第78話 スキルを試して防具を新調

78.スキルを試して防具を新調









「ぶはぁっ………ふー」


お風呂場に沈めていた顔を勢いよくあげて息を吸う、何度か深呼吸を繰り返し息を整えてからストップウォッチを止めて考える。


「やっぱり5分か」


家のお風呂の浴槽の中で今回手に入れた【水中呼吸】のスキルを試していた、試していてこういう風に発動するのかと驚いた。

スキルを手に入れたときにパッと思い浮かんだのは魚みたいにエラが生えてきて呼吸が出来るとか、肺に水が入っても平気だとかそんなのかな?と漠然と考えていたのだが全然そんなことなかった。


そりゃまぁ言われてみればなんでそっちの方向を思いつくかなって感じだがパッと思い付いたのがそれだったから仕方ない。


では【水中呼吸】というスキルはどういった物なのかというと、スキルを発動すると口元に空気の層が出来上がりどこからか空気が補給され続ける感じだ、スキルの効果で5分間だけ存在する空気ボンベみたいな感じだろうか?

それで水中でも呼吸できるようになる仕組みだ。


ただ、このスキルの厄介なのが残り時間を把握していないと効果が切れた瞬間水を飲み込みそうになるという点だ。っていうか何回か水を飲んでしまった、お風呂の水を飲んだと思うと気分が悪くなってくる………最初は桶に水をはるとかにした方が良かったかなと思うがもう遅い。


【水中呼吸】のスキルの効果時間は5分、その後3分のインターバルを挟まないと再び使えるようにならない。


インターバルがもっと短ければ何とか我慢してもう一度使うことで水中で無限に呼吸できるかと考えていたのだがそううまい話はないようだ。

もしかしたら世の中には3分どころかもっと長く息を止めていられる人がいるかもしれないが少なくとも俺は1分も息を止めていられないのでこの方法はとれない。


「それにしても5分か、今のところは微妙だなぁ」


レベル1だし仕方ないがまだ役に立つようなスキルではないな。






◇  ◇  ◇  ◇






「おはようございます、新井さん」


「おはよう、神薙君」


次の日の朝10時、クランハウスへやってくると新井さんがリビングでコーヒーを飲んでいたので挨拶をする。


「飲むかい?」


「コーヒーは苦手なのでお茶下さい」


「了解」


リビングのソファへと座りお茶を入れてもらうのを待つ、少しすると新井さんが暖かい緑茶を入れてきてくれた。

まず初めに久しぶりだね、なんて会話をして最近の探索について話しをしたりした。

俺の方は新しくスキルオーブを手に入れてそれで覚えた【水中呼吸】の効果などを話した。

新井さんの方もどうやら色々な出来事があったみたいで、大きなところでは召喚獣が増えたのと宝箱からいい装備品が手に入ったと言っていた。



「そうだ、新井さん。今度オークションへ一緒に行きませんか?」


「オークションかい?どこのだろう?」


「一か月後にあるダンジョン協会主催のやつです」


「えぇっ?アレって確か参加するのにかなり厳しい条件がなかったっけ?」


「そうみたいですね、でも運がよかったのかたまたま参加できる機会を貰えたので新井さんも一緒にどうかなと思って」


「私は別に構いませんけど、いいんですか?」


「はい、俺はまだ高校生ですし。大人が一緒にいると安心できますから」


「そういう事なら任せてくれていいよ、伊達に社会経験を積んでないからね」


「ありがとうございます、日にちは一か月のこの日になります」


「了解、楽しみだねぇ」



よし、新井さんを無事に誘えたぞ!


今回クランハウスへ来たのはオークションへと新井さんを誘うのが目的だった、オークションには誰か一人だけ連れを参加させることが出来る、これを聞いたとき誰をさそうか少し悩んだ。

そもそもオークション何て言う所に行くのにちょっと怖い気持ちがあった、どういうところかわからないし何もわからないからだ。

ネットなんかでは情報が色々出ているがほんとかどうかなんてわからないし。


なので知り合いの中で一番安心できる人を誘おうと決めた、それが新井さんだ。

大人で社会経験もあるし、いつも優しくて落ち着いているし。


新井さんをオークションに誘った後、今度は逆に今度一緒に探索にでも行こうとさそわれそれを了承したり。他にもいろんな話をしてその日は過ぎていった。






◇  ◇  ◇  ◇






『つまりですねマスター、今のままだとまずいと思うんです』


「はい」


『どうしてもっと早く買いなおさなかったんですか』


「何となく?」


『何となくではダメです!もっと真剣に考えて下さい!大事なんですから防具は!』


「はい」


場所は変わって、新井さんをオークションに誘ってから二日後。【野営地】内の芝生の上に正座させられて怒られている。


理由はまともな防具を着ていない事がヘレナにばれたからだ。


実はかなり前からずっと同じ見た目の防具を着ている、性能的には【GunSHOP】スキルのレベルが上がるごとに更新しているはずなんだがヘレナ的にはそれじゃぁ不満だったらしい。


『いいですかマスター、あなたが今着ているのはもはや段ボールです。何の効果も付けていない防具なんてもはやゴミです』


ヘレナ的に許せなかったのは俺の防具に何の効果も付いていなかったところのようだ。


探索者が着る防具には基本的に何かしら効果が付いている、衝撃耐性だったり斬撃耐性とかそういうのだ。

火に強いとか感電しないとかもあるし、付けていると徐々にスタミナが回復するとか、傷の治りが早くなるとか、そういった効果が付いている防具もある。


ではなぜ俺は今までまともな効果の付いた防具を着ていないのか、その理由は攻撃手段にある。


俺の武器は遠隔攻撃を可能とする銃だ、敵に近づかず遠距離から一方的に倒すのが基本的な攻撃方法になる。

そんな感じだから防具を着ていようが裸だろうがあんまり関係なかった。


でも探索するダンジョンのランクが上がってきて敵の攻撃にあたりそうになったこともある。


ヘレナと今行くようなランクのダンジョンだと敵の攻撃とか危ないねって話しから防具はちゃんとしたのを着ていますか?という話になり、ちゃんとしたのって?って話しになって発覚した。


