第2話 出会い

何だかんだ1人暮らしを始めて1年弱が経ち、1年生も残り少しになっていた。

学校生活は可もなく不可もなくって感じで、まあまあ楽しくやっている。


「おはよう彩斗」


「おう、おはよう」


教室に入ると、すぐに声をかけてきたのが、俺の一番信頼している友人の神内和真だ。

和真は顔もイケメンで運動神経も抜群。

野球部では1年からスタメンで試合に出てるらしい。

そして勉強も出来る。

和真の努力は本当に凄いから運動が出来る、勉強は良いとして、顔まで良いスタイルまで良いとかもう何んも言えねえわ。



和真とは中学の頃からの付き合いで、最初の出会いは俺が親との関係を悩んでいた時に、声をかけてくれたのが和真だ。

最初はクラスで孤立してる俺にもしっかり声掛けて優しくしてるんだぜ、と好感度を稼いでる奴にしか感じ無かった。


でも毎日和真は俺に声を掛けて来てくれて、そして俺が初めて心を許せる友人になった。

俺は親との関係など全てを話した。

和真はしっかりと受け止めてくれて、俺を励ましてくれた。

それからは少し時間はかかったが、クラスでも明るく振る舞える様になって行った。

そして俺は和真と同じ高校に行くと決めた。

正直勉強は大変だったが、和真が教えてくれたこともあり、俺は県内でも有数有数の進学校に入ることが出来た。


だが俺のそんな回想を邪魔するように、いきなり廊下から凄い勢いで入ってきた奴が来た。


「おっはよう!和真!」


「おう、おはよう菜々美」


こいつは菜々美、和真の彼女で出るとこ出て引き締まった女の子の理想と言った体型である。

そして髪型は長い黒髪をポニーテールにして凄く似合ってる。

絶対本人の前では言えないけど。

そしてこの2人は学校内でも凄く有名な美男美女カップルで有名だ。

それの友人ポジの俺は悪目立ちする。

もう慣れたけど。


「この様子だとまた彩斗に和真の初めてを取られた」


しょんぼりしたような顔で変な事を言ってくる菜々美。

ちなみにこの初めては、和真に朝一番最初に挨拶することらしい。


「菜々美、毎回その初めてだとか誤解を招く言い回しやめろ。変な意味だと思われるだろ」


俺がそう言うと菜々美と和真は何故かニヤと笑って、悪い顔をした。


「え?変な意味?私分からない〜和真分かる?」


「う〜ん俺も分からんな?変な意味ってどういう事だ?」


「変な意味?あ!分かった彩斗エッチな意味だと思ったんでしょ!もしかして彩斗ってむっつりさん?」


「そうか。彩斗むっつりなのか。それは知らなかった」


「・・・変な事ばっかり言ってるんじゃねえぞ!バカップル!」


「わ!彩斗が怒った!じゃあ私教室戻るね」


そう言って颯爽と教室を出ていった。

マジで嵐みたいな奴だな。

菜々美が教室を出ると、同時に担任の近藤先生が教室に来て自分の席に慌てて戻った。

俺は菜々美のせいでむっつりという在らぬ疑いをかけられたので、和真には目線でジュース1本と送っといた。



今日は朝からバカップルの相手をして疲れていたのですぐに帰った。

というのは嘘で、皆んな部活などで忙しく、俺自身に特にやる事も無かったのですぐに帰った。

そしていつも通りマンションの前に着くと、引越しの業者の車が止まっていた。

誰か引っ越して来たのか。

まぁ、めんどくさい人じゃなければいいや、と思いながら部屋に向かって行く。

自分の階に着き、部屋に向かおうとすると、俺の隣の部屋に引越し業者のスタッフらしき人がいた。

げぇ!隣かよ。挨拶とかした方がいいのかな?こんなの初めてだからなんも分からん。

そんな事を考えながら、俺が部屋の前で鍵を取り出していると、引っ越して来たと思われる人が話かけてきた。


「あら、お隣さんですか?」


「あ、はいそうです」


いきなり話し掛けられてしまった。


「今日引っ越して来ました。伊吹と言います。よろしくね」


「池田と言います。こちらこそよろしくお願いします 」


凄く大人の雰囲気をまとった、綺麗なお姉さんタイプの人だった。

いい人そうだな。大学生かな?

