友達も大事

 授業中、黒板を見るついでに少しだけ瑠奈と美菜璃の方を見てみたけど、流石に授業中だからか、変な空気ではなかった。

 

 授業が終わってお昼休憩の時間になったんだけど、どうしよう。


「れーな、食べよ」

「いや、今日はいい」

「……は?」


 瑠奈が誘ってきたけど、私は美菜璃と食べるつもりだ。だって、美菜璃と友達になってからはずっと一緒に食べてたし……瑠奈と美菜璃と食べてもいいんだけど……うん。私としては別にそれでもいいけど、やっぱり美菜璃も顔には出さないだけで気まずいでしょ。あれは流石に。瑠奈もなんかあからさまになってきてたし。


「美菜璃と食べるから」

「れーな? 何言ってるの?」


 ……なんて言ったら納得してくれるだろ。これ以上ここで話すのは、視線が集まってしまう。そうなると私が瑠奈の誘いを断るなんてって言われそう。


「お弁当も作ってきたのに、食べてくれないの?」

「……じゃあ、これ貰ってくから」


 私はそう言って瑠奈に弁当を貰い、逃げるように美菜璃を連れて教室を出ていく。

 悪いとは思う。瑠奈が私と食べたいと思ってくれるのは嬉しい。でも、美菜璃との友情も大事にしたい。こんな私と友達でいてくれる数少ない人なんだから。

 

「……良かったの? 古沢さんと食べなくて」

「気まずくない?」

「…………気にしないけど」


 絶対気にしてる人の間だと思うんだけど。

 

「そう」


 取り敢えず私はそう答えておいた。


「……取り敢えず、ありがとう。私の為でしょ?」

「いや、違うけど」

「えっ、違うの!?」


 違うこともないけど、結局は私が美菜璃との友情を大事にしたいってだけだし。……恋と友情の成立って難しいね。


 それから私たちは適当な話をしながら、食堂に向かった。

 ……食堂に行くのなんて瑠奈にはバレバレだろうけど、別に隠れたいわけじゃないし。……逃げといてなんだけど。


「じゃあ、私場所取っとくから」

「うん。私は買ってくるね」

「ん」


 そう言って別れた私は、適当な席を取り、スマホを取り出す。


【なんであの子と食べるの? 私は?】

【私の事嫌いになったの? もう一緒に死ぬ?】

【ねぇ、どこで食べてるの? 食堂?】

【あの子がいなくなったら私といてくれる?】


 …………なんか怖いメッセージが何個かあったんだけど。

 取り敢えず、返信しないと。


【私は瑠奈が好き。ただ、友達として美菜璃も好き】

【いつか埋め合わせするから、危ないことはしないで】


 よし、これで大丈夫なはず。

 そう思い、スマホを仕舞おうとすると、スマホが震えた。

 私は返信が帰ってきたのだと思い、もう一度スマホを開こうとするけど、電源が切れてしまった。

 ……そう言えば昨日は瑠奈とのキスのことを思い出して寝れなくて、スマホの充電も忘れてたな。

 

「お待たせ」

「あ、何買ってきたの」

「カレーだよ」


 何となくそう聞いたけど、何となく聞いたからこそ、なんて返したらいいのか分からないな。

 まぁいいや。食べよう。


「いただきます」

「私も、いただきます」


 ……うん。美味しい。

 こんな美味しい弁当を作ってきてくれたからこそ、瑠奈から逃げてきた罪悪感が……

 せめて瑠奈に弁当美味しいって連絡だけでも……あ、スマホの充電切れてるんだった。

 

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