『今は丁度いい事にGPは潤沢にありますし、いい効果のついた防具を作りましょう』


「作る?」


『はい、マスターに任せていてはまた適当な効果が付いた防具にしてしまいそうなので私が選びます』


「いやぁ流石にちゃんと作るとなったらそれなりに効果を考えるよ」


『そうですか?それでは一緒に考えましょう』


「うん」


話しながら取り合えず許してもらそうな雰囲気になったので正座の状態から立ち上がり椅子へと座りなおす。


「それで、防具を作るって言ってたけど【GunSHOP】で購入するだけじゃダメなんだ?」


『はい、それだけだとただの防具になってしまうのでそこから私が手を加えます』


「そんな事出来るの?」


『出来ます、とは言ってもこれは私が【GunSHOP】スキルと深く関わっている存在だから出来る事ですが』


「そうなの?」


『そうなんです、詳しい話しは難しいので置いといて取り合えずそういう事が出来ると認識してください』


「了解、それじゃぁどんな効果をつけようか」


『効果をつける前にまず防具の見た目を選びましょう』


「見た目が先なの?」


『はい、見た目は大事ですから。マスターはどういった物がいいですか?』


「見た目か………」


正直【GunSHOP】スキルで購入した防具ってペンダント型の展開式の防具で着心地も悪くないし見た目はあまり気にしたことないんだよな。

見た目の構造上とかで動きが制限されるって事もないし。


「特に思いつかないかな、ヘレナ的にはおすすめとか無いの?」


『そうですね………こういうの何てどうでしょう?』


ヘレナの操る荷物持ち君の上に置かれた投影機から光がでて空中に画像が表示される。


「これは………人型のロボット?」


ヘレナが表示させた画像には人型の機械のような見た目の物が沢山並んでいた、下に着ている服とかが一切見えないほどに全身を覆う防具に頭も機械っぽい物でもはやこれってどうやって外を見てるんだ?って感じだ。映画やアニメ漫画などでであるような見た目だ。


『見た目は人型のロボットみたいですがこういうのってかっこよくないですか?』


「かっこいいとは思うけど、ヘレナの趣味って事?」


『はい』


「趣味か………まぁ俺はとくにこだわりがないしそれでいいと思うよ、でもそれってもはや【GunSHOP】でわざわざ買わずにそう言うの作ってもいいんじゃない?」


見た目が完全に機械だし、ヘレナなら【格納庫】を使ってそういった物を作れそうだけど。


『ふむ………、そうですねよくよく考えればわざわざ【GunSHOP】で買う必要もありませんでした』


「あ、でも展開式にできないのか?」


今現在使っているのが展開式なのは【GunSHOP】で買ったやつだからだし。


『その辺は大丈夫です、そういった機能も取り付けれます』


「そうなの?」


『はい』


「そうなんだ………あっ、そういえば神宮寺さんにもらった頭防具の展開式のやつがあるけど今回作るこれが全身のになるなら使わなくなっちゃうな」


そう言って俺は耳へ付けてあるイヤーカフみたいな物を外して手に取る、普段あまり使う事がない頭防具だが使う時は使っているので結構便利だったんだよな。

何より起動の仕方が好きだった、耳の裏をとんとんと叩いて起動するやつ。


『見せて下さい』


「はいどうぞ」


ヘレナが興味を持ったのか見せて欲しいと言ったので手渡す。


『なるほど、かなり品質のいい装備のようですね。これを装備を作る際に使用してもかまいませんか?』


「かま………わないのかなぁ?作ってくれたのは神宮寺さんだし折角の物だし潰すのはもったいない気がするけど」


『無理に使用する必要もないので残しておきましょう』


「そうするか」


勿体ない気もするがこういった装備の更新では仕方のない事なのかもしれない。だけどまぁ貰い物だしどこかに飾ろうかな?小物品としても綺麗なんだよなこれ。


『では、防具には【GunSHOP】で買える機体に使用する装備を解体して『機械種:マギア』の素材も使いましょうか。残しておいた【リスィクリスタル】を使用しても構いませんか?』


「それぐらいなら全然かまわないよ」


『ありがとうございます、それと今回の防具の製作の際に出来るだけいい物を作りたいので大量にGPを消費したいのですが。最低でもこれぐらいは残しておいて欲しいとかありますか?』


「なんだその怖い質問、一体どれだけGPを使うつもりなんだ」


『今のところの想定では700万GPほど使用すると思います』


「おぉう、多いな。けどまぁGPいっぱいあるしいいのかな?それじゃぁ、うーん………最低でも500万はGPを残しておいて欲しい」


今現在のGPは2000万ちょっとだ、流石に1500万も一気に使わないと思うが足りなくて微妙な防具になるのも困る。


『わかりました、それではこれから製作に移りたいと思います』


「あいよ、俺は何かすることある?」


『特にありません』


「無いかーじゃぁ射撃練習でもしてようかな」


悲しいけど、こういう時すること全くないんだよね。機体作る時も見てるだけだし。

射撃練習して、銃の掃除して。飽きたらゲームでもしようかな。









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