でもこんな時期に引っ越して来るか?


「あの?大学生ですか?」


俺がそう言うと「うふふふ」と笑って「もう〜今頃の若い子はお世辞が上手いわね」と言われた。


お世辞?俺はそんなつもりで言って無いけど、と戸惑って居ると中から声が聞こえてきた。


「お母さん何喋ってるの?早く手伝ってよ」


「ごめんね。今行くわ」


お母さん?え!若すぎるでしょ。

俺がびっくりしてると伊吹さんは「私大学生じゃなくて高校生のママですよ」と言われて目眩がしてきた。

お母さん!?

女優さんですかね??


「お母さん!いつまで喋ってるの?」


まじかよ。

部屋からこのお母さんにして、この娘と言うくらい美少女が出てきた。

ミルキーカラーの髪色で髪型は首より少し下くらいのセミロングで、足も細くてスラットしていてスタイル抜群。

もう普通のアイドルと並んでも見劣りしないと思う。


「ごめんね陽菜子ちゃん。この男の子はお隣さんなの。つい話し込んじゃって」


そうお母さんが陽菜子さんに伝えると、陽菜子さんはチラッと俺の方を見て挨拶してきた。


「あ、どうも伊吹陽菜子です」


「こちらこそ、池田彩斗です」


いきなり挨拶されたので少してんぱったが、何とか無難に返すことが出来た。

今までこんな美少女と喋った事が無かったので、思ったより緊張していた。

が軽い挨拶だけして陽菜子さんは、すぐに部屋の中に戻って行った。

荷物とか大変なのかな?

そんな事を考えていると、伊吹さんが僕の制服を見て、何かを言いたそうな顔をした。


「どうしました?」


「よく見たらその制服明洋高校のよね」


「はい?よく分かりますね」


「彩斗くんもしかして1年生だったりする?」


「1年生ですけど?」


「あら陽菜子ちゃんと同じ学年ね、家の娘も明日から転校して明洋高校なのよ高校なのよ、仲良くしてあげてね」


「え?この時期に転校ですか?珍しいですね」


てっきり通ってる学校の近くに引っ越してきたのかと。

しかもうちの編入試験は中々に難しいって聞いたのに。


「私とお父さんが海外出張に長期間行く事になったから、急遽陽菜子ちゃんに一人暮らしして貰わなくなって、日本に帰ってきて1番使う会社もこの辺りだから、それと安全性が高いマンションだからね」


「そういう事なんですね」


「彩斗くん今ご両親居る?挨拶したいんだけどいいかな?」


俺は伊吹さんの両親という言葉に反応したのか、胸の奥が痛みそして変な汗が出てきた。

まだ少しトラウマがあるかもしれない。治さないと。

俺は少し深呼吸をした。


「い、いませんよ僕も一人暮らしなので」


「あ、ごめんね変な事聞いちゃったわね」


「いや全然両親は元気ですけどね」


そう俺が訂正すると、伊吹さんは安心したような顔をした。


「じゃあなんで1人暮らししてるの?」


「少し仕事が忙しいらしいので」


俺は誤魔化した。

伊吹さんは多分いい人だけど、和真達くらい深く関わった上で、心を開ける人物じゃないと俺の親のことは、言いたくなかった。

そしてもう1度を伊吹さんを見ると、凄くニヤニヤしながらこっちを見ていた。

悪い大人の顔だ。


「あら、高校生が隣の部屋同士で1人暮らしね〜ほどぼどにしないと駄目だからね。陽菜子可愛いからウフフ」


「へ、変な事言わないでください!普通何もするなと釘を刺す所でしょ!」


まぁ俺じゃ釣り合わないし、そもそもチキンだから何も出来ないんですけどね。


伊吹さんがまだ自分の世界から帰ってこずに、妄想をしていると、痺れを切らした陽菜子さんから、先程より大きな声で「もう流石に戻って来てよ!今日の夜には飛行機乗るんでしょ。これじゃ絶対終わらないよ」と少し焦り気味で呼んできた。


「陽菜子が怒ってるから戻るわね。陽菜子ちゃんと仲良くね」


「はい、さよなら」


そうして伊吹さんは中に戻って行った。





 

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