席替え
朝起きると、瑠奈が部屋にいた。……それでキスをした。
……昨日瑠奈とキスをしたことで、ちょっと気持ちがいっぱいになって眠れなかったから、少し寝ぼけてたとはいえ、自分からキスをしたいって言ってしまった。
「鈴々菜、やっぱり私と離れるの嫌なの?」
私が朝のことを思い出して後悔していると、前の席に座る美菜璃が的はずれなことを言ってきた。
「……別に」
美菜璃に言われて気づいたけど、そう言えば今日は席替えか。
「ふーん……」
「強いて言うならこの席が変わるのが嫌かな」
「私より席の方が大事なんだっ!」
美菜璃を無視していると、先生が教室に入ってきた。
「よし、今日は席替えだぞー。くじを引きに来い」
そう先生が言う。
「美菜璃、私の分も引いてきて」
「……そういうのってありなの?」
「先生も適当だから大丈夫でしょ」
「ふーん、まぁ、任せといて! 私の近くの席引いてくるから!」
良かった。これであの人だかりに行かなくて済む。
私が安心していると、瑠奈の隣の席を狙っていると言う声が聞こえてきた。
……流石瑠奈は人気だなぁ。
私だって瑠奈と近くになりたいけど、正直諦めてる。だって、私はいつも運が悪い。
瑠奈と高校まで一緒の学校に通ってきたけど、クラスすら同じになったことなんて、今のクラスを含めて二回しかない。
「鈴々菜……」
美菜璃がガッカリした様子で戻ってきた。
その様子を見たら、何となく察することは出来るけど、一応聞いておく。
「どうだった?」
「……うん」
美菜璃は頷き、私に紙を渡してくる。
紙を見て、黒板に書いてある場所を見ると、私は同じ席だった。
「同じ席だ」
「うん」
美菜璃は一応二枚引いてきた訳だから、私にこの席を渡してくれたってことだよね。
「ありがと」
「いいよ」
「美菜璃はどこになったの」
「これ」
美菜璃がそう言ってもう一枚の紙を渡して来たので、受け取る。
そこに書いてある数字を見てから、黒板を見て、位置を確認すると、普通に真ん中くらいの席だった。
私はそれを確認すると、無言でその紙を返した。
まぁ、美菜璃と近くの席っていうのも正直諦めてたし、仕方ない。
「鈴々菜と近くが良かったのに……」
「仕方ないでしょ」
私がそう言っても美菜璃は不満そうな顔をするが、こればっかりは本当に仕方ない。
私も瑠奈の事が好きだって気がついた時、一緒のクラスになれなかった時、本当にショックだったし。
いや、それはちょっと違うかな。美菜璃は私のことが好きだったとしても、それは友達としてだし。
……そう言えば、瑠奈の席はどうなったんだろ。
私は瑠奈の方に視線を向けるけど、そんな事をしても瑠奈の席は分からない。
「はぁ……じゃあ私は、もう行くね……私の事忘れないでね」
「何言ってんの」
美菜璃はそんな冗談を言いながら、席を移動して行った。
対して私は、席を移動する必要が無いので、楽でいい。
瑠奈がどこに移動するのかをチラチラ見ながら待っていたら、私の席の周りには全く知らない人達が来た。……クラスメイトだし、一応顔は知ってるんだけど、名前……知らない。
「白輪地さん、よろしくね」
私の隣になった名前の知らない男の人がそう言ってきた。
え、何この人……なんかキラキラしてて、嫌なんだけど。と言うか、よろしくって言うなら名前を言って欲しかったんだけど、まぁいいか。興味無いし。……こんなんだから、私って友達が少ないんだろうな。
「……よろしく」
……こうなってくると、本当に美菜璃が恋しくなってくるな。
まぁ、いいや。瑠奈は……え、ちょっと、今からでも美菜璃と席を変わって欲しいな。
まさかの美菜璃の隣なんだけど。私がこの席にこだわってさえなければ……今からでも遅くないかな? いや、でもこの機会に、美菜璃と瑠奈が仲良くなってくれたら嬉しいし……
はぁ……最初から諦めてたはずなんだけど、チャンスがあったからこそ後悔してしまう。
……授業の用意しよう。
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