第19話 合流

和真たちとはぐれてしまって、どうしようと悩んでも仕方が無いので伊吹さんと2人で桜が見える近くのベンチに座る。

伊吹さんも和真と菜々美の連絡先を持ってなく話し合った結果動かない事にした。


「さっきはありがとうね」


伊吹さんは改まって感謝を伝えてくれる。


「いきなり手握って嫌じゃなかったか?」


「最初はびっくりしただけで、嫌じゃなかったよ」


「…ならよかった」


そんな会話をしているタイミングで、桜がライトアップされた。

伊吹さんと手を繋いで歩いている時くらいから、空が暗くなっていたが、このタイミングのライトアップで桜がより綺麗に見える。

奥の方から1秒おきくらいにライトが点灯していき、俺たちの近くのライトが付く。

すると伊吹さんがいる所に偶然ライトが届き、伊吹さんが神秘的にライトアップされた。

そんな伊吹さんを横から見ていてつい見とれてしまう。


「眩しい」


だがすぐに伊吹さんは眩しくて横を向く。

伊吹さんが振り向いたところにちょうど俺がいて目が合う。


「綺麗でしょう」

 

いきなり伊吹さんが自信満々な事を言ったことに驚いて言葉が出ない。

そんなキャラだった?


「…何か言ってよ。恥ずかしくなるじゃん」


俺が何も反応しないと少し顔を紅くしながら地面を軽く蹴る。


「……綺麗だよ」


「遅いって……って!そんな簡単に同意されると恥ずかしい」


「じゃあなんて言えばいいんだよ」


「…自分で考えて」


「そんな理不尽な」


今まで感じたことない良い雰囲気で、少し恥ずかしい事も何故か言えてしまい顔が熱くなる。


「池田くん?」


「ん?どうした?」

 

「最近少し私の事避けてたでしょ」


「え?いや、そんなこと……」


「あるでしょ」


「いや、だって伊吹さんがあの時距離感バグってたから」


「だからって露骨に避けられると悲しかったな」


そんなストレートで悲しかった表情をされると少しイジりたくなってしまう。


「じゃあ、このくらい近づいた方がいい?」


そう言って伊吹さんに近づこうとすると「え?」と小さく驚いた声を出す。


「冗談」


すぐに元の距離感に戻すと伊吹さんがポカーンとした顔をしている。


「…ばかじゃないの」


そう小さく呟いて肩を叩いてくる。

痛い痛い。


「何イチャついてるんだよ」


伊吹さんに肩を叩かれていると後ろから声を掛けられた。


「イチャついてねえよ」


「イチャついてないです」


「あはは。2人とも面白い冗談言うね」


「周りからも絶対!イチャついてるって思われてるよ!」


「そんなに?」


俺は少し自信を無くす。


「中々だったぞ」


和真がそう答えると伊吹さんが首を大きく振って否定する。


「そんなことないです」


伊吹さんがここまで大きな仕草をするのは珍しく、和真も「俺の勘違いだったかもしれない」と言ってる事が変わる。

首を振ってる伊吹さんを見て菜々美は「可愛いーー!」と伊吹さんに抱きつく。


「で?本当にイチャついてなかったて事でおけ?」


だが俺の声は誰にも聞こえていないようでモヤモヤした気持ちで祭りを回る事になった。




「腹減ったー」


少し歩いて屋台が並ぶ道に出ると食欲を誘ういい匂いがする。


「分かる。俺も腹減った。何か食おうぜ」


俺も和真の言葉に共感すると屋台に食べ物を買いに行く事になった。


「和真何食べるの?」

 

「うーん焼きそばは、食べたいかな」

 

「え!焼きそば私も食べたかった!私たちやっぱり通じ合ってる!」


菜々美が嬉しいそうに和真と話していると、和真も菜々美の頭を撫でて完璧に2人の世界に入り込んでしまったので、俺は伊吹さんに話しかける。

  

「何食べる?」


「ちょっと回って見てみたいかな」


「おっけー。少し見て回るか」



またはぐれたら問題なので俺と伊吹さんは、和真と菜々美が2人の世界から出てくるまで待つ。


「あれが本当にイチャついてるってことだよな」


「うん。本当にそう思う」


冷ややかな視線を俺と伊吹さんで送っていると、2人とも気づいて謝って来た。




4人とも食べ物を買って何とか桜が見えるベンチを見つける。

和真が焼きそばと唐揚げを買って菜々美が焼きそばとたこ焼きを買っていた。

たこ焼きは和真と分けて食べるらしい。

俺は唐揚げと卵せんべい。

伊吹さんもたこ焼きと俺のゴリ押しで卵せんべいを買っていた。


「何で祭りで食べる焼きそばってこんなに美味いんだろ」


和真が焼きそばを食べながら言う。

確かに祭りで食べる焼きそばは美味い。

何か俺も食べたくなってきた。


「池田くんに無理やり買わされたけど、たまごせんべい?って本当に美味しいんだよね?」


伊吹さんが卵せんべいに何故か疑問を持っている。


「マジで美味いから信じて欲しい」


俺がそう言うと渋々伊吹さんは卵せんべいを口に運ぶ。

すると「美味しい」と言って半分まで一気に食べる。


「だろ。マジで美味いんだって」


「偶には池田くんを信じてみてみるものね」


「え?伊吹さん?」


「冗談だよ」


さっきのやり返しですよーみたいに舌を出して俺を煽る。


「お前ら仲良いな」


「ねぇー。伊吹さんもっと学校だと真面目なイメージだったのに」


「いや。伊吹さんは俺を煽っていい人みたいに思ってるだけな気が」


「ふふっ。そんなことないけどなー」


「それ思ってるだろ」




俺は唐揚げと卵せんべいを食べ終えたがまだお腹減っていた。


「まだ足りないから焼きそば買ってくるわ」


俺がそう言って席を立つと菜々美が「じゃあこれ捨てて来て」とパシリ使われた。


菜々美から貰ったゴミを捨てに行くと多く人が並んでいた。

菜々美の奴。俺は早く焼きそば食べたいのに。

そう心の中で文句を思いながら並ぶ。

しかしゴミを捨てるだけなのですぐに順番が回って来た。



「ねぇーお兄さん?かっこいいね。ちょっと私たちと一緒に回らない?」


もっと待つと思ってたけど、焼きそばすぐに食べれそうだ。

よかった。


「ねぇー聞こえてます?」


俺が焼きそばの事を考えていると肩をポンっと叩かれた。

ん?

振り向くとさっきまで誰かに声を掛けていたはずの女の人が居た。


「俺ですか?」


「そうだよ。聞こえてなかったの?」


3人の女子大生?くらいの人が笑いながら言ってくる。


「お兄さん私たちと一緒に祭り回らない?」


んん??何?一緒に回る?

これって逆ナン?

いや待て。何でこんな綺麗な人が俺みたいな奴に?


「ダメですかー?」


「えっとお金あんまりないですよ」


何て言って良いのか分からず変な返しをしてしまう。


「大丈夫ですよ。奢ってあげても」


「え?いやそういうことじゃ」


「じゃあとりあえず一緒に回ろ!」


そう言って1人の女の人が俺の腕に抱きついてくる。

俺は今目の前で何が起きているのか分からず頭がフリーズしてしまう。

何か腕に柔らかい感触がする。


そんな頭がフリーズしている状況で、何処を見ていいか分からなくなっていると、トイレを待って並んでいる伊吹さんと目が合った















 



 






 



































 


 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る