第12話 ダンジョンデビュー


 ――初級ダンジョン『スライム洞窟』。


 魔導学園に在籍する生徒のほとんどが最初に踏み入る、最も初歩的なダンジョンだ。


 言わばチュートリアルダンジョンだな。


 その名の通り、ここはスライムの巣穴。

 無数のスライムが内部を徘徊している。


 とはいえ、ここにリポップするスライムは大体レベル1。


 なんらかの攻撃方法さえ有していれば、まず負けることはない。


 ましてドラゴンとなれば、言わずもがな――である。


「さあスピカ、ここがダンジョンだよ」


「きゅーん……」


 ちょっと怖いかも……。

 と不安気な鳴き声を上げるスピカ。


 ムリもない。

 初めて”敵”が現れる場所に来たのだから。


「大丈夫、キミは敵モンスターなんかに負けない。俺を信じて」


「そうよスピカちゃん! なにかあったら私が守るわ!」


 何故か俺やスピカ以上に張り切っているロゼ。


 彼女は腰の剣に手を掛け、


「もしスピカちゃんを傷付ける奴がいたら、私が斬り捨ててあげる!」


「あの、ロゼ……?」


「それとも、先にダンジョンのモンスターを全滅させておこうかしら!? それがいいわね!」


「それじゃスピカを連れてきた意味がないんだけど……」


 親バカかな?

 いや、親は俺だけど。


 俺たちがそんな話をしていると、


「ぷるぷる」


 目の前にぷるんとした青い生命体が出現。

 スライムだ。


「! きゅーん!」


「落ち着いてスピカ。トレーニングを思い出すんだ」


「きゅ、きゅーんっ!」


 やってみる!

 とスピカは意気込む。


「ぐるるる……!」


 スピカの口内でメラメラと燃える火炎。

 そして――


「ぎゅうぅーんッ!」


 食らえ!

 と彼女から〔ファイヤ・ブレス〕が放たれる。


 ピゴーッ!という発射音と共に、ビームはスライムに直撃。


 ぷるんとした生命体は、跡形もなく消滅した。


ピコン!



〔〔スライムを撃破!〕〕


〔〔経験値を取得〕〕


〔〔レベルUP!〕〕


〔〔各ステータスが上昇〕〕



 アイコンが表示。

 スライムを倒したことでレベルUPしたようだ。


「きゅん! きゅん!」


「ああ、よくやったぞスピカ! 初撃破おめでとう!」


「凄いじゃない! かわいいしカッコよかったわ!」


 スピカの初陣を褒めまくる俺たち。

 彼女も自信がついたみたいで一安心。


 よし、もう少しダンジョンを奥まで進んでもよさそうだな。

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