第26話 一年間の動き
あれから一年、私はニックといろんな事をした。
まずは、神殿に帰ってもシスターコリンナと会わなくて済むように作戦を立てた。
神殿は、当たり前のように毎日神様を呼べと言い出したから、聖女の力を溜めないと神を呼べないと神様に嘘を言ってもらった。一年間力を溜めないと呼べない。そう言ったらシスターコリンナが激昂して大変だったから、健気な聖女のフリして神様にどうにか半年に一回にできないかと頼んだ。
そしたら神様が、ならば聖女は結界に籠り祈り続けろと言ってくれたのだ。ま、それも我々の作戦ですけどね。シスターコリンナがわたくしも一緒に結界に入るとか恐ろしい事を言い出したから、ならシスターコリンナも結界を出して祈り続ければ良いと神様に言ってもらった。
神殿では、結界に籠り神に祈る事がブームになってどれだけ長く結界を維持できるかが権力に直結するようになった。
実はそんなに魔力が高くないシスターコリンナは、神殿で二番目に偉かったのに今は権力がなくなってしまったらしい。
けど、ザマアミロなんて思わない。正直、ちょっと思ったけどそんな事考えたらまた黒い靄が出るから、嫌な事を考えた時はすぐニックに抱きつく。
ニックは、私が結界に籠る事になって護衛ではなくなった。けど、毎日私のところに来てくれる。
ニックのお家、一回行ったから転移陣を作れたの。結界に篭ってから、私の部屋とニックの家を転移陣で繋いだのだ。だからニックはほぼ毎日私に会いに来てくれる。
聖女の魔力は無限だし結界はずっと維持できる。けど結界から出たらアウトみたい。
結界から出られるか実験したの。そしたら私がニックの家に行った瞬間結界が消えたみたいでさ。念の為に残しておいた私の幻影がシスターコリンナにボコボコにされてた。私の部屋の転移陣を透明化しておいて良かったよ。見つかったらヤバかった。どうなるかなーって神殿に戻ったら、オートモードの幻影は血まみれでした。うわやっべと思って幻影に謝らせて、急いで結界を張ってシスターコリンナを追い出した。
一部始終を透明化で見てたニックはキレてて、宥める方が大変だったよ。
ニックは私に魔法を教わって、透明化や無限収納、テレポートができるようになった。けど、幻影は難しいみたい。魔力は足りるのに、イメージが掴めないって言ってた。私はテレビや写真が身近だったからすんなり出来るのかもね。ニックは、魔力が少なかったらしいんだけど、私が魔力譲渡したらすごく魔力が増えたらしい。魔力を測る魔道具が壊れたって言ってた。
私が魔力譲渡をしたのはニックとアリサちゃんだけ。それ以外の人には魔力譲渡をしないと決めた。聖女の無限の魔力がニックやアリサちゃんに影響を与えてるみたいだから、本当に大事な人にだけ魔力譲渡をすると決めたのだ。
アリサちゃんは、定期的にニックが連れて来てくれる。団長さんの家で幸せに暮らしてる。最近は公爵令嬢としてパーティに出たりしてるみたいで、すっごく綺麗になった。
他にも、私の為ならなんでもすると色んなことに協力してくれる。貴族の事とかよく分かんないし、アリサちゃんのおかげで助かってる。
団長さんやアリサちゃんのおかげで、国王陛下や王妃様にも会えた。ニックがテレポートを使えるようになったから、国王陛下を連れて来てくれたのだ。
結界は、ニックとニックが許可した人だけ入れるように設定してある。ニック以外の人が訪問する時は入る前に私の許可も必要。だけどニックだけはフリーパスです。
とはいえ、ニックは紳士だから来る前に連絡をくれるんだけどね。
通信魔道具、要は電話を作ったからよくおしゃべりしてるよ。イヤーカフにして透明化をかけてあるから邪魔にもならないし人に気付かれない。
私とニックは、声に出さなくてもテレパシーで会話ができる。けど、それは近くにいる時だけだった。通信魔道具を作った事で離れててもテレパシーが出来るようになった。
私は結界に一人だから良いけど、ニックはお仕事もあるし外にいるから一人でブツブツ言ってたら怪しいもんね。だから、テレパシーで通話できるようにしたの。
イヤーカフを作った時は、また規格外だって呆れられたけどね。それからは、魔道具を作った後は必ずニックに見せるようお願いされた。
私、そんなに規格外かなぁ?
そう言ったら、自覚がないのが一番厄介なんだと言われてしまったよ。
ニックはお仕事もあるから、夕方以降に会う事が多い。昼間は私も色々やってるのだ。
聖女として魔物を減らすよう祈り、魔法を使って世の中を観察して、どうやって神殿を潰すか考える。悪い事じゃない。人々を騙す神殿の真実を明らかにする正義の行いだ。そう無理矢理結論付けると、黒い靄は出ない。
結界に篭って半年後、私は再び神様を呼んだ。実は結界の中で何度も呼んでるし、神様と通話できる魔道具を作ってニックや国王陛下に渡してる。
だからこれは、単なる儀式。
久しぶりに会うシスターコリンナは怖かったけど、安心魔法で凌いだ。神様は、皆自由に暮らしていて嬉しい。どうか、幸せに生きよ。我の事など敬わなくて良い。神殿の者達以外は祈らなくて良い。祈る時間に、自分の好きな事をせよ。そう言ってた。私はなにも頼んでないから、神様の本心みたいね。
神様の力って事にして、魔法であちこちに神様の映像を送った。
神殿の人達は微妙な顔をしてたけど、シスターコリンナが呆然としてる間にすぐ結界に篭った。神様の指示で、半年間は結界から出ません。そう宣言しておいた。
それからますます、人々は自由に生きるようになった。神殿に来る人は減り、人々を憂う優しい神官さんは神殿を変えようとして……クビになった。
その話を聞いたアリサちゃんが、孤児院を作ってクビになった神官さんを全員雇い入れた。アリサちゃんが元孤児である事は有名だ。それを馬鹿にする貴族も多いらしいけど、有力な公爵家に面と向かって文句を言う人はあまりいない。自分と同じ境遇の子どもたちを助けたい。アリサちゃんの願いは叶えられ、神殿のすぐ近くに立派な孤児院ができた。
寄付もたくさん集まっているそうだ。孤児院の子どもたちはいい子で、働き者だからと雇ってくれる商人さんも多いらしい。
寄付は、神殿じゃなくて孤児院にする方が良い。そんな声が高まるようになった。特に、お金を持ってる商人さんは孤児院にこぞって寄付をするようになった。寄付のお礼に孤児院の子が手伝いをしてくれたり、手作りの質の良い商品を提供してくれたりするからだ。
しかも、神殿みたいにもっとお金を寄越せと言ったりしない。僅かな寄進でも、態度は丁寧だから孤児院に寄付する方が良いと考える人が増えた。元々寄付の文化があるこの世界は、コンビニでジュースを買うくらいの感覚で寄付をする。
神様が、神殿以外にも寄付先はある。自分達で考えて、決めよと言ったのもデカい。
最近ようやく危機感を覚えた神殿が孤児院を潰せと騒いでるらしい。神殿からスパイも送られてきたが、全部アリサちゃんが魔法で撃退してるそうだ。魔法は私が教えた。私の魔力を譲渡したからアリサちゃんの魔力はとてつもなく高くて、大抵の事は出来るみたい。スパイまで魔法で発見するんだからヤバいよね。
神様は自由に生きろと仰ったのに、神殿は神様の教えを否定するの? と詰め寄ったらしい。アリサちゃん、強え。
神殿は、どんどん権力がなくなっている。そして私は……。
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