今日も訪問!説得は目前?
センパイたちに合うまでの一週間、大量の宿題と戦ったり、息抜きに小説を書いたりして過ごした。
「ここら辺でいいかな」
公園内の小さなベンチに腰を下ろした。公園には誰もいないみたいだ。
まあ、ここまでの暑さなら人なんているはずない。
「誰もいないし、弁当でも食べておこうかな」
家を出るギリギリに作っておいた弁当のふたを開けた。
料理は得意ではないけど、それなりにがんばって作ったものだ。
「それにしても暑いなあ。熱中症になったらどうしてくれるの」
太陽への愚痴をこぼしつつこげた卵焼きをつついていると、公園の入り口の方から聞きなれた声が聞こえてきた。
「サキー!」
大声で私の名前を呼んできたかと思うと、小学生とは思えない速度でこちらに走ってきた。
「な、何があったの?」
「それ!」
それって何だろう?
「それって?」
「弁当のことだし!」
「これ?私が作ったやつだよ」
「サキって弁当作れるんだし!?」
「簡単なものならね」
ヒカリは何が言いたいんだろう?
「今度ヒカリの分も作ってきてくれないし!?」
「え?何で?」
そんなの古い恋愛マンガとかでしかやらないんじゃないの?
「ヒカリ、弁当とか作れないし、料理下手だし、父母共働きだから、休みの日の昼は、母さんが作り置きしてくれないと何も食べれないんだし」
なるほど。
「じゃあ今度みんなで集まることがあればだけど、作ってきてあげるよ」
「やったし!」
ていうか男子達遅くない?
と思った瞬間に声が聞こえてきた。
「すみません、遅れました」
「オレも遅れた」
よかった、遅刻しただけか。
「全員集まってるみたいだな」
「集まってるし」
「じゃあ今日は……どうしようか?」
「またあの人の家に行きますか?」
「そうするか」
あ、急いで弁当食べないと。
「野中、その弁当なんだ?」
「ふぇ?」
口いっぱいにおにぎりを詰め込んでるから返事ができない……
「手作りらしいし!」
「ふーん。あ、もう行くから早く食べ終えてくれ」
「はい」
よし、これで完食!
それからしばらく歩いて、先週も行った不登校の人の家に行った。
「センパイ」
着いた瞬間、アスカが声をかけた。
「何だ?」
「説得できるようないい方法、考えてきましたか?」
そういえば、アスカが先週にそんなことを言っていたような気がする。
「あ……」
「考えてこなかったんですね?」
「ごめんな……」
「まあいいですよ。今から考えましょう」
説得する方法って言っても、私たちはその人のことを全然知らないからなあ……
「まずその人のことを教えてほしいし」
「ああ、あいつのことか。わかった」
そうそう、それを聞きたかったんだよ!
「ええとな、パソコンのゲームが大好きで、真面目なやつとかしつこいのはあんまり好きじゃないらしいぞ。」
「それならしつこく訪問したセンパイが嫌だったのも納得できるし」
ヒカリもちょっとしつこくないか?
「うっ……」
「ヒカリ、言いすぎ」
「あ、ごめんサキ……とセンパイ」
「あの、話をもどしますよ」
「あ、うん」
すっかり忘れてた。
「で、どういう風に誘ったら来てくれると思いますか?」
「あー、オレが作ってるゲームができたらあげるから来てくれ、とか?」
「それ、いいじゃないですか!」
「ちょっと言いに行ってくるよ」
センパイが自信に満ちた顔つきでインターホンに向かっていった。
「おーい」
先週と同じようにへこへこしつつ説明している。
「学校なんて行かないって言ってるでしょ!?行きたくないから休んだんだよ!?」
「う……っ!すごい大声ですね…」
アスカの言う通り、今日もものすごい大声だ。
「自作ゲームとかもしな……完成したら持ってきて!」
「よくばりすぎだろ……」
仲良しなんだなあ。会話の流れでわかる。
「まあ完成したら持ってくるけど、がっ……なんでもない。またな」
がっ?ああ、学校のことか。
「早く帰って」
センパイは今日も泣きそうな顔……ではなかった。ちょっと自信がついたような感じの顔だった。
「じゃあまた来週かな。解散」
「また来週だし!」
「また来週ですね」
「また来週!」
誰が言うでもなく「来週も来よう」という雰囲気になった。
ヒカリの分のお弁当を作るのを覚えておかなくちゃ。
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