第18話 山狩り調査報告
それぞれの家族の団欒が落ち着いた後、村長とハリスは三人から事の仔細を聞いていた。
両親たちは子どもたちの無事を確認できたため、各自の仕事に戻った。
……アリス父だけはアリスの側を離れようとしなかったが、アリスの説得とアリス母のビンタ(掌底)によって無理やり連れて帰った。
始めに狩人を襲っていた黒い狼の話。その一匹は三人で無事に討伐した話。その後、黒い大熊と狼が現れたこと。そして倒すと霧のように消えたこと。
「な、なんと……。それでは、怪物は三体もおったのか!?」
「ああ。俺たちも一体だけと思って油断した。もっと警戒しとくべきだったぜ」
「三体もいるなら、最初のやつには私ももう少し魔力を残していたのに」
「う〜む、倒すと霧散する獣……。明らかに普通ではないな。よく倒せたのう、お前さんら」
「一体目はアリスの魔力を溜めた魔法で跡形もなく消滅させました。あの時は単純に何も残さない位の威力かと思ったんですが、もしかしたらあいつも霧になって消えたのかもしれません」
「しかも、全員大熊なんて目じゃないほどの強さだった。あいつらがまた現れたら倒せる狩人はいないと思う。束になっても勝てるかわかんねぇ」
「……そうなるとまずいのぉ。まだ黒い獣が残っているとすると厄介じゃ。村の人間だけでは手に余る」
今一番の懸念は、黒い獣たちがあと何体残っているのかだった。
一体ならば、狩人の連携プレイや今回のようにソルたちで対処できるかもしれない。だが、三体以上になってくると、太刀打ちできる人間がソルたち三人に限られる。しかも、ソルたちもまた退治できるかはわからない。
黒い獣がいる限り、村の崩壊の危険性はずっと続いてしまう。
しかし、その懸念についてアリスが弱めに否定した。
「たぶん、もういないと思います。断言できないけど、気配はなかったから」
「ああ、俺も思った!あいつら普通の獣とは違う独特の気配だったもんな」
「独特?どう違うんじゃ?他の狩人も感じ取れるのか?」
「感じ取れるかはわからんけど、何ていうか、う〜ん……どういえばいい、シンハ?」
「ここでオレに話振るのかよ!?んー……、オレが感じた気配は『嫌な気持ち』……ですかね?」
「嫌な気持ち?」
シンハ言いながら感じた気配を説明した。
「始めは味わったことのない強い気配だったんですけど……徐々に嫌な気持ちにさせる気配に感じました。」
「確かに嫌な気配って感じだったね!」
「……俺も若僧どもの報告で駆けつけた時に感じたぜ。お前らが倒しちまったからすぐに消えちまったけど、確かに気持ち悪く感じた」
「例えるなら……なんかイラつくし、不安にもなるし……そんな気持ちが一杯湧いてくるイメージです」
「「「そう、それ!!」」」
シンハの例えた気持ちにソル、アリス、ハリスも同調した。
「……なるほどの。四人とも同じ気配を感じ取っているなら、そういう特徴なのじゃろう。それが消えたというならばいなくなった可能性がある。
だが、それだけでは曖昧じゃな。村を治める者として、絶対に安全とは判断できん」
「ああ、わかってるよ村長。だからこれからまた山狩りする。今度は狩人全員で固まって調査する」
「あ!なら俺も……」
「アホいうな、ソル。お前も軽傷だがケガしてるんだ。おばさんを心配させたばっかなんだから今日はもう休め」
「い、いや、けど、もしまだ残ってたら……」
「何度も言わせんなよソル、今回は諦めろ。狩人たちと連携がうまくとれないお前だけ行っても、連携が乱れて足引っ張るだけだから」
「そうね、いくら強くても和を乱して狩人さんたちがケガしたら申し訳ないしね」
「ぐ、確かに……」
ソルはシンハとアリスに説得されて諦めた。
その様子にハリスもホッとした。もしソルが暴走したら誰も止められない。
余計な気苦労を背負い込みたくないので、二人の説得に感謝した。
「まあ、俺たちだけなら絶対に戦闘はしない。偵察だけにするか安心しな」
「うむ。……報告はそんなとこかの?」
「あ、もう一点報告があります」
シンハはそういって黒い狼から手に入れた黒い水晶を取り出して見せた。
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