第14話 刹那の風景5:メイキング対談:家族愛1

――今回のメイキング対談は、『アメジストセージ 家族愛』について話していこうと思います。おそらく、4部構成になるかと思いますので、気楽に読み続けていただけたらと思います。


――今回も今までと同様、読者層は、『刹那の風景 5巻』を読んだ方で、『小説家になろう』の『刹那の風景』シリーズを読んでいる方を想定します。書籍版に興味がない方や、『刹那の風景 5巻』のネタバレを気にする方はブラウザーの戻るボタンを押すことを推奨します。


――また、書籍化された『刹那の風景』しか読んでおらず、5巻以降の展開の話を望んでいない方もいると思いますが、その方々のために、先の物語の展開にかかわる個所は伏字にしておきます。


――なお、本の後書きから読むネタバレ派や、書籍を買うか迷っていてきっかけを探している方、書籍は買わないけどどういう観点でWeb版から書籍版を作っているのか気になる方が、この読み物だけを読むことに関しては、全然問題ありませんので、楽しんでいってください。


――以下、緑青を「緑」、薄浅黄を「薄」でお送りします。


――<アメジストセージ 家族愛:プロット>

薄 : 『アメジストセージ 家族愛』の章のプロットについて言っていくと、まずセツナが、王城の謁見の間に呼び出される前後の加筆修正。


緑 : そうだね。

薄 : 次に、呼び出された後のセツナや国王側の人物達の対応の加筆修正。

緑 : そうだね。

薄 : 国王側の人物達と国王の関係性についての加筆修正。

緑 : そうだね。

薄 : 建国祭についての書き下ろし。

緑 : そうだね。

薄 : そして、家族愛についてという大命題についての、見直しと加筆修正と書下ろしだね。

緑 : そうだね。

薄 : どうしたの、緑青。さっきから「そうだね」しか言ってないよ?

緑 : ここ、加筆修正とか書下ろしとかの言葉じゃないよ。再作成だよ、再作成!

薄 : ご苦労様でした。それでは、プロットについてはあっさり流して、詳細みていこう。

緑 : 許さん。


――緑青が怒っているのはさておき、アメジストセージは上記のようなプロットの状態から、もはや別物を作るしかないと決断しました。『トルコキキョウ 良き語らい』は半分以上書下ろしということを考えると、アメジストセージのプロットの段階で、5巻は全体的に再作成というかじ取りになりました。



――<アメジストセージ 家族愛:◇1セツナ 84頁>

薄 : Web版でいう『僕と王妃と建国祭』に当たる話です。Web版のアメジストセイジは、王妃に謁見の間へ呼び出されるところから始まるのですが。


緑 : 王妃様にね。

薄 : そう。でも、なんていうか、アルトの目の前で突然いなくなるとか、そうならないような手はずを、セツナがとっていたっていうことを、加筆してもらいました。


緑 : うん。Web版は唐突感を出したかったので、その部分の描写は後にラギとアルトの話で察してもらう感じにしたんだけど、書籍版はセツナの心情なんかを深掘りしてきたので、ここでアルトに対しての配慮を書かないのは、違うかなと思うよね。


薄 : それですぐに、謁見の間での話に移るのだけど。Web版では、演劇みたいなことを始めます。後に、王妃の要望だったと明かされますが。


薄 : 今回は、その部分はなくしました。Web版では、建国祭ということで祭りの感じを演出したかったのがあるんですが、書籍では、王妃の心情を深く書いてきたので、もう少しシリアスにいきたいなと思ってですね。


緑 : 結構、真面目な感じになったね。まぁ、ここだけでなく、アメジストセージの話自体が変わったよね。なんか、こうテーマが重くなったっていうか。


薄 : まあ、そうだね。王妃や国王の気持ちと行動、そういったところを、まあ、いろいろ二人で考えていたんだけど、そこらへんを含めて、全部、見せ方を変えたね。最終的には。


緑 : そうね。

薄 : 二転、三転ぐらいじゃないかな。アメジストセージって、どう再構築したらいいのかなって。

緑 : ここが一番、時間かかったね。

薄 : 最終的に、すっごい細かくこの話の流れを作ったんだよね。プロットの段階で。

緑 : 何パターンにわけて、人の動きとか考えてたよね。後どの段階で大将軍達の心境の変化を入れるかとか。


薄 : そうそう。この場面でいえば、国王の魔導具のこともあって、予定よりも早く呼び出される状況ってどんなだろうとか。会議は謁見の間ではやらないだろうから、会議室から出てくる形だかなとか。


緑 : Web版では、謁見の間にいる理由や魔道具のことは、疾走感をだすために触れなかったんだよね。で、どうしてそういう状況になってたかは、自分の中にあったんだけど、文章にしてないから矛盾もちょっとあって、改めて考え直そうってなったよね。


薄 : 苦労しました。で、物語を追っていくと、このあと、問題が起きないように、セツナが状況を説明していきます。


緑 : それで、ここで大将軍達と王妃や国王との関係性の話がでてくる。

薄 : Web版では、リペイド国の家臣の指示系統というか上下関係が、分りづらかったのもあって、そこをまず整理しました。例えば、大将軍がサイラス達に宴会をしようという場面があるけど、これは会話文で命令形で話しているのだけど、上司としての命令なのか、仲間意識からくる口調なのか、判断かないよなと思って。で、答えとしては後者で年長者でもあるし、こんな感じの話し方なんですよと。


