第30話 一難さってもう災難

 「ほう。逃げずに来るとは、本当に馬鹿なのか、実力があるのか・・・・・・。で、契約書にサインしろ」


「はいはい。うん。これでいいよ。じゃー3人共サインしておこう。で、立ち会いは誰かいるのか?」


「立ち会いは、領主の代官様だ。だから安心して死ぬがいい」


「よくも短時間でこんだけ集めたな。100人はいるか」


「絆が深いと言っただろ? 書類にサインしたんだ。もう後には引けないぞ?」


「問題なーし。代官だっけ? 早く始めろ」


「なっ! この私にむかって、この土民が! えーい! 早く始末しろ!」


 相手方が全員戦闘体形を取る。

さて、どうするか。全員殺すのも後で怒られそうだけど、こいつら恐らく悪事を働いているようだし、、


「お前達は、後ろに下がってろ。俺がやる」


「わかりました「のよ」」


 魔法剣に氷を纏わせて、に向けて、全員に斬撃を飛ばす。


「がっ」「ぐわっ」「ぎゃー」


 そこら中から悲鳴が聞こえる。

さすがにランクの高いハンターは躱わしたようだ。


「さて、残ってるのも10人ってとこか?

斬られた奴も、端に逃げないと次は首を落とすぞ? ちなみに逃げるなよ。双方が認めるまで戦闘は終わらない」


「てめー。何者だ?」


「喋ってる場合か? 《トルネード》」


 中心に突如魔法が展開され、無傷の10人がその場を飛び退く、その瞬間に《ファイアアロー》がに飛来し、半数が被弾すると同時に爆発する。

 悲鳴を上げる間もなく殆どが絶命する。


「う、嘘だろ。そんな」


「生きたい者は武器を置いて後ろに下がれ。組合長以外は相談に乗ってやる。反抗するなら頑張れよ」


 実力差を理解したのか、全員が武器を置いた。


「おい! お前達裏切るのか! どれだけ世話をしてやったと思ってるんだー!」


 全員が下を向いて、返事をしない。


「お前。人望ないんだな。ってか、そこの代官ってのと組んで散々悪事を働いていたんだろ?」


「くっ。お前まさか」


「おい。そこの代官も逃げるなよ。ここにいる奴も態々殺さないでやってるんだから、協力してもらうぞ。嫌なら、、わかるよな」


 まるで悪役だが、喧嘩売られたんだ。相手の一番嫌な方法でトドメを刺さないとな。


「おい! 早く奴をやれ! こんなことに巻き込まれるのもごめんだ!」


 恨めしそうに代官を睨む組合長だか、その目線のまま、突撃してくる。

 Sランクだけあって、それなりに技量はあるようだ。


 が、


 「がぁぁぁぁ。。ぐぉー。お、お前、どれだけの力を、、」


 両腕を失って、あっさり気を失った。

失血死するのも頂けないし、軽くヒールをかけておく。


「さて、お前たち。まだ戦いは終わってない。知ってるよな? 生かすか殺すかは両者の合意が必要だ。ここに新たな契約書がある。これまでハンター組合で働いた悪事を全て告白することが条件だ。別に嫌なら嫌と言ってもいいんだぞ? 俺もそれの方が楽だし」


「おい! お前達! そんな事してただで済むと思ってるのか? 大人しくそこで殺されろ!」


「おい。馬鹿代官。お前はめでたく死罪になりそうだな」


「少しばかり強いだけの人間が貴族に逆らってタダで済むと思ってるのか! 必ず殺してやる」


「弱い奴ほどよく吠える。お前もやるか?」


「くっ! 必ず後悔させてやる」


 お決まりの捨て台詞を吐いて代官は逃げ去った。


「さて、協力する奴はそこに並べ」


 ぞろぞろと全員が並ぶ。

組合長は両腕が無いから、ペンを口に咥えさせた。治すかどうか悩んだけど、そもそも悪事の内容によっては死罪だから意味ないかと思って。


「ふぅ。これで全部か。で、これからどうしようかな」


「この先の事考えてなかったのよ?」


「まーな。じゃーとりあえず宿に帰るか?」


「えっ? 帰りますか?」


「ライムお兄ちゃんが言うならそれで決まりなのよ」


「だって、やる事ないじゃん。俺の予想だとボーレロさんが、そろそろ来るんじゃないかと」


「なんだかボーレロさんが可哀想に思えてきました」


「そうかな? この国の悪事を暴いてあげてるんだから、嬉しいでしょ」


「ライム様らしいですね」



「このお魚美味しいのよ!」


「うまいなぁ。日本酒飲みたい気分だ。ってか、この世界の酒ってどんな種類があるんだろ?」


「日本酒ですか?」


「米から出来てる酒なんだけど、知ってる?」


「エルフの国に、カマチって言う米からできる種類のお酒がありますが?」


「カマチ? コマチ? なんだかそれっぽいな?」


「私達はあまり行きたくない国ですが、ライム様と一緒なら喜んで」


「まだ一カ国目だし、まだまだ旅を続けてから決めよう」


「世界の美味しい物を探す旅なのよ」


「それもそうだな。今回の魚もすごく美味かったし」


「ライムお兄ちゃんはわかってるのよ」


 そんなたわいも無い話をしていると。

コンコンッとドアがノックされる。


「ボーレロさん。待ってましたよ」


「はぁー。失礼する」


「姫の件はすいませんね。あまりにも性格が酷かったので」


「いや。その件は私も報告をして処理をしたので問題ない。問題はこの街でのことですが、、」


「いや。詳しく説明すると長くなるから、簡単に言うと、エリフィスとハンターが喧嘩になって、負けた奴がハンターの退会の契約だったが、その件で組合長が俺たちを殺すと来たから、返り討ちにした。以上」


