第57話 057 走馬灯
───殺セ
───るっせえな…
少年の胸には
小さくとも、急所に深々と刺さるそれは誰の目にも確実な致命傷であるとわかる。
───殺セ
───今更なんだってんだ…クソが…
とうに忘れたはずの呪いのごとき呼び声と共に生を終えようとする今、脳裏に浮かぶもの。
それはやはり、人生の記憶であった。
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「オラッ見ろっ!お前はあれだ、あれだぞ!こんな俺を、殺すのかっ!?」
「…」
「よおーしっ、あれだ、20秒だ!20秒以内にやってみろ!20秒以内にやれなかったら、俺の勝ちだ!わかるな!?俺の勝ちだからなっ!?いーち、にーい、さーん…」
「はいっにじゅうっ!よーし、20!俺の勝ちだ!よーし、よおぉしっ!」
「あれだ、まあ、そういうわけだ」
「だからまあ取り合えず、その物騒なもん、降ろしな…?」
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「話は師匠がつけてくれた、今日からお前はここで暮らすんだ」
「…」
「まず師匠に礼を言ってきな」
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「いいね、お前は才能あるよ」
「…ホント?」
「ああ、シーフならその小さな体もきっと武器になる、ガゼルだってもっと小さかったはずだ」
「…ガゼル?」
「そうだ、救国の十二人の1人。小鬼のガゼル。俺らシーフの英雄だ!」
「英雄…」
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「なあアニキ、なんであの時俺を返り討ちにしなかったんだ?」
「あーん?」
「今ならわかる。簡単だったろ?」
「そうだなあ…」
「俺が刺してきたら、どうするつもりだったんだよ?」
「…涙目でナイフ持って震える
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「お前っ、マジかぁ!?」
「へへーん!」
「ふむ…あの伝説と言われた財宝をのう」
「パーティは解散しちゃったけどね、俺、冒険者続けようと思う」
「ふむ」
「本気で…盗賊王になりたいんだ」
「おいおい、マジかぁ!?」
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「お前、深層に挑む気はあるか…?」
「深層…迷宮の?」
「そうだ。ここライナスの…深層だ」
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「シーフは貴重だ、早い補充で助かるよ」
「宜しく頼む」
「宜しくお願いします!」
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「バッカじゃないのぉ?」
「ええー?なんでぇ?」
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「ね、これ…。似合う?」
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───殺セ
───クソ…うるせえんだよ…
最期の時が近づくその耳に呪詛が鳴り響く。
───殺セ
───まあ…俺にしては上出来…かな…
───殺セ
───そうだ…元々俺は…こんな…どうしようもない…
「やだ…死んじゃやだよっ」
───そうさ…この
そして少年は薄れゆく意識の中、微かな幸福を胸にその短い生を終えた。
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