ツンデレ?

 朝食を食べて家を出た私たちは手を繋いで学校へ向かった。

 いつも通り、通学路が近くなってきたので、手を離そうとしてるのに、瑠奈が離してくれない。


「瑠奈?」

「このまま、学校行こ?」

「だめだから」

「なんで? もうクラスでも話しちゃったし、一緒に学食にも行ったし、今更だと思うけど」


 そんなこと私だって薄々気がついてるよ。

 瑠奈と登校するのが嫌なわけじゃない。でも……


「……手は離して」


 これは譲れない。

 幼馴染なんだし、一緒に登校してくることはあっても、手を繋いでくることなんて普通は無い。


「……分かった」


 瑠奈はそう言って手を離してくれた。


「手を離したからって近づいてこないでね」

「……はい」


 先に言っておいて良かった。絶対近づこうとしてたでしょ。

 

 私たちは猛烈な視線を浴びながら学校に着いた。瑠奈に向けてた視線なんだろうけど、私にもなんだアイツはみたいな視線が向けられてた気がする。

 そんなネガティブな考えをしていると、教室に着いた。

 そこでは流石にいつも通り瑠奈と別れて、私は既に座っている美菜璃の姿を確認しながら自分の席に座った。


「おはよう」

「おはよ」

「昨日はありがとうね」

「……ん」


 美菜璃と挨拶をし、また昨日の事でお礼を言われた。

 いつも思うけど、ありがとうって言われた時の返事の仕方を誰か教えて欲しい。


「そういえばだけど、明日席替えなんだって」

「そうなんだ」

「えっ、反応薄くない?」

「普通でしょ」


 逆にどんな反応をすればいいのか。


「えー、私と離れるの嫌だー、とかあるじゃん」

「窓際じゃなくなるのは嫌かな」

「私と離れるかもしれないのは?」

「……普通」


 ほんとはちょっとだけ嫌だけど、それを正直に言うと面倒くさそうだから言わない。


「ほんとは嫌なくせに。鈴々菜はツンデレだからなぁ」


 ツンデレって……私がいつ美菜璃にデレたことがあるというのか。


「……知らない人よりは知ってる人の方がマシではある」

「素直に私と離れたくないって言えばいいのに」


 ……まぁ、美菜璃か瑠奈のどっちかが近くに来て欲しいなとは思う。

 美菜璃はホームルームが始まるからと前を向いた。

 私は、また変な誤解をされてないか一応チラッと瑠奈の方を見たけど、今回は大丈夫そうだった。

 




 そしてあっという間にお昼休憩の時間になった。

 瑠奈は今日のお昼ご飯どうするんだろ。私の家に泊まったんだから、弁当とか持ってるわけないと思うし、学食かな。


「れーな、一緒に食べよ」

「……美菜璃、いい?」


 私が美菜璃に確認を取ると、瑠奈は私から見ると、少し不機嫌になっていた。

 いや、仕方ないでしょ。瑠奈の美菜璃への態度悪いし、美菜璃が嫌なんだったら、私は美菜璃と二人で食べる。瑠奈は別に私たちと食べなくても、一緒に食べる相手が居るだろうけど、私たちには居ないんだよ。


「いいよ」


 だからこそ確認を取ったんだけど、美菜璃のメンタルが強すぎる。正直私が美菜璃の立場だったら絶対嫌なんだけど。自分のことを嫌ってる人と食べようとは、普通思わない。

 美菜璃の顔を見るけど、特に無理をしているような感じでは無いので、そのまま三人で食堂に向かった。

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