「なるほど。で、代官が途中で騎士団を率いてライム殿を捕らえに来てたので、事情を聞いて一度引かせておきました。が、とすると」


「そう。組合長と代官が恐らく悪事を働いてる。証拠がないけど。ほらっ。これでハンター全員から話を聞けばいいよ。殺される可能性があるから、早めに動いた方がいいかもね?」


「準備のいいことで、世直しご苦労様です」


 なんとも苦々しい顔で、俺に微笑みかけてくる。


「失礼な。俺は旅行してるだけですよ」


「そうですね。。でこの件ももらえるので?」


「もちろん! 他国への干渉はよくないですからね。あっ。ハンター組合から金貨100万枚の支払いをする事を契約してるので、それも回収お願いします」


 回収はやって貰わないと、直ぐにユーラ共和国に移動するしね。


「100万枚!! 何ですかその途方もない金額は!」


「3人対100人位だったし、よっぽど殺したいのと、当然だけど負けるとは思ってなかったんじゃない?」


「そ、それにしても、とても払えるとは」


「だからハンター組合と書かせてるし、支店名がないからハンター組合として払う契約になるはずだと思うけどね。支部長との契約だから言い訳出来ないと思うけど?」


「・・・・・・。そのようですね。それも預かります。はぁぁ」


「ボーレロさん。もし俺の領地に来たら、思いっきり接待させてもらいますよ」


「本気で行きますよ? 正直、我が国としてもライム殿がいるオリンポス王国と揉めるような事はしたく無いといいますか、もちろん私も誇りがありますから、言いにくいですが勝てる未来が見えません。上層部も恐らく同意見でしょう。そうなると私とライム殿の縁から、貴国へ行きやすくなりそうです」


「それはいいね。俺もどこかと揉めたい訳じゃーないし。でも少し旅に出てるから、そうだな。もし急用があればランサード領のザマスって人間に言って貰えれば、上手く取り計らうようにしておくよ」


「それは有難い。このご縁を大切にし、もし急用があれば頼らせて貰います」


「勿論。だから今回も宜しくね」


「はははっ。わかりました。で、ユーラ共和国の入国手続きを取られましたか?」


「いや。問題が多くて、そこまで出来てない」


「でしたら、こちらをお待ちください。この手紙にはアメリア皇国としてライム殿を客人として対応するように依頼した内容をしたためております」


「おー。それは助かる。明日さっそく手続するよ」


「それはよかった。では私はこれで」


「よろしく」


 ザマスには後で連絡しておいた。

キュロス家にもこれまでの概要を説明しておくように指示を出しておく。


 

【皇国サイド】


「失礼します。ビクテリア宰相様宛にボーレロ副団長より伝令があります」


「うむ。話せ」


「はっ。まず街に入られた一行は、早速ハンター組合とトラブルになり、組合長を含めてハンター100名と3名で決闘をしました。当然のように勝利して得た物は、ハンター組合からランサード子爵に金貨100万枚及び命と引き換えにハンター組合で行ってきた悪事の証言となっております。ただいま調査中ですが、領主代理とハンター組合長が何らかの悪事を働いていた様子。当然ハンター達も加担していたと思われます。その後、代官が兵を率いてランサード子爵を捕らえようと動き出したタイミングでボーレロ副団長が止めたとの事。ランサード子爵よりボーレロ副団長へその後の対応全てを一任され、準備しておいたユーラ共和国入国用の書類を受け取り、明日手続きに入るご様子。その折に返礼として、ランサード子爵からボーレロ副団長へ、もし急用が出来た場合は、ランサード領のザマス殿に連絡するよう言われたようでして、一定の信頼関係が出来たと報告がありました。以上です」


「お前に質問しても意味ないと思うが、当たり前のようにトラブルが起きるのは生まれ持ったものだろうか。しかも我が国にとってはデメリットは少ない。が、今回の場合は金貨100万枚か。それもハンター組合が払うので関係ないが、多少の調整は必要だろう。しかし、彼とは絶対に敵対しては駄目なようだな」


「そのように副団長も何度もおっしゃってました」


「のようだな。ではボーレロだけではハンター組合は難しいだろう。誰か手配してやるか。では、報告ご苦労」


「はっ! 失礼致します!」


「ふー。もう少し情報を集めたい所だが、ランサード領からは全く期待できん。王都やキュロス領も有力な情報が無いか。どうしたものか・・・・・・」



 こうしてライム達はアメリア皇国を後にし、無事ユーラ共和国に移動することとなる。

 

     

        第一部完



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霧の如く 〜誰よりも強くなって好きに生きる〜 みなもとの源氏 @homma0602

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