第12話:襲撃後
「ウィリアン大神官様、セシリア様、ご無事ですか!?」
騒ぎを聞きつけ、たくさんの人がやって来た。
神殿内にモンスターが出たんだから、そりゃあ大騒ぎするよね。
「わたしたちは無事ですよ。傷一つない。それもこれも、セシリアがグレムリンを倒してくれたおかげだよ」
「え、あの、私じゃなくって――」
「しかしセシリアも驚いただろう。さぁ、部屋まで一緒に行ってあげるから、今はとにかく休むことだ」
ウィリアンさん、勘違いしてる。
あれを倒したのは私じゃない。誰かがナイフを投げて倒してくれたんだよ。
でも神殿の護衛をしている神官戦士でもない。駆け付けたタイミング的に絶対違う。
誰が?
「あとのことは任せてもいいだろうか?」
「はいっ。何者が寄越したのか、こちらで調査します」
「え、誰かが連れてきたの?」
「そうだよ。グレムリンが自分の意思で神殿に来ることは決してないからね」
だ、誰かが神殿を狙ったってこと?
「さ、部屋へ行こう」
「う、うん」
部屋へと到着すると、まず中に入ったのはウィリアンさん。
窓に鍵が掛かっているのを確認し、そこに何かの魔法を掛けている。
「どうしたの、ウィリアンさん?」
「狙われているのがお前かもしれないからね。念のため防護魔法を掛けておくよ」
「私? なんで私が――」
アディ?
ううん、違う。そんなはずない。
この前は私だと知らなかったから襲って来たけど、でもあれからは来てないもん。
私だって分かってて襲うはず……ない。きっとない。
「聖女の存在を快く思わない者もいるんだよ。たとえば悪しき神を信仰する者とかね」
「あ……」
「五〇年前、オーリン神の神殿で聖女候補が襲われ、命を落とした子もいたんだよ」
「そんなことが……」
じゃあ、今回の襲撃も邪神の信者なのかな。
でも助けてくれたのはだ――もしかして、アディ?
「だけどお前には、助けてくれる人がいるようだね」
「え?」
「神官は刃物を使わない。それは神官戦士であっても同じだからね」
ウィリアンさんが懐からナイフを取り出す。
それは確かにグレムリンを絶命させたナイフだった。
「これはアサシンが好んで使うナイフだ。心当たりはあるかね?」
「……うん」
「そうか。なら持っていなさい。あ、浄化してあるから汚れはもう取れているよ」
「ありがとう、ウィリアンさん。でもどうして警備の神官戦士の人にあんな嘘を?」
ウィリアンさんは笑って、
「あの場にいない誰かに助けられたなんて話したら、また説明が面倒くさいだろう。もう夜も遅いことだし、わたしも早く休みたいからね」
――って。
まぁ確かに面倒くさいか。
「さ、もうお眠り。扉にも防護結界を張るからね」
「うん。ありがとう、ウィリアンさん。おやすみなさい」
「おやすみセシリア。よい夢を」
ウィリアンさんが出て行ったあと、扉が一瞬光った。
魔法の結界が張られた証拠だ。
ナイフは引き出しに入れておこう。
アディ、なのかな。
アディだといいな。
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