第13話 絶体絶命
新たな二体の黒い獣。
一匹は先程と同じく狼のような姿だが、もう一匹は大熊に近い姿をしていた。共通していることは、体に黒い水晶を生やしていることだった。
(最悪だ!三人でようやく倒した敵がまた出てきた……。それも二体も!!一匹はまた違う個体みたいだし、あと何体いるんだよ!)
「お前ら二人はそこにいろ!俺がなんとかする!!」
「ソル!?」
「馬鹿野郎ぉ!無茶だ!!」
自分だけが元気だから何とかしなければ。
そう思ったソルは躊躇せず2体の獣へ迫った。しかし、黒い大熊がソルの攻撃に対応し、もう一匹の黒い狼はシンハとアリスのもとへ向かってきた。
「くそ!」
「ソ、ソルはそいつの相手しろ……!狼はオレが戦う……!」
「で、でもシンハ……!」
「足止めくらいできる……!応援がくるまでは耐えるから、お前はそっちよろしく……!」
「わ、わたしも、少しなら魔力あるから……」
「ああ、いざってときは頼るよ、アリス」
そうはいったがあきらかにソル以外は万全とは程遠い状態だった。
「こいつを速攻倒して助けに行く!!それまで耐えてくれよ!!」
「ああ……。まかせろぃ……」
ソルは黒い大熊をすぐに倒そうと全力で攻めた。しかし、急ぎすぎるあまりに単調な攻撃となり黒い大熊は簡単に防ぎ、ソルに反撃した。
「く、こいつ強い!普通の大熊より反応も力も桁違いだ!」
ソルが黒い大熊に苦戦している間、シンハは黒い狼と対峙した。
爪攻撃をナイフで受け止めたが、うまく力が入らずに吹き飛ばされてしまった。
「ぐは……!」
「シンハ!?こ、この、ファイア、!」
アリスの唱えた初級の火魔法『ファイア』は訓練の時に比べて非常に小さい火球だった。
黒い狼に当たりはしたが大したダメージにならず、黒い狼はギロっとアリスを睨み、標的はシンハからアリスに替えて襲いかかった。アリスも迎撃しようと護身用のナイフで攻撃を受けるも吹き飛ばされ、近くの木に衝突した。
その衝撃を受けてアリスは気を失った。
「あ、アリス……!!このやろぉ!!」
走ってナイフを当てるのでは間に合わない。そう思ったシンハは黒い狼の気を逸らすために近くに落ちてた石を拾って投げた。
コツン、と黒い狼にあたったが、気にも留めずアリスにトドメを刺すためか近づいていった。
(くそ!アリスがやられる!ソルも大熊の相手で手一杯だし、オレがなんとかしなきゃ……。そうだ!さっきの水晶なら結構大きいし、これ投げれば結構ダメージいけるかも!)
先程倒した黒い獣に生えていた黒い水晶。あとで村長やハリスに見せるつもりだったが、背に腹は変えられないとシンハは狼に向かって思いっきり水晶を投げた。
ゴン!
黒い狼の頭部に見事直撃しよろけた。黒い狼は怒った様子でシンハを振り向き睨んだ。
グオオっと大きな雄叫びをあげた瞬間、黒い狼の体に生えた黒い水晶が禍々しく光り始めた。黒いモヤが水晶から溢れ、狼の体を覆った。
「な、なんだ?あれ……」
ビュオ
「えっ……ぐおあ!!」
気づいた時には黒い狼の蹴りがシンハの腹部にめり込んだ。
吹き飛んだ直後もすぐにダッシュでシンハに迫り爪で切り裂いてきた。悲鳴を叫ぶ暇もない連続攻撃の応酬にシンハはなす術なく、もろにくらってしまった。
その瞬間を横目で見てしまったソルは大声を上げた。
「な、シンハ、アリスゥゥ!!くそ…………っ!!おわ!?」
ソルが目を離した隙に黒い大熊も水晶からモヤを出してきた。直後、攻撃の一撃一撃が重くなった。さっきよりも苦戦してシンハたちを助けに行くこともできず、ソルはかなり焦っていた。
(くそ、あの水晶は奴ら自身を強くするためのモノか!
このままじゃ俺もやられる!!いったんこいつを倒すことだけに集中しよう!)
「シンハ、アリス!頼むから生きててくれ!!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます