11、君の本心はどれなの……?
他愛ない会話をしつつ、雄二に慰められながら学校まで向かっていた。
「まあまあ。恋愛なんて人生で1回しか出来ないわけじゃないんだからよ。俺なんか自分の部屋のベッドを買い換える以上に恋愛してんだから」と、わりと衝撃的な慰められ方をしてしまった。
軽い男とは知っていたが、ここまで恋愛を経験している奴が友達というのはわりと心強い。
彼なりに応援してくれているんだなと察し、お互い同じタイミングで学校の昇降口に入った時だった。
「っ……!?」
「うわぁ……。俺行くわ!」
「あっ!?ちょ、雄二!?」
雄二は気まずいとばかりに靴を上履きへと履き替えてすぐさま逃亡していった。
おーい!
お前の無責任さはどうなってんだよ!?
ここに彼女が居なかったらそれくらい叫びだしたかった。
雄二よりも、俺の方が気まずいに決まっているじゃないか……。
何故ならすぐそこに俺を振った筋肉フェチなあの子がいるのだから。
「あ……、高嶺君……?」
「あ……。鈴川さん……。おはよう……」
「うん。おはよう高嶺君……」
昨日、告白した側と告白された側の邂逅だった。
それはもう、お互いがギクシャクしていると言わざるを得ないくらいにしんみりした空気だった。
優香の親友であり、とても可愛らしい子だ。
焦げ茶色のような黒と茶色が半分混ざったような髪をショートカットにした髪型をしている。
優香と同じく優等生だ。
少し垂れ目で、身長も低めで可愛いに特化したような子である。
ロングヘアーでお姉さんっぽい優香、ショートカットの妹系っぽい鈴川さんと対照的な存在である。
それが大体一緒にいるんだから、目を惹かないわけがなかった。
「昨日……。高嶺君はあれから何してた……?」
「べ、別に……。普通だよ……」
「そ、そっか……。そうだよね……」
普通に女にお持ち帰りされた挙げ句、女から俺の家にお持ち帰りしただけ…………って、文章にするとちょっとアレである。
普通では全然ない。
「こんなことを聞くのも変だけど……。高嶺君は、振られたからもう私に話しかけてくれなくなるの……?」
「わからない……。どうだろうね……?」
今、鈴川さんに声を掛けられたから返事をしたけど俺からなら声を掛けられただろうか……?
わからないけど……、多分出来なかったかもしれない……。
「多分、出来ないかな……。そのまま辛くて下向いたまま教室へ逃げてたかな……」
「……そんなこと言わないで」
「え?」
「普通に今までみたいに挨拶とか、プライベートな会話とかして欲しい……」
「え?そ、そうなの?」
「うん……。高嶺君に話かけられると嬉しいから……」
そう言うと頬を赤く染めて下を向く鈴川さん。
じゃあ、なんで俺に話しかけられると嬉しいのに……。
俺を振ったの……?
聞きたいのに、その言葉を出せない自分がいる。
こういうところだ。
こういうところが、『鈴川さんは俺に気があるんじゃ?』と思わせたり、雄二たちギャラリーからも『これ、行けるぞ』と思われたわけだ……。
鈴川さんの本心はどれなの……?
彼女のことが、全然わからない……。
「でも、俺は筋肉ないよ?」
「あ……。その筋肉というのは……。あぅ……」
「?」
「筋肉とかどうでも良いの……。高嶺君と話したい。それだけなの」
「……うん。ちょっとずつ頑張ってみるよ」
鈴川さんの気持ちがわからない。
でも、そう言うと彼女は嬉しそうに「ありがとう」とお礼を告げる。
その彼女のお礼にどんな意味があるのか、俺には全然わからない。
「じゃあ、またね……」
「うん。また」
一緒に行くのも気まずいのか、そう言うと鈴川さんは俺に背中を向けて廊下へと消えていく。
俺は靴を仕舞い、上履きを取り出した時だった。
「一度振られたくらいで…………」
え?
なにか鈴川さんになにか言われた?と顔を上げた時には既に彼女の姿はどこにもなかった。
なにを告げようとしたの……?
なんとなく彼女の本心を伝えたいようなトーンだった気はするが、言葉の中身は全部聞き逃してしまっていた。
「ふぅ……」
心が痛いなぁ……。
早速、失恋した相手と会うのは心臓が持たない。
バクバクした心を落ち着かせるように、右手で左胸を押さえ付ける。
朝からこんな調子なら、学校なんかモタないぞ……。
これからも毎日学校あるんだし……。
そうやって落ち着かせていた時だった。
『おはよう、総一君!』
「──っ!?」
女の子の声で俺の名前を呼ばれて、今日一心臓がドキッッッと飛び跳ねた。
その声の方向へ首を回すと鈴川さんと親友であるあの子がいた。
「お、おはよう優香」
「うん。昨日ぶりだね!」
「き、昨日……」
昨日の童貞卒業を思い返すと体温が一気に上がっていく。
うわっ……。
お互い変な声を上げたりしながら、抱き合ったんだっけ……と色々なことが頭に浮かぶ。
あの光景は一生忘れることはないだろう。
「ふふふっ。照れちゃって総一君可愛い」
「い、弄るのはやめてくれよ」
「はははっ。わかってまーす」
意地悪しながら優香は靴を履き替えていく。
それから自然とお互い並びながら廊下を歩くことになり、彼女の速度に合わせた歩行を心がけていくことにする。
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