第20話 言い訳を忘れる
さて今日の夕食、何を作ろうかな。野菜室にキャベツが1個、しなぁとしている。おもむろにパソコンで料理サイトを開く。検索の四角い枠にキャベツ スペース 簡単と入れる。簡単と付けるからロールキャベツは到底出てこない。うーん、そうだ、お好み焼きにしよう。材料を揃えれば夫が焼いてくれる。簡単、簡単。
最初に買った料理本は「10分でできるスピード料理」。共働きの主婦にはぴったりで、とても世話になった。生涯で1番ページを繰った本かも知れない。
そのとき、私はこう思っていた。今は時間がないから簡単なものしか作れない。専業主婦になったら、ちゃんと料理を作ろうと。
島へ移住して半年は仕事が見つからず家にいた。念願の専業主婦。夫を送りだすとワイドショーを見ながらチャチャと掃除機をかけて、料理番組が始まるころにはテレビの前にデンと座っていた。しっかりメモを取って、いざ買い物に出かける。だが、甘かった。島は食材が揃っていない。本土から来る便がないと野菜は玉ねぎしかないことだってある。加えて料理下手の私は臨機応変に、ができない。ちゃんと料理を作ろう!の
それから20数年を経て、今こそ時間はふんだんにある。なのに私は今日も簡単料理を検索する。ようやく認めよう。私は料理が苦手なのである。食器を揃えてきれいに盛り付けるのは好きだし、掃除というか整理整頓が好き、洋服も好き、忙しいときも明日着る服は必ずアイロンをかける。そう、時間があったらやるのにぃ…は言い訳なのだ。好きなことは時間がなくても、時間を見つけて、時間を作ってやるものだ。
英会話だって、いまや学校に通う時間やお金がなくても、いつでもどこでも勉強できる時代だ。赤尾の豆単(知っている?)だったのに工夫を重ねた教材ツールが沢山出てきた、と思ったら、いまや教材要らず隙間時間に動画で勉強できる。言い訳する口は塞がれ「できないのはお前のやる気がないからだ!」と最新ツールに往復ビンタをされそうだ。おっしゃる通り。その通りだ。
思えば私は言い訳ばかり考えてきた。仕事でも期待通りにできないと思うと、まず言い訳を考える。責められる前から反射的に頭のなかで言い訳が整列している。真剣に課題に向き合い、やり遂げる心があれば、言い訳を考えるまえに道を探すだろう。たとえ、うまくいかなかったとしても残るのは真摯な反省だ。言い訳ではない。
今更、気がついてもなぁと思う。だが、死ぬまで言い訳をしているのは嫌だなぁとも思う……。最近、とみに忘れっぽくなってきた。使い切ったもの、例えばペーパータオルや砂糖、顆粒だしとかを使い切って、後片付けのときに補充しようとその時は思うのだが、食べ終わるころには忘れている。
今朝、朝食の用意で夫の好きな甘い卵焼きを作ろうと思い、フライパンを温め器に卵を割った。砂糖を入れようと思い、容器を開けると
もうぉこの「反射的言い訳ひらめきマシン」はやめたい。
まぁそのうち言い訳も忘れちゃうかも知れないけど。
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