第16話 綱の設置と学校側の対応
ジューネスティーンとパーティーメンバー達は、昼休みを利用して格闘技場に設置された綱を使って、上半身の筋力強化を行うようになった。
一般的な冒険者は、魔物と戦うにあたり、武器を使って戦うので、入学してきた生徒達において、素手で戦う格闘技に対してジューネスティーン達以外の生徒も過去の生徒も、あまり、真剣に取り組んでいなかった。
そんな中、ジューネスティーンは、格闘技の有用性を考えていた。
格闘技用の筋肉は、そのまま、武器を取り扱う時の筋力に転用可能と考えれば、在学中に筋力強化を行うことで、卒業後の活動に良い影響を与えられるだろうと思ったのだ。
そして、他の生徒達が実用性に乏しいと考え、単位を取るだけだと積極性に欠けていた事から、積極的に格闘技の有用性と、その筋力強化のトレーニングを考えて提案し、必要な用具の設置まで依頼をした。
教官としたら、今年も例年通り生徒達は格闘技の授業に対し、単位を取るだけの授業としか考えずに、適当に授業を受けるだけだと思っていたようだったと判断していた。
そして、教官としては、気に入らない特待生のジューネスティーンを使って、生徒に対して嫌がらせのつもりで技の披露をした。
しかし、ジューネスティーンは格闘技の有用性と、そのためトレーニング方法を考えて、綱上り用の綱の設置を依頼してきた。
その綱の設置は、人の体重と上る際に掛かる加重を考えた綱を用意して、それを梁に固定するだけなので、費用的にも安価であったこともあり、教官が学校に働きかけていた。
ただ、ここまで早く設置されたのには、別の思惑が働いていた。
ジューネスティーンに空き教室が提供された事も含めて学校側に働きかけていた人物より、綱の設置に関する費用も含めて手配してくれていた。
学校側としたら、その人物に対して、ジューネスティーンが格闘技場に綱の設置を依頼してきたと話をするだけで、その人物が設置の手配を全て済ませてしまい工事まで済ませてしまっていた。
格闘技の教官には、そんな裏の情報は聞かされておらず、設置におての条件を、最低でも1パーティーが使うことだと聞かされていた。
そうなれば、ジューネスティーン達のパーティーは、常に使う事を強要とまではいかないが、積極的に使う必要に迫られた事になる。
上り綱の設置について、費用も設置も全部行ってくれた人物は、特待生であるジューネスティーンに対して、本来であれば特待生となった条件をクリアーさせる為に全力でサポートするはずなのに、特待生となった条件以外の事に関しては、むしろ、不許可にさせようと動くはずであるが、そんな様子もなくジューネスティーンの依頼通り設置してしまった。
学校の事務局としては、ジューネスティーンの依頼を教職員会議から聞き、ある外部の人物に、その事を伝えた。
その人物は、ジューネスティーンが入学した際、空き教室を提供する際、その教室の使用料を支払うという契約と、学校へ寄付金を渡していた。
その見返りとして、ジューネスティーンの状況報告をして欲しいと依頼されていたので、その一環で上り綱の報告を上げていた。
学校としては、事実を報告しただけで終わるだろうと思っていたのだが、その話の後、すぐにアクションが起こった。
綱の設置に関する許可を、学校側に打診され、費用の全額を持ち、そして設置業者の手配まで全部行うと言ってきた。
そして、その許可を得ると、そのまま、設置に入ってしまった。
資材の手配も業者の手配も、報告を受けて直ぐに手配を終わらせても間に合わないだろうが、学校側が設置許可を出すと直ぐに設置工事が始まり、そして、設置されてしまった。
学校側からしたら、なんでこんなに早いのかと聞きたかったようだが、学校に許可を得にきた人物に確認しても、学校の許可を得たら直ぐに作業に入るようにと言われただけだから理由は不明と伝えられただけだったので、理由を確認することはできず、ただ、許可を出したら設置工事が始まり、急ピッチで終わらせられて、早々に帰られてしまった。
学校の事務局としては、予備費を使うつもりで、ギルド本部の許可の取り付けに入ろうとしていた時に、設置の許可を求められたことで、学校の予算を使う必要がなくなった事から許可は学校内だけで終わり、ギルド本部へは報告だけで終わることとなった。
費用の発生が無くなった事によって、事務手続きが簡素化された事で、書類作成のための高価な羊皮紙を購入する必要もなく、筆記士による清書をすることも無くなり、格闘技場に上り綱の寄付を受けて設置したとだけの報告で終わる事になった。
学校の事務局も校長も、格闘技の教官から設置の依頼を受けた時は、面白くない顔をしたのだが、ある人物に報告をしただけで設置が完了してしまった。
学校側は、今回のジューネスティーンの特待生としての入学許可をギルド本部が出してきたのだが、その条件を確認して、全ての職員が疑問を持った。
その開発しようと考えているパワードスーツなど、装着が簡単になったフルメタルアーマー程度にしか考えられなかった。
パワードスーツが完成してギルド本部に納品されたからといって、特待生として入学費も学費も、そして、寮費まで免除でというのは、費用に対して見合わないと学校側は考えていた。
そんな事もあって、特待生としてのジューネスティーンは、職員からも事務局からも好意的には見られていなかったのだ。
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