第22話 緊張感ないなった


「ワンワンワン! バッキャローコノヤロー!」


「コノヤローテメー! 舐めんじゃねーぞコラー!」


 ――その数、総勢10体。


 身長約1メートル前後、

 モフモフの茶毛に包まれた身体、

 二足歩行で移動し、手には肉球付きの指と爪、


 そんな小柄なコボルトたちが、目の前の道を塞いだ。


「パーパパパー! 俺たちゃ泣く子も黙るコボルト盗賊団~!」


「地元じゃ敵なし喧嘩は無敵~!」


「荷馬車狩りじゃー! 死にたくなけりゃ、おひねりちゃん出せやコラー!」



「「「…………」」」



 コボルト盗賊団にエンカウントした俺たちは、思わず言葉を失った。


 何故かって?

 そりゃイメージと乖離があったから。

 しかも相当な。


 盗賊団と聞けば、危険でデンジャーでデンジャラスな奴らが連想される。


 ヒャッハー!みたいな、

 40秒で支度しな!みたいな、

 それは紛れもなく奴さ~♪みたいな、


 いや、なんか色々ごっちゃになってるかもしれんが。


 で、目の前のコイツらはというと。


 ――かわいい。

 モフモフしている。

 しかも小さい。


 凶器を持っていても、怖さは皆無。

 なんならマスコットみたいで愛くるしいまである。


 しかも言ってることはアレかな?

 暴走族かな?

 しかも昭和の。

 

 なんかもう小物要素が渋滞を起こしていて、かわいさに拍車がかかってしまっている。


 ……ま、ウチのスピカの方がかわいいけどな!


「え、えっと……あなたたちが商人を襲っている盗賊団なのですか……?」


「そうだぞ女~! お前美人だな~!」


「メガネが似合ってるぞ~!」


「三つ編みがキューティクル~! ワオーン!」


「ま、まあ!」


 唐突に褒められて頬を赤らめるソリン。


 もう完全に緊張感ないなったわ。

 

「ソリン、俺たち敵同士だから……」


「は! そ、そうでした!」


 我に返った彼女は、コボルト盗賊団に向けてビシッ!と指を突きつける。


「あなたたちですね、この街道で荷馬車を襲っているのは! どうしてそんなことをするんですか!?」


「ワンワン! お前らにゃ関係ないねー!」


「さあ親分・・! 今日もやっちまってくだせえ!」


 コボルト盗賊団の一体が叫ぶ。


 すると――三つの首を持つ巨大な狼が姿を現した。

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