム家の家督を狙い続けている、要は小悪党。
ロゼも彼のことを心底嫌っており、「死んでも婚約者なんて呼びたくない」と作中で言っていた。
「……なんの用かしら。あなたの顔なんて見たくないんだけど」
「そう邪険にするな。俺は将来の旦那様、しかもお前より先に生まれた年長者だぞ?」
「そうだ、年下の妃ならそれ相応の態度をとれ!」
「不遜であろうが!」
マシューに続いて息巻くシュガー&ソルト。
……うわぁ、ウッザ。
流石はロゼ√のヘイトキャラ。
これでもかと権威や立場を振りかざしてくるなぁ。
「きゅーん……!」
なんだこいつら!
と不快感を露わにするスピカ。
でもそんな怒った顔もかわいいよ。
……それにしても、ダンプリをクリアした身としては少し懐かしい気もする。
――大陸の政治を担う元老院、その一角を担うアリッサム家。
大貴族である彼らは、ドラゴンを眷属化し竜騎士として覚醒した者を代々当主としている。
だがアリッサム家唯一の子であるロゼは、学園に入学する年齢となっても眷属を作れなかった。
それを不安視した一族が、保険としてマシューを婿養子にしようとしたのである。
これはヴェルドーネ家の口車に乗ってしまった結果らしいが、彼らもドラゴンと縁のある血筋なのは事実。
アリッサム家としても苦渋の決断だったのかもしれない。
とても賛同はできないけど。
もっともロゼにとって幸いだったのが、ダンプリ開始時ではマシューもまだドラゴンを探している最中だったこと。
あくまで、
"先にドラゴンを眷属とした者に家督を譲る"
"結婚はその結果次第"
という取り決めになっていたのだ。
そのためマシューは、ロゼがドラゴンを手に入れられないように様々な妨害をしてくる。
内容も苛烈で、彼女を手助けしていた主人公が命の危機に瀕したことまであった。
が、最終的にロゼはドラゴンを眷属にして竜騎士に覚醒。
彼女が正当な次代アリッサム家当主となり、マシューとの婚約はご破談。
主人公とロゼが結ばれ、めでたしめでたし。
完全に権威を喪失したマシューは、ロゼにぶっ飛ばされてそのままフェードアウト――という小者っぷりを披露してくれた。
吹っ飛んでいったマシューがキラッ☆と星になったシーンは、本当に爽快だったなぁ。
それに
実に懐かしい。
ま――つまるところ、こいつは物語のやられ役。
婚約も無効になる運命。
そうとわかっていれば、別に腹が立つことも――
「まあいい、今日はお前に
「……!」
「ククク、お前も聞いてるはずだよなぁ。この俺が――ドラゴンを眷属化したことを!」
――――なんだって?
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