緑 : サイラスやジョルジュの手はユージンで、フレッドの主はキースだからね。

薄 : 今回、5巻を読んでもらえれば、組織的な感じはこれで補完できたかなと思います。それともう一つ『特権』については、正直に言うと書籍版で新たに追加した概念です。Web版では、大将軍達がユージンとは判断を異にして独自に行動するように書かれていますが、その行動が許されるのが「国王の学友で、先代との闘いで共に戦った」からだけだと、組織としてはまずいのではないかと。


緑 : 僕としては、問題ないと思うけどね。

薄 : まぁ、歴史上でも功績があったことで、上官の命令を無視できるほどの権威を持った例なんていくらでもあるからね。でも、なんていうか、ライナスは賢君なので、そういう状況だと国が乱れる原因になる可能性があるということも知っているだろうから、一応、制度として手を打つのではないかなと思ったんだよね。


緑 : そうだね。まぁ、新たに制度を作ったというのは反対ではないけどね。僕は、Web版の人間関係だけでという方が好きだけど。


薄 : あとは、この特権という制度を作ったことで、逆にサイラスたちには認められてないよっていうのが明確化できて、後の方の、サイラス達の葛藤につなげられたよね、私の中では思っています。


薄 : さて、そんなこんなで、自分に降りかかる火の粉を払い終わると、セツナはやることがなくなってしまいます、


緑 : 王妃の依頼が結局、自分と国王の話す時間を作ってほしいだからね。

薄 : 補足すると、国王とユージン用に薬を頼まれていたけど、それも、もう渡しているしね。で、そうなったときに、ユージンに帰れっていわれる流れになるんだけど、その時点で、セツナをこの場に留まらせる動機づけをどうするかで、なやんだよね。Web版では売り言葉に買い言葉みたいな感じで、戦闘場面にシフトしていくんだけど、ラギとの相談場面を経た後に、Web版と同じ流れにするのは、ラギの場面の意味がなくなるよねと。


緑 : まぁ、書籍ではセツナの心情の深掘りをしてきたから、この時点で、Web版のセツナの心情と差がでてくるのは避けられないよね。


薄 : それを踏まえてからの、セツナの仕事は終わったんだから帰ってくれってなったら、もう何もできない。セツナもそうだけど、私達も(笑)もう、依頼でここにいるんでしょ、依頼終わったでしょって言われたら。


緑 : 帰るしかないよね。

薄 : そう。だって、よそ者だもの。

緑 : 「お前関係ないから、もう帰れよ」みたいな。

薄 : っていうところで、どう考えてももう。

緑 : 相手の方が、正論みたいな。

薄 : まあ、そうなんだよね。

薄 : でも、刹那の風景はWeb版があって、その場面を再現しなきゃいけないっていうところもあるから、じゃあ、そうですねってこの話を終わらせればいいよねというわけにもいかない。じゃあどうしたら、この場に干渉し続けられるのか考えないととなって。王妃の気持ちに立って依頼を行う動機づけから、もう一段踏み込んで、依頼を超えた後の動機づけっていうのが必要になってしまった。


薄 : それで、緑青に投げた結果、帰ってきたのがこの場面で、あーよかったなー、丸投げしてよかったなと思いました。まさか、刹那の家族の話を出してきて、それを動機にしてしまうというのは考えてもいませんでした。


緑 : ここはね、丸投げされた時に、もう3つセリフが決まってたんだよね。家族愛っていうところだったから。セツナのお父さんが言うセリフと、セツナのお母さんが言うセリフと、であと妹である鏡花が言うセリフ。どういう状況で、このセリフを言わせるかっていうのも決まってたから。


薄 : 全くもって、こう上がってきた時には意外でした。家族の話と絡めてここをやるっていうところが、よかったんじゃないかなと思うよね。


緑 : まあ結果としてだからね。家族愛だからよかったなと思います。ここで家族愛っていうテーマがちゃんと組み立てられてなかったら、この話は出てなかった。書籍版にするにあたって、家族愛とは何かっていうことを見直したからできたエピソードだよね。


薄 : そんな感じで、このセツナの家族と王妃の家族とを突き詰めた結果、自分の家族のことを申し訳ないと思って、同じようにならないようにという、まあ、完全に私情だって割り切ったっていう展開になります。


薄 : まあ、そうだよね。もう、依頼でもなんでもなくて、何でお前ここにいるんだよって言ったら、私情だと、それしか答えがない。でもまあ人間だから、私情で物を動かすのもいいんじゃないかと。1から100まで物語の展開を、登場人物の私情で動かしたら、それはなんか違うと思うけど、こういった時に、自分の私情を挟んだ動機でもいいんじゃないかなって、この話ができてきたときに、納得したんだよね。


緑 : 人間くささはあるよね。


――刹那の家族の話が、ここででてくるとは考えてなかったので、私は意表を突かれたのもあって、セツナの気持ちが分った気がしたんですが、読者の皆様はどうでしたか?

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