第3話 検証

〈1854年6月17日〉〈嘉永7年5月22日〉

【根本うい】

お父さんのショムニー借りるかっ!


お父さんの趣味で買って、全然動かしてなかったけど、

ショムニーバンザイだね。

細い獣道進むにはもってこい。


山奥に進んで、記憶の中にあった川のほとりへ行って、

大がかりな実験。



RPGじゃぁ道具や食料しか収納できなかったはず。

動物はどうだろう?

近くにいた野ウサギを見つけ、追いかけること数十分。

抱いて試してみる。

ん~無理っぽい


液体はどうだろう?

収納はできたが、取り出すと、『びちゃん』とあたりを濡らすのみ。

取り出す時に分割したり、形状を自由にできないのか。


土でやってみるか。

『土、収納』

約50m四方の土がえぐられ、岩が転がっていて、壁には岩や倒木が飛び出してる。

自分で引いてるぐらいだからさっ…

そういえば残りの容量は?

0かぁっ!

これが限界ってことね。

とりあえず戻しておこう。


範囲は自由にできるのだろうか?

大体2m×2mで深さ5mを想像してみると、手前にズッポリと穴が空いた。

壁は今度は石があったであろう凹みが見受けられる。

範囲指定は結構自由が効きそう。


範囲と項目指定を掛け合わせできる?

『さっきと同じ大きさで土を収納』

穴は開いたが岩や砂利、腐葉土になりかけの落ち葉などが穴の底に転がる。

戻してみると土だけがドサッと落ちる。


じゃぁ形状は?

大きなテ〇リスブロックや円柱形の穴はいけたけど、

ショムニーを想像したらダメだった…。

「複雑なのはダメっぽいね。デフォルメなら!」

いけそうでいけないモヤモヤした感覚。

結局無理だった。


「しゃーない。取り出しも試してみよぉ…っ、」


くぅ~っ…。

小腹がなる。おなか空いたねぇ…。

なんか買うか。


『購入、サンドイッチ!』

収納に反応どころか、携帯に何も表示されない…。


「えっ!?

 昨日は買えたじゃん!昨日までっ??

 アイコンが薄くなってる??

 …。

 とりあえず帰って、ご飯にしよう…。」


帰ろうと思って車に乗り込んでから、ふと思う。

「倒木とか邪魔なんだよねぇ…。

 車をいちいち『収納』しないと通れないのも不便だし…。

 …、これ『収納』できるかな?」


木は生きてる。

切った後でも呼吸してるっておじいちゃんが言ってたから、

ウサギみたいに生き物がダメなら『収納』できないかも…。


先ずは倒木。

「…『収納』。」

絡み合っていた木々が崩壊し、ヒヤリとする。


「できたけど危なかったぁ…。

 次は気をつけないと…。」


次は倒木の根元の株。

切ってないから中途半端な高さで邪魔になっていた。

とはいえ、未だに根付いている。


今度は他の木が掛かっていないのを確認し、

「…『収納』。」

根っこの形状を写したかのような穴がきれいに残る。


「おぉ…。スゴイ。家までバシバシ整理していこう!」

興に乗ってしまい、帰る頃には夕方になっていた。



「ちょっと調子に乗っちゃったかな…?

 まぁ、道はきれいになったし、とりあえずご飯!」

と冷蔵庫へ行き、食事の準備に取りかかる。


「そう言えば、一昨日、『購入』でお刺身買ったよね…。

 取り出せるかな…?」

お刺身は出てきた。

が、ひどい異臭を放つ。


「腐ってるっ…。ダメだ!」

臭いを放つので、『収納』する。


「はぁっ…。

 ゴミ捨てもできないから、収納があって助かったぁ…。

 ってか、収納したものも時間経過するんだね…。

 これ以上腐ったら「なれ寿司」になるのかなぁ…。

 あれダメなんだよねぇ…。」


食事の支度を終え、冷蔵庫から取り出した缶ビールで喉を潤す。


「あ~、塩っ気がほしい…。

 惣菜コーナーの鮭のムニエルとかいいよねぇ…。」

と思った瞬間、携帯が鳴る。


「えっ!?購入できるっ!?」

『はい』を押して購入してみる。


「買えたっ!使えなくなった訳では…、ない…?

 もしかしてっ!」

慌てて外に飛び出す。


「やっぱり!購入できるのは家の敷地内!」

敷地から出るとアイコンがグレーになるのも確認した。


「まだまだ調べないといけないね…。

 って、とりあえずご飯!冷めちゃう冷めちゃうっ。」




【鵜殿 鳩翁】

「なんと尊大な態度だっ…!」


「鵜殿取締係殿、こらえてくだされ…。」

林殿がたしなめてくれるが、こらえきれない思いが沸々とたぎる。


「然れど林大学頭殿!

 斯様な一方的な条約を進めるのはおかしいではないか!?

 船を並べ、砲を向け、あの態度!

 交渉ではなく、脅しではござらんか!」


「気持ちはよう分かる。

 しかし、時代は移ろいゆくもの。

 あの黒船が押し寄せてくれば、日の本も如何になるか…。」


「それは分かる…、分かるがっ…。」

分かっていても、受け入れられぬのだ。


「今はこらえ、諸外国に追いつかねば…。」

庭越しに見える黒船を眺め、林殿が呟いておった。

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